岡田秋葭作品集 第27番
本局も岡田の代表作で、「金鋸」の傑作である。
序盤、短い導入を経て、主題の趣向になり、9一角と9二馬の二枚角の利き筋を利用して、明王手で8二金、8三金、7三金、7四金……と金鋸を引く。
この金鋸は絶えず二枚角の利きのどちらか一方を止めているのがポイントで、うっかり金を別の位置に動かして二枚角を利かしてしまうと、1八玉と逃げられて打歩詰になってしまう。
『図巧』第四十三番の飛車鋸と似ていないこともないが、一拍ごとに歩の打捨てを入れ、入玉型に局面を構成したのが新機軸である。もう一つ面白いのは10手目および14手目の変化で、玉方は歩の中合いをすることが可能で、その場合、変化の中に馬鋸(本手順には出てこない)が現われることである。この構成は奇跡に近い。
金鋸は「5七金」と質駒の桂を入手して終りを告げ、39手目から二枚馬の活躍が始まり、全盤面を一杯に使って詰む。収束、主題の金を捌き捨て、さらに4八銀も捨ててしまうのには一驚する。本局は岡田最後の発表作で、この後間もなく、20歳の若さで作者は病没した。

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