将棋図巧 第8番
13手目、8七角と、わざと8八龍の利き筋に「ただ捨て」して同龍と移動させ、さらに7七角と守備駒の焦点に遠打して、9二飛成の実現を図る、奇想天外な作品である。古来遠駒の作品は多いが、本局は最も規模雄大な作品で、古今傑作の一つに数えられる。
8七角は後の7七角と関連した妙手で、同龍と取らせて龍を移動しておかぬと、後の7七角を同香と取られて8八龍の横利きが消えない。
8七角は詰むか脱出されるかスレスレの接衝中の着手で、後の狙いの7七角に気がつかねば単独ではなんの意味もない手だけに、発見至難な妙着である。二度目の遠角はわざわざ角打ちのために3四桂、同歩と玉のコビンをこじ開けて8七龍と7三香の利きの焦点に7七角と打ち、9二飛成か2九飛を実現するのである。
至妙な着想を美しい構成に仕上げてあるのはさすがである

3