ある問屋さんからの今月のお知らせに、お手頃価格のルーター替刃が紹介されていました。3/4インチで標準税込価格 2,258円。中国製のようです。
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ルーター用の3/4のダイヤ刃といえば、永いあいだグラスター社のものとインランド社のものが定番品として国内販売されてきました。
高いけれど長持ちするグラスター製は7,500円。手頃だけど耐久性がやや劣るインランド社製4,000円というのが、数年前の某社のカタログに記された定価です。ところがこの頃から、従来の半額ほどのダイヤ刃が出回るようになりました。
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メーカーにより何故こんなに値段が違うのか。また新しく販売され始めた格安ダイヤ刃の性能は一体どうなのか、というご質問をよく受けます。今回はそのお答えです。
□◆□ 電着法 □◆□
インランド製品を含め、安価なダイヤ刃は全て電着法という、一種のメッキの原理を使った製法で作られています。この製法は量産効果が出やすく、経済性に優れていること(=大量に作ると安価)。ダイヤの砥粒が表面全体に付着しているため、取り替えたばかりの時は研削性能が格段に優れていること、などの特徴がありますが、その反面、表面のダイヤ刃のはがれ(ピーリング)が生じやすく、はがれが始まるとそこで寿命が尽きるという性質をもっています。「良く削れるけどあまり長持ちしない」といったところでしょうか。程度の差はあれ、この「はがれ」は電着法によるダイヤ刃が持つ宿命のようなものです。

↑電着法のイメージ。
替刃の本体になる金属をマイナスに、ダイヤ(実際はダイヤは電子の結束が固く、自由電子がない絶縁体となっているため、ダイヤ砥粒を運ぶキャリヤー)をプラスにすることで、ダイヤ砥粒が替刃の本体に付着(電着)。耐久性を増すため必要に応じて多層にすることもあり。
□◆□ボンディング法(メタルボンド)□◆□
これに対し、耐久性が格段に優れているものにボンディング(メタルボンドやレジンボンドなど)によるダイヤ刃があります。これは、金属粉などの結合剤とダイヤの砥粒を、糊となるものとよく混ぜて練り、軸となる本体に付着させ、窯で焼成・焼結するという製法です。金属粉が熱で溶け、ダイヤの粒が金属の間に埋まるような形となります。(糊の役割をした成分は、焼成途中で焼失)電着法にくらべダイヤ砥粒のでっぱりが少ないので、「切れ味が優れている」とは感じにくいこともありますが、表面が減るにつれ中から新しいダイヤ砥粒が次々と現れるため、長期にわたり同じ調子で研削できます。耐熱・対摩擦性に優れていますが焼成コストなどがかかるので、良質のものは価格がかなり高めになります。

↑ メタルボンド法のイメージ

ルーターのダイヤ刃は消耗品。安価で切れ味のいいものを次々と取り替えていくというなら、電着法の刃を。高くても良いものを永く使いたいという方には、ボンディング製法によるダイヤ刃を選択するということになります。

耐久性の優れたメタルボンドのダイヤ刃にもお手入れが必要です。
(1)特定の部位だけを使って削ると、その部分に凹みができて上手く削れません。時々刃の位置をずらして、平均に減っていくように心がけます。(2)ガラスが摩擦熱で溶け、ダイヤ刃の周りにこびりつくことがあります。時々青砥などをあて、付着したガラスを剥ぎ取ってください。(3)電着法・ボンディング法にかかわらず、研削時のダイヤ刃部分に水がコンスタントに補給されるように注意してください。
下記は当社扱いの3/4ダイヤ刃の種類・価格です。
(安楽は2個1組なので2個で購入された時の1個あたり単価、グラスターはクイックフィットビットのダイヤ刃部分の価格)
■電着法
ARK-3/4x2 @1,500円(お試し購入歴のある場合)安楽製
DT-3/4 1,950円 ダイヤモンドテック社製
259-WB1 2,700円 インランド社製
2551-QFB3/4(刃) 2,800円 グラスター社
■ボンデイング法
2550 5,200円 グラスター社製(旧・一体型)
JT-3/4 8,400円 国産

国産のものは当社特注品で、メタルボンド部分の厚みが約1.3mmとグラスター社のおよそ倍あります。ご使用後1年以内にはがれた場合は返金または良品との交換保証つき。
桐箱に入れても良いほどの高品質ということで、当社で袋と箱に入れて皆様に販売しています。


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