2012/2/22

水曜日の夕暮れに・・・。  




夕焼け    吉野弘

いつものことだが
電車は満員だった。
そして
いつものことだが
若者と娘が腰をおろし
としよりが立っていた。
うつむいていた娘が立って
としよりに席をゆずった。
そそくさととしよりが坐った。
礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
娘は坐った。
別のとしよりが娘の前に
横あいから押されてきた。
娘はうつむいた。
しかし
又立って
席を
そのとしよりにゆずった。
としよりは次の駅で礼を言って降りた。
娘は坐った。
二度あることは と言う通り
別のとしよりが娘の前に
押し出された。
可哀想に
娘はうつむいて
そして今度は席を立たなかった。
次の駅も
次の駅も
下唇をキュッと噛んで
身体をこわばらせて――。
僕は電車を降りた。
固くなってうつむいて
娘はどこまで行ったろう。
やさしい心の持主は
いつでもどこでも
われにもあらず受難者となる。
何故って
やさしい心の持主は
他人のつらさを自分のつらさのように
感じるから。
やさしい心に責められながら
娘はどこまでゆけるだろう。
下唇を噛んで
つらい気持ちで
美しい夕焼けも見ないで。

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この詩は、教科書でも出逢ったと
記憶しております。

心はいつも複雑な動きを繰り返しながら、
バランスを保とうとしますよね。

風景や、人々、そして自分自身を
みては、「それでいい」「それはダメだよな」
なんて峻別を試みようとするんです。

無関心になればなるほど、
「心が軽くなる」と思う人も
いるかもしれません。

でも、本当は「心が空になる」
のではないでしょうか。

辛いことも、悲しいことも、
虚しいことも全部受け止めつつ、
「感動」や「喜び」は間違いなく
やってくると思います。


今日は、雨まじりの黄昏の中、
バス停にたたずむ小さな女の子と
お母さんをみてちょっとこの詩を
思い出してみました。


さあ、明日も一日、
がんばって行きましょう。

ありがとうございます。





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