この日のサニーサイドのメインアクトはYasakaの音楽仲間であるRIKOさんとBlackyのデュオ「EBLAZA」だった。
もともとこのデュオのライブをpop popは見に行く予定をしていたのだが
Yasakaが「EBLAZAのライブの前座をやってみたい」と言い出した。
8月のある日。Emilyの渡仏中、
Yasakaは知りあいのヴォーカリストと即席デュオを組み
とあるプロミュージシャンの前座を務めた事があった。
Yasakaはそこでさまざまな事を学んだ。
ライブの前座というのは厳しい。
まず、来ている観客はメインアクトのライブを見に来ているわけで
自分たちのファンではない。
そういう環境の中でライブをするというのは
サッカーで言うなら「アウェイで試合をする」ようなものだ。
アウェイのような状況の中でライブをして
メインアクトのライブがより盛り上がるように
観客の温度を上げて行く事が要求される。
あのストーンズのミック・ジャガーでさえ
「オレなら他のバンドの前座はやりたくないね」と言うほどだ。
だが、嫌な事ばかりではない。
自分たちを知らない多くの人たちに
演奏を聞いてもらえる絶好の機会でもあるのだ。
また、わずかな持ち時間の中でどれだけ観客の心をつかめるかという
ライブパフォーマンスの実力をつける場所としては最適だ。
自分たちの実力をもっと高めたい。
pop popの二人はEBLAZAにお願いした。
EBLAZAの二人は快くオーケーをしてくれた。
その二人の気持ちにこたえるためにも
いいライブパフォーマンスをしようと二人は思った。
ライブ当日。
サニーサイドでpop popはリハーサルをしていた。
曲はこの日、初披露しようと考えていた新曲だ。
エンディングの一カ所がどうしてもYasakaは納得がいかなかった。
「もっとそこでガツンと抜けてくれないと、曲が台無しになる」
EmilyはYaskaの厳しい要求に何度もテイクを重ねるが
Yasakaはそれ以上を望んだ。
結果、リハーサルではオーケーが出なかった。
リハを終え、二人は選曲を決めかねていた。
持ち時間は15分、3曲分の時間だ。そこにどの曲をやるか。
初披露の新曲をやるにはリスクが大きい。
しかし、できればやりたかった。
最後まで二人は悩み、最終的にはYasakaの判断に任せる事になった。
Yasakaはステージにあがる前に
5曲の候補曲をリストアップした。
「この5曲の中から3曲をやろう。
ただ、どの曲をどの曲順でやるかは
ステージの上でその瞬間の空気で決めるから」と
Emilyに告げた。
やがて、出演時間がやってきた。
ステージの上にあがり、Yasakaは一瞬客席を見渡し、
何かを感じてピアノの前に座った。
そして「Time After Time」のイントロを弾き出した。
Emilyの声がサニーサイドの中に響き渡った。
3曲を演奏しおえて、pop popのライブは終わった。
会場からは大きな拍手が来た。
残念ながら新曲は披露されなかった。
しかし、Yasakaは自分たちが新曲をやる事よりも
ベストパフォーマンスをしてメインアクトに引き継ぐ事にこだわった。
野球で言うならホームランを狙って大降りをするのではなく、送りバントをきっちりこなして、4番打者のEBLAZAにつなげる事が大切だと思った。
結果は予期せぬ形で現れた。
pop popはこの日、「What's going on」のカバーで前座を終えたのだが
メインアクトのEBLAZAのライブ中、ステージの上からBlackyが
「1ステージ目のテーマは“平和”をテーマに選曲されています」と話したからだ。
pop popの二人はその事を知らなかったし、EBLAZAの二人もpop popが最後にリハーサルでも演奏していなかった「What's Going On」を演奏するとは思っていなかった。
「すごくうまくつなげてくれたよねー」とRIKOさんはとても喜んでくれた。もちろんpop popの二人にとっても嬉しい驚きだったのは言うまでもなかった。
メインアクトのEBLAZAはとても素晴らしいステージだった。同じデュオ形式でありながらも、ひとりひとりが高い実力を持つRIKOさんとBlackyが作る1+1=3、いや4、5に値するパフォーマンスにpop popの二人は多くの事を学ぶ事ができた。
まだまだ僕らには目指す上がある、とpop popの二人は思った。
=== SET LIST ====================================
1. Time After Time
2. Take it to the limit
3. What's Going On
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