実はもうとうに終わっているのですが、5月29日の小学校の運動会で組み体操をしました。
15日の参観日の後の懇談会で保護者の方達とビデオを見ていたら、あの日のドラマが蘇ってきました。
一番の山場は15人で作る5段ピラミッド。
69人の中から自薦他薦で選んでいく。
一番下になる子は体格はもちろん我慢強くなくてはならない。
それから4番目、3番目、3番目とそれぞれ上下の人たちのことを考えながら行動できなくてはならない。
もちろん1番上が一番目立つのだが、一番怖い。
体格だけでは決められない、普段の生活態度、子供たちの人間関係など、いろんな条件が検討され選抜組が決定された。
練習に入った。
しかし、どうやっても完成しない。
いくら練習しても成功しない。
なぜだ。
2番目を組む男の子二人が、仕切り屋でなおかつ気分屋さん。
うまくいかなければ、むくれて脱走するか、仕切りを始めて他の子供たちをまとめようとする。
とうとう、反乱が起きた。
「私たち、A君とY君と一緒にできない。
体を預けられない。
下で頑張ってるのに、いい加減にされるとやってられない。」
6年生全員が何度も集まって話し合いをした。
普段は思っていても言わないでいた
「直して欲しい生活態度や性格」を
ある子は泣きながら、ある子は勇気を奮って指摘した。
「直してくれるのなら、自分たちも協力するから」と。
彼らは自分のことを棚に上げて言ったのではなく、自分も頑張るからと
励ましたのだ。
結果・・・。
Y君は運動会当日まで残り1週間をきったが、普段の生活から変え始めた。
しかし、A君は「何で俺ばっかり言われなきゃならないんだ」とむくれて
自分を変えようとはしなかった。
結局そんなずれてしまった二人の気持ちではピラミッドは完成できないと判断した子供達は、
「A君に頑張ってもらおうと選抜組に残ってもらっていたけど、
変わるよう努力しないA君を、敢えて選抜組みからはずすのも
A君のこれからのことを思えば、必要だと思うから、
6年生みんなは敢えて厳しくなって、外れてもらうことを決めるよ。
これも友情なんだ。」
という結論を出した。
本番まで後2日、出した結果は自分達にもしんどいものだった。
しかし、体育指導の先生が取り出したCDでみんなの気持ちが上向いた。
ウォーターボーイズ
あのドラマで使われた曲だ。
曲にあわせて一人技から五人技、団体技へ。
そして、ピラミッドへと技が流れていく。
曲に合わせてみても、なかなかうまくはいかない。
しかし、みんな自分で決めた決断をその曲に載せて
あるいはウォーターボーイズのドラマに重ねて、練習を続けた。
残りはわずか2日。
最後の練習日。
下校時刻はとうに過ぎてしまった。
塾に行かせるから帰るようにと連絡してきた保護者もいた。
連絡を受けた男の子は、練習場所を後に去っていった。
追い込みは続く。
しばらくして、塾に行くはずのS君が戻ってきた。
「どうしたの。おうちから電話があったでしょ?帰らないの?」
「先生、俺、練習がしたい。みんなと頑張る。だから、今家に電話して、今日は塾には行かないって言ってきたんだ。」
そう言って自分の場所に戻ったS君。
ピラミッドはとうとう最後の練習でも完成しなかった。
運動会当日。
色々な役員と応援団で忙しい6年生。
次々と進む競技のプログラム。
組体操のことを考えている暇などなかった。
しかし、
とうとう迎えた最終演技。組体操。
ウォーターボーイズの曲が始まる。
手拍子が運動場に響き渡る。
指導の先生の合図で子供たちがいっせいに「オォー!」と声を上げ
自分の位置へと移動する。
今まで何度練習しても予定通り進まず、曲とも合わなかった演技を次々とこなしていく。
笛に合わせてポーズを決める度に観客の大きな拍手とどよめき。
信じられないほど順調に演技が進み、
ピラミッドの大技を迎える。
15人ピラミッドの周りには10人ピラミッドがいくつか出来上がることになっていた。
太鼓に合わせて、次々と子供たちがピラミッドを組んでいく。
最後の一人が登る。
誰もが息を呑んだ。今まで1度も成功したことがなかったピラミッド。
いろんな思いをしながら練習してきた・・・
登った。
10秒間ピラミッドがきちんと立っていた。
成功だ!
元の体系に戻った子供達は勢いづいて最後の演技「未来への架け橋」に入った。
69人で作る長い橋。
誰一人欠けても成功とはいえないこの「架け橋」を見事に作り上げた。
最後に曲に合わせながら1列に並び観客席に向かって「礼」のウェーブでご挨拶。
「ありがとうございました!!」
大きな声が観客の拍手に負けず響き渡り、子供達は一斉に退場門へと走っていった。
何人もの子供たちが、目を潤ませながら退場門をくぐっていった。
よかったね。
成功して本当に良かった。
みんなに見てもらえたのは、当日の演技だけだったけど、
みんなの4週間はすごいドラマがあったよ。
協力すること、相手を信じること、自分が変わらなきゃいけない時があること、見せかけの優しさが本当の友情ではないこと、自分で決めなくちゃいけないこと、たくさんたくさん学んできたね。
私も、辛いこといっぱいあるけど、
子供たちからたくさんたくさん学んだよ。ありがとう。
私の頑張りは、真っ黒に日焼けした顔と腕に残っている。
(ほんとは日焼けはイヤだったけど、頑張るほど日焼けしました。はい)

3