「あのう、○○小2年担任のSですが。実はA君の体中にあざがあるんです。本人に聞いたら、転んだというのですが、どう考えてもおかしいので話を聞いたら、お母さんとおにいちゃんと一緒にいてそれでできたあざだというのです。それでお父さんのほうにお話を伺いたいのですが、今日放課後学校に来ていただけないでしょうか。」
あれ、ただ事ではないぞ。
それに、A君は私が担当している6年生B君の弟じゃないか。
変だ。
実は1学期の終わりにたまたまB君と掃除をしながらじっくり話をする機会があって、その時に複雑な家庭の事情を聞いていた。
バツイチ同士が職場恋愛をして、再婚をしたのだが、それぞれに子供がいるいわゆるステップファミリーなのだ。
だが、B君は決して新しいお父さんのことをお父さんとは呼ばず、「おっちゃん」と呼ぶ。
どうやら夫婦の関係がこじれて別れる別れないで毎晩喧嘩をしているようなのだ。B君はそれで気を遣って寝不足で辛いよぅと言ってきていた。
A君は男の人のほうの連れ子で、最初は兄弟としてやっていくのがしんどかったとB君は言っていたが、今では仲良くするようにしているという。
しかし、お母さんのほうは、お腹を痛めた子ではないから「言うことを聞かない」「かわいげがない」と辛く当たっていたようだ。
それが、別れ話が出た時に別れたら同じ会社だから母親のほうが仕事をやめなくてはならなくなり、生活に困るということで、とりあえず父親の実家にA君を預け、転校もさせたのだが、A君が戻りたいということで戻ってきたら、また「お母さん」に暴力を振るわれているらしいのだ。
家庭内のことにどれだけ学校が介入できるかは、線引きが難しいのだが、今回は「虐待」ともいえるような状況なので、校長教頭、それぞれの担任とが関わっている。
今の私にできることといえば、B君の話を丸ごと聞いてあげることくらいだ。
自分の家庭もそうだが、大人の都合で本当に辛い思いを子供はしている。
それを、どうやって周りが支えていくか、考えていかなくてはならない。
学校の先生をしていると、本当に大人の都合で振り回されている子供たちを沢山見る。
児童扶養手当や就学援助費が欲しくて子供の取り合いをしているところもある。
夜の仕事しかないから、昼夜が逆転して学校に通いきれない子もいる。
一律に対応できないのが子供のことなのだ。
それにしても、自分のしてあげられることが何なのか、わからないのが本当にせつない。

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