2011/2/24  14:32 | 投稿者: おるん

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◇◆◇10.幸福の黄色い喇叭水仙

高校三度目の春。
私は新聞部の部長になった。
彼は今も生徒会長だ。そして、サクラと恋人同士なのも公認となり、ますます仲睦まじい。
最後の学年、それでも同じクラスになりたかったけど、なれなかった。

放課後、部室に向かおうとしていると、廊下で草間君に出会った。
「あ、会長。今年もまた、新聞部で新入生歓迎号を作るんだけど。」
「あぁ、会長挨拶か?」
「うん、それと写真撮影。」
「じゃあ、今からすぐに撮影するか?役員達が来る前の方がありがたい。作業があるから。」
「わかった。すぐにカメラ取ってくるね。」

久々の生徒会室。
いつもは取材しても原稿を書いて貰うだけで済ませていたから、中に入ることはなかった。
机の上にはあのラッパスイセンが活けてあった。
「ラッパスイセンだね。」
「あぁ、今年も沢山咲いたのでな。花があるのも悪くないと思って。」
「会長にピッタリの花言葉だもんね。私にもピッタリだけど。」
「そうだな。誰しも素質があるものな。」
「ううん。私は違う。」
「?」
「ラッパスイセンにはね、別の花言葉もあるんだ。」
「ほう。」
「それはね………、やっぱやめた!自分で調べて。
さ、早いとこ写真撮っちゃおう!」
「…。そうだな。」
そうしてまた去年と同じように、物足りなさそうにした彼を執務机に座らせる。
「ちょっとは笑ってみせてよ。」
いつもどおりの愛想なしの彼。
「ほら。サクラが居ないと笑えない?」
「なっ、バカ!それは関係ないだろう!」
そこにカチャとドアが開いて、誰かやってきた。
「草間君、今日は新歓の…、あっ!ヒトミ!」
「あぁ、サクラ!お疲れ様。」
「お疲れー。新聞部?」
「うん、新入生歓迎号のね、会長挨拶。会長、笑ってくれないんだよ。」
「あぁー。演説ではああ言ったけどあの後大変で…だから笑わないと思うなぁー。」
「サクラが言っても笑わない?」
「うーん…。会長はね、人を苛めて笑うんだよ。」
「谷本!!」
「だってホントのことでしょ!」
笑うサクラに仏頂面の草間君。楽しげな二人がちょっと妬ける。
「あはは、そりゃ新聞には載せられないな。」
「わかったら早く撮れ!もうすぐ役員達が集まってくるぞ!」
「はいはい、じゃあ、こっち向いてー。」
真顔の草間君をカメラに収める。
「ねぇ、サクラとキスするときはどうするの?」
「なっ!!!ば、バカ!そんなこと答えられるか!」
真っ赤になった彼もカメラに収める。
「あー、そんなに赤くなって、こりゃ凄いキスするんだろうねぇ。」
ニヤニヤ笑いながら、彼を苛める。
「あぁもう!どうとでも思っていてくれ!」
「ほらほら、早く笑ってよ!」
「谷本、こっちに来い!」
そう言って彼がサクラを呼び寄せた。
どうするのかと思ったら、サクラの頬を思い切り引っ張った。
「いひゃい!」
「ぶっ、あはははは!」
彼が豪快に笑う。こんな彼を見るのは初めてだ。
勿論カメラに収める。笑う草間君と涙目のサクラ。
「もう!ほらね!!意地悪いんだよ!!」
頬をさするサクラを見て私も笑った。
「あーそれは、そんなに引っ張りやすいほっぺのサクラが悪いかな。」
「そうだろう?」
草間君はまだニヤニヤしていた。
「もう、酷いよ!後で覚えててよね!」
「君こそ、出された課題、覚えているんだろうな?」
「うぅ。もういいよ!」
「もう、二人共、私の前でイチャつかないでよ!」
笑いながら言う。二人がとても爽やかで見ていて楽しい。
「さてと、ひとしきり笑わせてもらったし、行こうかな。会長、サクラ、ありがとね。」
「あぁ。挨拶文は明日届ける。」
「部活、頑張ってね。」
「そっちこそ、新歓準備、頑張って。じゃあね。」
生徒会室のドアを開けて廊下に出た。

あーあ、嫌になっちゃうな。
こんなにお天気で綺麗な青空、暖かい空気。
下に見える花壇のラッパスイセンも風にそよぐ。

ラッパスイセンの花言葉。
報われない恋。
確かに報われなかったけど、いいや。二人共、幸せそうだもん。
私も素敵な彼氏を見つけないとね。


-終-

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1.図書館の君
<8.雨降って地固まる(後編)
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2011/2/20  3:50 | 投稿者: おるん

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◇◆◇9.雨降って地固まる(後編)

教室を出てサクラの下に行こうとしているであろう彼を引き止める。
「待って。」
「?」
「私の言うことも聞いてくれない?」
「なんだ?」
彼が再び私の方に向き直した。
私は彼に近づいて、間際に立つ。
少し背が伸びた彼。目線が合わなくなっていた。
「…どうしてサクラなの?」
「え………。」
「………。」
私達の間に沈黙が流れる。
彼の肩におでこを付けた。彼の匂いがする。
「や………。」
彼が何か言いたそうにしている。気にせず彼の背中に手を回して抱きついた。
「草間君…。」
「………。」
彼の体温。吐息。全てが愛おしい。出来ることならずっとこうしていたい。
「や、山本…?」
「私…、ずっと好きだったんだよ?草間君のコト。」
彼の体が熱くなるのが分かる。
「………。」
彼が沈黙する。多分、答えに困ってる。
背中に回した手を解き、顔を上げる。
背伸びして目線を合わせ、キスしようとした。
「!!」
彼が私の両肩を掴み、引き離して拒んだ。
「…。」
「…。」
いつも冷静な彼が顔を真っ赤にしていた。
「…恥掻かせないでよ。」
「…すまない。………こういうとき、なんと言うのが相応しいのか…。」
そう言って視線を逸らした彼。そしてこう続けた。
「悪いが、君のコトをそういう対象として見た事はない。」
あぁ、ストレートに直球投げてきた。
もうちょっとやんわり断るのかと思ったけど。
食い下がって困らせてみるのもいいかもしれない。
でも、やっぱり好きな人にこんな顔をさせておくのは嫌だ。
「…いっそ嫌いだって言って欲しいよ。」
ますます彼が困った顔をした。
彼が泣きそうなのかもしれない。いや、私が泣きそうなんだ。
すこし間が空いた後、彼が真顔になる。
「…そうだな。好きじゃない。」
彼が出した結論だ。
嫌いとは直接言わなかったのは彼の気遣い…?
いや、好きじゃないと言うのは本心なんだろう。
嫌いじゃなくても嫌いだと言って欲しかったのに。
「私、帰る。サクラと仲良くね。」
「ああ。」
彼をその場に残して教室を後にした。

そのまま部室には戻らずに屋上へ行った。
誰も居ない放課後の屋上。
いっそ飛び降りてやりたいくらいの気分。
一月の風は頬に突き刺さりそうなくらい強くて冷たい。
空気は澄んで、空には高いところに筋雲が出ていた。
風が目に入って、涙が止まらない。
「草間君…。」
ずっと好きだったのに。
必死でサクラを守ろうとする彼。
やっぱり私がそのポジションに入ることはできないんだ。
分かってたことじゃない。分かってたのに…。
私がずっと好きだった彼。
その彼が何に代えても守りたい大事なサクラ。
サクラが憎い。私が手に入れられなかったものをいとも簡単に手に入れてしまったのだから。
でも、そのサクラを傷つけることは、彼を傷つけることになる。
私は彼に怒った顔や困った顔をさせたかった訳じゃない。
ただ、私に向けて笑っていて欲しかった。
叶わない望み。
彼がサクラと居て笑っていられるのなら、それもいいじゃないか。
大体、友達に影でこんな汚い嫌がらせをするような女がモテる訳ない。
もう、こんなことは終わりにしよう。

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1.図書館の君
<8.雨降って地固まる(前編) 10.幸福の黄色い喇叭水仙<完結>>
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