2010/12/17  2:26 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
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◇◆◇4.突然の別れ

まもなくして、白薔薇学園高等学校に着任する。
一年目なので担任するクラスはないが、三年生のうちの二クラスの古典を担当することになった。
生徒は二クラスで約八十人。顔と名前を覚えるのが結構大変だ。
二クラスと言えども、授業の下調べや段取り、課題の採点をするだけで一日があっという間に過ぎる。
奈月も大学四年生になり、ゼミや就職活動で忙しそうだ。
会いたいとは思うものの、疲れていて体がいうことを聞かない。
ただいまとかおやすみとか、短いメールを送るのが精一杯だった。

どうにかこうにか、仕事をこなし、一学期の期末テストも終わった。
もうすぐ夏休みだ。補講の担当にはならなかったし、彼女のゼミや就職活動の状況によるけれど、少しはゆっくり会えるだろう。
初任給から給料の大半を貯めていた。少ないながらもボーナスが出た。
これで彼女に指輪を買おう。今すぐとは言わないけれど、彼女が大学を卒業したら結婚したい。

さて、これをいつ、奈月に渡そうか…?
これを見たら、どんな顔をするだろうか?
…驚いた後、ちょっと困った顔をするだろう。喜んでくれるといいけど、怒ったらどうしようか?
夏休みに入ったら、すぐに会いに行こう。どこか夜景の綺麗な店で食事をするのもいい。
そんな矢先だった。

その日は、彼女からのメールがなかった。きっと忙しいんだろうと、気にしていなかった。
翌朝、携帯が鳴った。彼女からメールが届いた。
『奈月の母です。昨日、奈月が交通事故に遭い、病院に居ます。』
その後は読めなかった。正確に言うと、読んだけれどあまり覚えていない。
病院の場所だけをブツブツ唱えて、車に飛び乗った。

病院に着いたところで電話が鳴って気付く。出勤時刻の直前で、学校からの電話だった。
「綾川です。」
「先生、どうしたんですか?」
「あ、あの…、すみません。今日はお休みをいただきます。」
「具合が悪いんです?」
「え、えぇ…。今、病院に…。」
「わかりました。ちゃんと連絡してくださいね。お大事に。」
嘘はついていない。電話の電源を切って、受付に走る。
事故に遭ったって言ったって、きっと腕とか脚を骨折したとかでケロッとしているに違いない、きっと。
病室に行ったら、俺の顔を見て、「司、そんな必死な顔して大袈裟だよ」なんて言うんだ。

受付で案内された場所は病室でも集中治療室でも処置室でもなかった。
薄暗い廊下。ドアをノックしてドアノブを握る。
微かに震える手でノブを回してドアを開けた。
キィ…。
ドアを開けると、奈月の母親らしき人がこちらを見た。
「綾川さん…?いつも奈月がお世話になって…。」
「…いえ、こちらこそ…。」
喉が渇いて声が出ない。
そっとお香の匂いがする部屋の中に入ると、横たわる誰かが居た。
「…。」
「奈月、さっきまで集中治療室に居たんですよ。」
「…。」
「顔を見てあげてください。綺麗にしてもらったんです。」
そう言って奈月の母親が顔の上の布をめくる。
そこにはいつもの奈月ではない誰かの顔があった。痛々しい姿。…でも、これは間違いなく奈月だ。
「な、つき…。」
「奈月は昨日も就職活動に出掛けていて、その帰りだったんです。最終面接だったって。」
「…。」
「交差点で横断歩道を渡っていたんです。そこに車が突っ込んできて…ひき逃げです。」
「…犯人が逃げているんですか…?」
「ええ。警察からの又聞きですが、見た人によると飲酒運転じゃないかって。」
「そんな…。」
奈月の母親が泣きだし嗚咽する。俺も手足がガクガク震えて、腰が抜けそうだ。全身から冷や汗が流れる。
そのあと、奈月の父親と葬儀屋がやってきて、慌しく奈月を運び出していった。

通夜で一晩、彼女の家族や親戚達と一緒に彼女と過ごす。
俺は話す事もなく、隅に座って、ただただ彼女の遺影を眺めていた。
何を考えていたのか?
彼女との思い出?どうして彼女がこんな目に遭わなければならなかったのか?
犯人への恨み辛み?彼女が生きていた場合の自分達の未来?
不思議と涙が出ないものだと思った。
家族ももちろんたくさん泣いたのだろうが、気が付いたときにはみんな落ち着いていた。

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1.よく当たる占い
<3.再会 5.空に溶けて>
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2010/12/13  0:38 | 投稿者: おるん

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◇◆◇3.再会

高校を卒業して二年後、大学で彼女と再会した。俺が三年で彼女が二年。
「綾川さん!!」
「はい?」
後から声を掛けられた。若い女性の声だ。振り向くと、彼女が満面の笑みを浮かべている。
「やっぱり、綾川さんだ!覚えていますか?私のこと。」
「…さぁ、どなただったかな?」
君のことを覚えていないわけがない。奈月。
「…そうですよね…。あの、私、高校で一個下だった遠藤奈月です。去年、先輩を追ってこの大学に入学したんです!」
「あぁ、そう。」
なんと言えばいいか、困った。
「…。」
彼女も不安そうに沈黙する。泣かれたら困るな。
「あの。」「あの!」
二人同時で呼び掛けた。
「…な、なに?」
「あ、綾川さんから先にどうぞ。」
「…君、このキャンパス内、全部回った?まだなら俺が案内してあげるよ。」
「はい!よろしくお願いします。」
彼女が満面の笑みで応える。ちょうど四限が終わったところで帰ろうと思っていたから時間はある。彼女も今日の講義は終わりだと言った。
「じゃあ、まずは…図書館かな。三つあるんだけど、新館に行ってみようか?」
「はい、お願いします。」
正門から二人並んで歩き出した。

彼女とは読む本の趣味が合っていて、よく図書館に一緒に通った。
たまにジャンルの違う本を紹介されたりしたが、それもとても面白かった。
程なくして、彼女と付き合うことになった。
図書館からの帰り道。辺りが暗くなっていた。
「悪いね。結構遅くなってしまって。」
「ううん、大丈夫ですよ。まだ八時ですから。綾川さんって凄く真面目ですよね。」
「…まぁね。」
「なんか大人っぽいです…。」
「…高校生の時は不良だったけど、いい加減大人にならないといけない歳になったからね。」
「なんか、ギャップが大きすぎて、追いつかない。」
「そうかな?」
「うん…。なんか笑っちゃいそうで。」
「そうか…。なるほど、おかしいよな。昔の俺と今の俺と…。」
「でも、中身はあんまり変わってないですよね。綾川さんって。」
「…例えば?」
「うーん。今も優しい人だし…。物腰はとても柔らかくなったけど、案外、人を寄せ付けない感じだし…。」
「ふむ…。」
「それから、あまのじゃく!!素直じゃない!!よく見てたらわかるんですけどね。」
「俺は高校生の頃からそう思われてたの?」
「えへへ。ちょっと。」
「奈月…。良かったら、俺と付き合わないかな?」
「え!?」
「誰か居る訳??」
「綾川さん…。良いんですか、私なんかで?」
「あぁ。君が良いんだ。」
「後悔しても知りませんから!」
「後悔なんかしない。」
人気の少なくなったキャンパスで彼女を抱きしめた。

奈月と付き合い始めて、彼女のコトがどんどん好きになる。
自分でも、こんなに他人に対して情が湧くのかと思うほどに。

彼女は素直で、強くて、それでいてそこはかとなく儚さを併せ持つ、見た目はどこにでもいる普通の女の子なのに他とは違うなにか、高校生の時には感じなかった色香というのが一番近い、そういうものがある。
つぶらな瞳に長い睫毛。白い肌にストレートの髪。笑うと見える八重歯は愛嬌があってかわいらしい。
世間擦れしていなくて、かといって物を知らないわけでもなくて、適度に恥らったりするのが堪らない。
他の男も彼女を放っては置かないだろうと、できるだけ彼女と一緒にいた気がする。
彼女は俺が過去、不良だったことを忘れさせてしまいそうなくらい、普通に接してくれた。
他愛もない喧嘩をすることもあったけれど、それでも彼女が愛おしかったし、穏やかでいることができた。
今の俺があるのは、間違いなく彼女のお陰だと思う。

竜士のこともあって、教職を選んだ。
教育実習も母校である白薔薇学園高等学校で行ったし、そのまま、採用試験も受けた。
「奈月、俺、白薔薇で先生をすることになったよ。」
「え?司が先生!?」
「あぁ、まぁ…。そんなに驚くことかな?」
「だって…。不良だったじゃない。よく採用されたなと思って。」
「ははは…、そうだね。かなり揉めたみたいだけどね。」
「…おめでとう、司。」
「ありがとう。」
「じゃあ、なにかお祝いをしなきゃね。うーん、何がいいかなぁ…。」
「そんなの何も要らないよ。」
「えー、ダメだよ。こういうのはちゃんとしないと!!」
「えぇぇ…、そうだなぁ…。じゃあ、手帳が良いかな。閻魔帳にするやつ。」
「閻魔帳!?ぷっ、あはははは!!…わかった、閻魔帳ね。良いのを探してくるね。」

それから二週間後、彼女はB5サイズの革張りのバインダー手帳をプレゼントしてくれた。
色は黒でいかにも閻魔帳だ。
「ありがとう。また、ベタな閻魔帳だね。」
「なかなか良いのが見つからなくて。まぁ、形から入ると言う事でベタな色味にしました。」
バインダーを開けると、内側の隅に名入れしてあった。特注品だ。
「奈月、これ…、わざわざ作らせたのかい?」
「うん。折角だから。大事に使ってね。」
「もちろん。ありがとう。」

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1.よく当たる占い
<2.不良と優等生 4.突然の別れ>
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