2010/11/27  0:38 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
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◇◆◇7.ないものねだり

草間のヤツ、あんな美人を連れてきて。
彼女じゃねぇとか言っていたけど、あんなに自然に仲良くて、彼女じゃねぇならなんだって言うんだ。
やっぱ、アイツを呼ぶんじゃなかったかなぁ…。

CD屋で会ってから、恭子が草間君、草間君ってうるさい。
この前も色々聞かれた。
「草間君は普段どんなカンジなの?」とか…
「草間君の眼鏡、カッコいいよね。」とか…
「草間君はやっぱり勉強が出来るんでしょ?」とか…
「草間君はどんなものが好きなのかな?」とか…。
ひたすら草間君づくしで嫌になった。
俺と一緒に居るんだから、他の男のコトなんか聞くなって。
大体、俺のコトをそんなに根掘り葉掘り聞いたことがあるのかよ?
俺のコトはどうでもいいのか!?

ライブが終わって、みんなで掃除する。
オーナーにも聞かれた。
「竜、今日来てたお前の友達、綺麗なコを連れてたな。」
「あぁ、そうだな。生徒会の書記の子らしい。」
「へぇ、会計と書記のカップルか。似合いだな。」
「彼女じゃねぇとは言ってたけどな。」
「いやいや、アレは結構年季入ってんじゃねぇか?」
「俺が知るかよ!」
「そうだな。お前には恭子ちゃんが居るからな。彼女も上玉だからなぁ。」
「下品な言い方するんじゃねぇ!」
「おぉこわっ。」
そりゃ、オッサンどもからすれば、俺達なんてまだまだ子供だからな。
すぐ、こんな風に面白がってからかってくるんだ。

そもそも、俺と草間は同じ学校の隣のクラスっていうだけで、他には何の接点もねぇし。
仲良くもねぇし、アイツの事なんてほとんど何も知らねぇ。
たまたま見かけて、ノルマを売りつけただけなんだから。
アイツを見たヤツみんなが俺にアイツの事を聞いてくる。
俺の周りに居る人間からしたら、アイツは異質で、俺の友達(じゃねぇけど)としては意外すぎて興味津々なのは分かる。
それにしても、アイツはどれだけ影響力があるんだ。
一度会っただけの人間の心をこんなに掴んでしまうなんて思いも寄らなかった。

ライブハウスからの帰り道。楽器を背負って歩く。
「ほら、お前のベースも持ってやるから貸せ。」
「自分で持てるからいいよぉ。」
「…そうか。」
日曜の夜の繁華街。金曜や土曜と比べると少ないけど、まだまだ人が多い。
「ねぇ竜士、今日、草間君来てたね。」
「ああ。」
ほらまた始まった。
「彼、女の子連れてきてたでしょ?」
「ああ。」
それがどうした。
「彼女なの?」
「知らねぇよ!」
なんでそんなコトに興味があるんだ?
「ふぅん?」
「彼女じゃねぇって言ったらどうなんだよ!?」
しつこく言われて思わず口調が強くなる。
「あれ?もしかして、竜士、妬いてる??」
恭子が俺の頬を指を刺して笑う。図星を指されて嫌になる。
「う、うるせー、バーカ!」
「あはは。もう、竜士、機嫌直して!!」
屈託のない笑顔の恭子。ちょっと苛めたくなる。
「…あの彼女、ウチの学校の生徒会書記だって。お前と同い年なんだってさ。」
「へぇ。…だから何?」
「お前とは大違い。」
「…竜士、ああいうコが好みなの?」
「まぁ、綺麗だよな。」
「…。」
ちょっと寂しげな顔をする恭子。お前だって嫌だろうが、俺が他の女のコトを言うのは。
俺は結城さんよりお前の方が絶対美人だと言い切れるけど、それは言わない。
「ま、俺も生徒会会計じゃねぇし、眼鏡でもねぇし、品行方正でもねぇし。」
「…だから何?」
「そういうことだよ。俺は草間じゃねぇし、お前も結城さんじゃねぇし。」
「…訳わかんない。」
「俺達は俺達だっての。似合わねぇよ、あいつらみたいなのは。」
「…竜士は似合うと思うよ。真面目なのも。」
「真面目なのは兄貴だけで十分。」
「もったいないなぁ。」
「いいの!俺には恭子が一番なんだから。」
「ありがと…。あたしも竜士が一番だからね?」
彼女の手を取って、ぎゅっと握って歩く。お前が草間を好きになったとしても手放すもんか。

俺と恭子はこの先もずっとこんなカンジだろう。
恭子が草間に憧れるのも分かる。俺だって草間みたいな秀才には憧れる。
品行方正で冷静沈着、先生たちの信頼も厚そうだし、気が付いたら一年生で生徒会役員なんかになってやがる。
一つ一つの動作が丁寧でどことなく中性的な物腰も、あの眼鏡が似合う顔立ちと細身の身体に嵌っている。
アイツの隣にいる結城さん…。お似合いのカップルだった。
俺も頑張ったらああいう風になれるだろうか?兄貴もきっと喜んでくれるに違いない。
…いや、やっぱり似合わねぇ。アレはきっと持って生まれた気質というヤツだ。
ないものねだりなのは分かっているけど、何の障害もなく人生を歩んでいるように見える草間が心底羨ましかった。

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1.本の虫
<6.ライブ 8.自分の居場所>
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2010/11/21  7:54 | 投稿者: おるん

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◇◆◇6.ライブ

金曜日。生徒会の作業の後、自転車置き場で綾乃を誘う。
「綾乃、日曜の夜はヒマか?」
「え?」
「…これなんだが…。と、友達に売りつけられてしまって。」
綾川のライブのチケットを見せる。
綾乃がチケットをまじまじ見つめて、内容を確認してから言う。
「薫、ロックとか興味あったの??」
「う、いや、余り興味はないのだが、折角だから一緒にと。」
「ふーん。日曜の夜ね。空いてるから一緒に行こう。」
「ありがとう。」
「…ねぇ、これ、友達が出るの?」
やはり俺がロックとは意外なのだろう。訝しげに聞いてくる。
「う、友達と言うか、綾川先生の弟が…。」
「あぁ!あの先生の弟…ってウチの学校だったかしら?」
「見たことないか?赤い髪の不良。」
「!!先生の弟ってあの不良なの?」
あっと驚いた顔をして、声のトーンが上がった。
「知らなかったのか…。」
「学年が違うもの。たまに見かけたけど。」
「そうだな。顔も余り似ていないし…。」
「ところで、薫?」
綾乃がニヤニヤした顔で俺の顔を覗き込んできた。
「なんだ?」
「これってデートなのかしら??」
「なっ…、ち、違う!そうじゃない、誘う人が居なくてだなっ…。」
「…別にどっちでも良いけど、そんなに力一杯否定しなくてもいいじゃない。私じゃそんなに嫌?」
慌てふためいて否定した俺を見て不服そうだ。
かといってデートだと言うのも綾乃に悪い気がする。幼馴染なんだから。
もちろん、綾乃が俺のコトを男として見てくれて、デートしてくれるなら、素直に嬉しい。
「うぅ。嫌じゃない…、寧ろ…。」
おっと、余計なことは言うものではないな。
「何?」
「な、なんでもない。さ、帰るぞ。」
「言い掛けて止めるなんて。ま、いいけど…。」

日曜日の夕方、家の前で綾乃を待つ。
しばらくして綾乃が家から出てきた。
「薫!待たせちゃった?ごめんね。」
「いや、俺も今出てきたところだ。さて行こうか。」
二人で歩いて駅に向かう。
こうして彼女と私服で出掛けるなんて…小学生の時以来…。
横目で彼女を見る。ワンピースなんか着て、一応少しはお洒落をしてきたらしい。
いつの間にか俺よりも背が低くなった年上の幼馴染。
学校ではマドンナとまで言わなくても、それなりに美人で目立つ人気者。
そんな彼女が俺の隣で一緒に歩いている。学校の用事でもなんでもなく、完全に私用で。
ドキドキしないと言えば嘘だ。それに、彼女じゃないけど、少し優越感。

先週行ったライブハウス。中に入ると結構客が入っている。
どこに居ればいいのか分からなくて前に座ったカウンターに行く。
「おう、よく来たな!竜は楽屋に居るぞ。おい、誰か案内してやってくれ。」
マスターが声を掛けてくれて、スタッフの一人がこちらを見て手招きした。
そのスタッフに付いて、ステージの裏手にある狭い楽屋に行った。
「竜!友達来たぞ!」
スタッフがドアを開けて中に呼びかけ、そのまま戻っていった。
綾川が振り向いてこちらにやってくる。
「あぁ!草間か!来てくれたんだ。ありがとな。…か、彼女?」
「あ、いや、彼女ではない…。生徒会の書記の結城綾乃だ。」
驚いた顔をした綾川がほっとするのが分かる。彼女だったらどうだというのか。無性に腹が立つ。
「はじめまして。2-Aの結城綾乃です。ライブ、頑張ってくださいね。」
「はい、頑張るんで、楽しんで行ってくださいね。」
「はい。」
にっこり優しい笑顔を振りまく綾乃。そして、綾乃に連られている綾川の敬語。思わず笑いそうになる。

ライブが始まる。いくつかバンドが出るらしく、最初のバンドに綾川は居なかった。
客席の照明が落とされて薄暗くなる。みんな思い思いの場所に立っていたり、座っていたり。
ワンドリンク頼んで、綾乃と隅のテーブル席に座って聞いていた。
「ライブって初めて。」
「俺もだ。」
なんだか場違いだと思いながら二人、バンドと客の喧騒の中に居た。
掴みということか、全体的にみんなが知っているようなちょっと軽めの曲ばかりだ。
メンバーの一人が曲の間にMCをしている。これがまた、軽妙な喋り口調で笑いを取っていた。

次のバンドが出てきた。さっきとはまた雰囲気が違うバンド。
ロックは詳しくないが、さっきと比べるとヘビィだ。
ギターの音とボーカルの英語の歌。どこかで聞いたことのあるメロディ。
なんだったっけ…?

『山の魔王の宮殿にて』

あぁ!ペール・ギュント!!
ボーカルの横に居るギター。綾川だ。アイツはこれのためクラシック盤を買ったのか。
くくっと声を殺して笑う。綾乃が不思議そうに俺を見る。
「ペール・ギュントだな。」
「あぁ!どこかで聞いたことがあると思った!ロックにもできるのね。」
綾乃も感心しているようだった。
「女の子もいるわよ。このバンド。」
「あぁ。多分、綾川の彼女だと思う。」
「ふぅん…。女の子でもギターとか弾けるってカッコいい!」
「綾乃もこういうものに興味があるのか?」
「んー…。でも楽器が出来るのってカッコいいわよね。」
「そうだな…。」

綾川のバンドはこの前練習していた曲も含めて三曲ほど演奏した。
その後のバンドも少しずつ系統が異なっていたが、どこも整った演奏で楽しかった。
ホーンやウッドベースが入ってジャズっぽいところもあれば、ビートルズのコピーバンドもあった。
全部聞き終わった時には二十一時を過ぎていた。
「綾乃、帰ろうか。」
「うん。楽しかった。また、連れてきて。」
「そうだな。綾川にまた聞いておく。」
楽しいと言った綾乃の顔は、会場の熱気でほんのり上気していた。
ちょっと色っぽくてドキドキする。
「綾川、カッコよかったか?」
「え?…うん、彼、カッコいいね。」
「そうか…。」
綾川に軽く嫉妬する。確かに俺から見てもカッコよかった。

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1.本の虫
<5.兄弟 7.ないものねだり>
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