2019/1/2  23:22 | 投稿者: おるん

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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆19.愛人◆◇◆

10月の文化祭直前、放課後に残って準備をしていると、佐々木が久々に圭子の名前を口にした。

「津川、そういやお前、圭子ちゃんと別れたって?」
「あ?ああ。もう2ヶ月前やで。原口から?」
「そう。でさ、原口から聞いてんけど、圭子ちゃん、学校にちゃんと来てへんって。」
「…体調悪い日くらいあるんちゃうん?原口からもそれ聞いたけど、俺に言われても知らんし…。」
「なんや、冷たいな。1年付き合った彼女やったんやろ?」
「振られたんは俺の方やし、俺関係ないやろ。」
「じゃあ、コレ聞いても冷静で居れる?」

席に着いて作業している俺の前の席の椅子に後ろ向きにまたがって座った佐々木が、眉間に皺を寄せて俺の顔を覗きこむ。

「圭子ちゃん、夜に難波で見かけたで。ごっつう派手な格好して、大分年上の男と腕組んで歩いてた。」
「は?そんな訳…。」
「俺も見間違いやと思ったけど、アレ絶対、村井圭子やった。化粧してても、雰囲気がそのままやったし、俺の顔見て逃げたで。」
「いや、まさか、人違いやろ…。」
「ま、確かめてみたら?
振ったのは圭子ちゃんかもしれへんけど、その原因、お前に全くない訳でもないやろ?
人生踏み外したらかわいそうやぞ。」

…アイツはなんでこう、やることが極端なんや。昔っからそう。
俺のせいではないとは思うし、知ったこっちゃないといえば知ったこっちゃない。
でも、やっぱり、その原因の一端が俺にあるとしたら…、いや、俺になくても、昔から知った幼馴染で、俺が一番大事に思っていた女の子。気にならないはずがない。

◇◆◇

派手な化粧を覚えて、ボディコンワンピを着込み、エナメルのヒールを履いてカナと名乗って心斎橋でバイト。
そこで藤崎という客に気に入られた。

同伴出勤すると手当が貰えるので、ご飯を奢ってもらうついでに同伴してもらっていた。
アフターの日は家に帰るのが億劫で、日本橋にある一人暮らしの藤崎さんの部屋に寝泊まりすることもあった。

3回目の朝、藤崎さんがベッドの中から出て着替えながら言う。

「なあ、カナ。俺の愛人にならへん?」
「えー?彼女ちゃうん?」
「お前、18やったっけ?ガキンチョやんけ。俺と倍歳ちゃうねんぞ。愛人ですらかなり譲歩やぞ。ペットみたいなもんやな。」
「えー、酷いなー。でも、ペットでもいいわ。ここに居っていいんやろ?」
「構へん。大して広い部屋でもないけど好きにしいや。俺が飼うたるから。」
「何か見返り要る?」
「いらんけど…、そやな、少しくらい家事やってくれたら嬉しいな。」
「ふうん、あんまり得意じゃないけど、週に1回くらいなら頑張ってもいいで。」
「よっしゃ、ほな、これ合鍵な。」
「早!」
「前の愛人に逃げられたんよなー。頼んだで。」

私が高校生だと知らない藤崎さんは、朝早く出ていく。
彼が出かけた後、一度家に戻り、制服に着替えて学校に行っていた。
朝起きるのが億劫な時は遅刻して3限からの重役出勤という日もあった。
放課後はクラブがないので寄り道せず家に帰り、着替えてからバイトに行くか、藤崎さんの部屋に戻るという二重生活を送っていた。

◇◆◇

藤崎さんの家にいて気付いたことがある。
私が来るしばらく前まで女がいたのは間違いないが、多分、愛人じゃなくて奥さん。
所々残る痕跡。もしかしたら幼子もいたんじゃなかろうか。
私みたいなガキンチョを相手にせずに、奥さんを連れ戻しに行けばいいのに。

私が先に寝ているベッドに潜り込んできた藤崎さんに向かって言う。

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「藤崎さん、奥さん連れ戻しに行かへんの?」
「は?ガキンチョが。そんなこと言うのはこの口か?」

私の口を塞ぐように濃厚なキス。

「んん…!」

そのまま私のTシャツの裾から手を入れて私の体をまさぐる。

「ああっ!いやん!藤崎さん!」
「藤崎さんって止めよや。信弘でいいから。」
「…信…弘…さん…、いや、止めて……。」
「ん?もしかして、初めてなん?」
「…そんな訳……」
「じゃあええやろ?減るもんでもなし。」
「…っ。」

あっという間にTシャツと下着を脱がされて裸になった。
あちこち敏感なところを攻められて体がピクンと撥ねる。
頑なに閉じている脚を広げられて観念する。

「信弘さん、私…初めてやから…」
「…そんなんはよ言え。今更抑えられんぞ。悪いな、お前の初めて貰うからな。」

あっちゃん…。
ずっと初めてはあっちゃんって思ってたけど別れちゃったしな。
信弘さんのことも嫌いじゃない…。ごめんね。

「ほら、俺に体預けてみ?力抜かんと痛いからな?」
「うん…。」


-続く-

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1.序章
18.自暴自棄
20.鉢合わせ
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2016/5/5  0:10 | 投稿者: おるん

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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆18.自暴自棄◆◇◆

あっちゃんと別れてから、何もかもが色褪せて見えた。
あれだけ憧れていた吹奏楽にもちっとも身が入らなかったけど、家にいてもあっちゃんのことしか考えないので仕方なく部活に行っていた。

夏休みの間は部員にしか会わないのでよかったけど、新学期が始まると嫌でもクラスメイトのナッコに会わなくてはいけない。

「村ちゃん、久しぶり!元気やった?」
「え?ああ、まあ。」
「津川君と別れたんやって?」
「…クラブ忙しかったからね。」

なにそれ。
さぞかし気分良いでしょうね。
あっちゃんと同じ塾だし、顛末を色々聞いたんでしょう?
あっちゃんがペラペラと喋るとは思わないけど、有る事無い事言われてたら嫌だな…。
やっぱり、ナッコには会いたくなかった。
自分でもどんどん卑屈になって、嫌な性格になるのが分かる。

とりあえず文化祭までは部活の舞台に穴を開ける訳にも行かないので、何とか堪えて学校に来ていた。
けれど、クラスで事あるごとに彼と別れたことを話題にされて参っていた。
ナッコを始め、色んな友達が、彼を紹介してあげると気を遣って言ってくれているけど、私はあっちゃんだけだと思っているし、傷に塩を刷り込まれている気分。

学校、辞めようかな。
でも流石に高校中退は洒落にならないよなあ。

◇◆◇

いよいよ参りに参ってとうとう学校をサボった。
1日くらいサボったって平気。
そう思って、マクドでマフィンを食べていた。

「あれ?むんちゃん、何してるん?」
「ナオ!?何って、そっちこそ。」
「学校がおもんなくて。」
「私も似たようなもんやな。」
「へぇ、津川に怒られるんちゃうん?」
「あー…、ひと月前に別れたんよなー…。」
「そうなん?」
「クラブやりすぎでフラれたわ。ま、そのクラブも辞めてんけどな。」

中学で同じクラスだったナオと久々に再会した。
ナオも学校がつまらないらしく、時々こうやってサボっているようだ。
中学時代もそこそこ派手にしていたが、更に派手になって、同じ高1とは思えない。


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コーヒーを持ったナオが私の隣に座り、煙草を取り出して吸い出した。

「おいおい、煙草は止めとけよ。」
「あー、別にええねんって。煙草くらい吸ったってさ、他人に迷惑かからんやろ?自分も吸う?」
「…。」

勧められたマルボロを1本取り出し、吸い込みながら火をつけた。

「ゴホッゴホッ!!ゲホッ。」
「むんちゃん、優等生やなー。吸ったことなかったん?」
「普通吸わんやろ。大体、私、吹奏楽部員やったのに吸えるか。」

煙草臭い匂いに包まれながらも、元々煙草の匂いは嫌いじゃなかった。
なんだか、背徳というか、悪いことをしていることがスリリングで気持ちよく、少し背伸びして大人になった感じがした。

「な、夜ヒマ?」
「まぁ、それなりには。」
「バイトせえへん?」
「何の?」
「ホステス。」
「はぁ!?そんなん、歳バレるやろ?」
「いやいや、認めんかったらいいねんって。客、アホやから色々買ってくれるで?」
「えー…?そんなん、別に買っていらんし…。」
「当然、時給も良いしさ、小遣い稼ぎやと思って行こうや!」
「そやなあ、小遣い稼ぎか…。1日くらい行ってみようかなぁ。」
「そうこんと!ほら、服貸したるから今からウチおいでや!」

別にそんなにお金が欲しいわけでもなかった。
新が知らない大人の世界に少し興味が湧いた。
おそらくこのまま堕落してしまうであろう事が想像できたけど、その背徳の味が魅惑的に思えた。

大人の男と付き合ったりしたら、あわよくば新のことを忘れられるかもと思った。
忘れられなかったとしても、自分からスッパリ諦められるくらい、新に相応しくないくらいドロドロに汚れてしまえばいいと思った。


-続く-

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1.序章
17.祭りのあと
19.愛人
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