2016/5/5  0:10 | 投稿者: おるん

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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆18.自暴自棄◆◇◆

あっちゃんと別れてから、何もかもが色褪せて見えた。
あれだけ憧れていた吹奏楽にもちっとも身が入らなかったけど、家にいてもあっちゃんのことしか考えないので仕方なく部活に行っていた。

夏休みの間は部員にしか会わないのでよかったけど、新学期が始まると嫌でもクラスメイトのナッコに会わなくてはいけない。

「村ちゃん、久しぶり!元気やった?」
「え?ああ、まあ。」
「津川君と別れたんやって?」
「…クラブ忙しかったからね。」

なにそれ。
さぞかし気分良いでしょうね。
あっちゃんと同じ塾だし、顛末を色々聞いたんでしょう?
あっちゃんがペラペラと喋るとは思わないけど、有る事無い事言われてたら嫌だな…。
やっぱり、ナッコには会いたくなかった。
自分でもどんどん卑屈になって、嫌な性格になるのが分かる。

とりあえず文化祭までは部活の舞台に穴を開ける訳にも行かないので、何とか堪えて学校に来ていた。
けれど、クラスで事あるごとに彼と別れたことを話題にされて参っていた。
ナッコを始め、色んな友達が、彼を紹介してあげると気を遣って言ってくれているけど、私はあっちゃんだけだと思っているし、傷に塩を刷り込まれている気分。

学校、辞めようかな。
でも流石に高校中退は洒落にならないよなあ。

◇◆◇

いよいよ参りに参ってとうとう学校をサボった。
1日くらいサボったって平気。
そう思って、マクドでマフィンを食べていた。

「あれ?むんちゃん、何してるん?」
「ナオ!?何って、そっちこそ。」
「学校がおもんなくて。」
「私も似たようなもんやな。」
「へぇ、津川に怒られるんちゃうん?」
「あー…、ひと月前に別れたんよなー…。」
「そうなん?」
「クラブやりすぎでフラれたわ。ま、そのクラブも辞めてんけどな。」

中学で同じクラスだったナオと久々に再会した。
ナオも学校がつまらないらしく、時々こうやってサボっているようだ。
中学時代もそこそこ派手にしていたが、更に派手になって、同じ高1とは思えない。


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コーヒーを持ったナオが私の隣に座り、煙草を取り出して吸い出した。

「おいおい、煙草は止めとけよ。」
「あー、別にええねんって。煙草くらい吸ったってさ、他人に迷惑かからんやろ?自分も吸う?」
「…。」

勧められたマルボロを1本取り出し、吸い込みながら火をつけた。

「ゴホッゴホッ!!ゲホッ。」
「むんちゃん、優等生やなー。吸ったことなかったん?」
「普通吸わんやろ。大体、私、吹奏楽部員やったのに吸えるか。」

煙草臭い匂いに包まれながらも、元々煙草の匂いは嫌いじゃなかった。
なんだか、背徳というか、悪いことをしていることがスリリングで気持ちよく、少し背伸びして大人になった感じがした。

「な、夜ヒマ?」
「まぁ、それなりには。」
「バイトせえへん?」
「何の?」
「ホステス。」
「はぁ!?そんなん、歳バレるやろ?」
「いやいや、認めんかったらいいねんって。客、アホやから色々買ってくれるで?」
「えー…?そんなん、別に買っていらんし…。」
「当然、時給も良いしさ、小遣い稼ぎやと思って行こうや!」
「そやなあ、小遣い稼ぎか…。1日くらい行ってみようかなぁ。」
「そうこんと!ほら、服貸したるから今からウチおいでや!」

別にそんなにお金が欲しいわけでもなかった。
新が知らない大人の世界に少し興味が湧いた。
おそらくこのまま堕落してしまうであろう事が想像できたけど、その背徳の味が魅惑的に思えた。

大人の男と付き合ったりしたら、あわよくば新のことを忘れられるかもと思った。
忘れられなかったとしても、自分からスッパリ諦められるくらい、新に相応しくないくらいドロドロに汚れてしまえばいいと思った。


-続く-

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1.序章
17.祭りのあと
19.愛人
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2016/5/5  0:08 | 投稿者: おるん

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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆17.祭りのあと◆◇◆

結局、あっちゃんとナッコのことを考えていて眠れなかった。
昼から部活の予定だったけど、体調不良ということにしてサボった。

「家に居ても暗くなるだけやな…」

寝不足でクラクラする体を無理矢理起こして、外に出る。
お祭りの屋台が開いていた夜とは打って変わって、静かな公園。
今晩も祭りがあるから、ほんの少しお祭りの雰囲気は残っているけれど。

公園のブランコに腰掛けて呟く。

「あっちゃんと行きたかったのになぁ…バカ。」
「圭子!」
「!!あっちゃん!?」

私が家から出るのを見かけて、そのまま追いかけてきたらしい。
あっちゃんの顔を見て、昨日の屈辱的な出来事が蘇る。
あっちゃんが悪いんじゃない。でも、怒りが沸々と湧いて抑えられない。
あっちゃんに八つ当たりする前に立ち去らないと。

立ち上がってそのまま、一目散に逃げる。

「お、おい!?」

走って逃げる私をあっちゃんが追う。
当たり前と言えば当たり前。
私ってバカだな。

「付いて来んといてよ!」
「待てって!」

必死で逃げるも逃げ切れる訳もなく、100mも行かない内に腕を捕まれた。

「あほか、足の遅いお前が俺から逃げれる訳ないやろ。」
「あほー!離してや!あっちゃんのバカ!大っ嫌い!」
「ああ、もう!俺が悪かったって!今晩こそ一緒に行こうや、2人で。」
「行かへんもん!昨日も行ったし、もういいもん!」
「圭子!」
「何よ!あっちゃん、私よりナッコのこと優先したくせに!」
「断り切れんかったんは俺が悪かったって言うてるやろ!?お前かって行ってこい言うたやろ!?」
「そんなん!あの場でナッコ突き飛ばしでもすればよかった!?」
「そんなこと言うてへんやろ!?
原口優先って言うけど、そんなんお前かっていつも部活優先やんけ!俺が寂しないとでも思ってるん!?」

あっちゃんの言葉にハッと息を飲んだ。
そう、あっちゃんにいつも我慢させているのは私。

「…ごめん、私が悪い…」

それまで力一杯抵抗していた体の力を抜く。
あっちゃんに引き寄せられて、抱き締められた。

涙がポロポロ流れて止まらない。
嗚咽を堪えて泣き続けた。あっちゃんはそんな私の頭を優しく撫でた。

あっちゃん、ごめん…。
やっぱり、あっちゃんは私とじゃダメだ。
私みたいなワガママ女じゃなくて、もっと他にふさわしい人がいると思う。
あっちゃんにこんな我慢させる彼女なんか、彼女じゃない…。

ほとぼりが冷めて落ち着いた頃、あっちゃんの胸から顔を上げる。

「あっちゃん、ごめん。鼻水付いたかも。」
「え!?…まぁええわ。で、どうする?今晩。」
「んー…、昨日、ミルクせんべいとかき氷食べてないから、それ買う。」
「分かった、じゃあ7時位に家の前でいい?」
「うん。」

◇◆◇

その日の夜、新しく買った服は見せられなかったけど、2人でお祭りに行った。

昨日のことがあったから、そしてあっちゃんの不満を聞いてしまったから。
折角2人で来たのに心から楽しめない、心が狭い私。
あっちゃんもそんな私に気付いてか、気遣ってくれる。

ミルクせんべいの枚数を競ってみたりして、カラ元気を出してみるものの、やっぱり何か違う。
最後にかき氷を買って、シャリシャリ食べながら家に向かう。

家の前に着いて、別れ際に言った。

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「なぁ、あっちゃん。私ら、もう別れよう?」
「え?」
「やっぱり、我慢しながらとかそんなんおかしいよ。私みたいなん、相手にしたら疲れるやろ?」
「なにそれ?おもんない。お前、それで良いん?」
「…いいよ。」
「お前、いつもそうやって自分で勝手に決めて。何のために俺が居るん?」
「…うーん?あっちゃん、かっこいいし、優しいし、頭も良いし。」
「…」
「私には勿体なすぎた!」
「もう、ええ加減にせえよ?」

あっちゃんが腕を振り上げた。
しばかれる!
そう思って身を縮めたけど衝撃は来なかった。

「そやな。お前みたいなん相手にすんの、疲れたわ。」

目を開けると、あっちゃんが私から目を逸らして溜め息をついた。

「ごめんな、あっちゃん。私、ワガママで。あっちゃんのこと、ずっとずっと大好きやのに…!」
「あほ。別れるときに言う台詞ちゃうやろ。振るんやったらな、もっと悪役に徹せんと、未練が残るやんけ…。」
「ごめん。ごめんなさい…あっちゃん…。」

震える体を、震える手を必死で抑えながら、震える声でそうやって謝るのが精一杯だった。
今まで15年間、一度だって見たことがなかった、あっちゃんの苦痛の表情。

「…圭子、お前のこと泣かせたかった訳ちゃうねん。笑っててほしいから。
俺のこと好きやって言うてくれて傍に居ってくれて、嬉しかった。ありがとう。
…もう、明日からは只の幼馴染みやな。おやすみ…。」

そっと開けられた門扉がキィと小さな音を立てた。
そのまま家に入っていくあっちゃんの後ろ姿を見送った。

こんなことで別れなくても良かったのかもしれないけど、遅かれ早かれ、こんなことになるだろうと思っていた。
お互い若いんだもん。付き合って心を許せば許すほど、互いに求めるものが大きくなる。
本来ならそれをも乗り越えていくべきなんだろうけど、私にはまだ、乗り越えられる自信がない。
幻滅されたくないし幻滅したくない。
だからこれで良かったんだと思う。

私の初めての恋が終わった。


-続く-

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1.序章
16.夏祭り
18.自暴自棄
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