2013/3/26  22:28 | 投稿者: おるん

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◇◆◇2013年3月薫【仮校舎公式イベ】彼女の弱味

先月のバレンタインデーでは散々な目に遭った。
元々は俺が悪いのだけれども。
1日遅れで彼女のチョコを受け取り、ブラウニーを食べた……。

不味くはないはずだと聞いていたが、なかなかどうして、プレーンマフィンをあれほど不味く作れる腕前だったわけだから、致し方ないのか。

ブラウニーは比較的簡単なお菓子だと思うのだが、なかなかどうして。
焼きすぎたのか、分厚いクッキーのようになっていた。

「どう?薫くん??」
「…うん。そうだな…食べられないことはないが、これではチョコクッキーだぞ。」
「えー、そんなぁ。」
「…頑張ったことは評価しよう。」

……ということで、ホワイトデーにお返しも兼ねてブラウニーを一緒に作ることにした。
俺が作るだけならば、もっと豪華なものにするつもりだったが、それでは折角お菓子作りを始めた彼女に悪い気がしたのだ。

「明日の放課後、俺の家に来ないか?
家のほうが色々道具も揃っているし、使い慣れているから。」
「え!?薫くんのお家でやるの!?」
「なにか問題でも?」
「だって、やっぱり、男の子のお家に行くのって緊張しちゃう。」
「弟たちもいるかもしれないが、多分塾やらなんやら、出かけていると思うから気にすることはないぞ。」
「でも…。」

…別に下心があるわけではないんだが、用心するのは理解できる。

「ふむ。では、学校の調理室でやろうか?利用申請を出しておく。」
「うん。わかった。明日、エプロン持ってくるね。」
「さて、君さえ良ければだが、これから一緒に明日の材料を買いに行かないか?」
「え?あ、うん。今日はこの後、お母さんと約束があるの。いるものがあれば私、買ってくるよ?」
「そ、そうか。材料はこちらで用意するから構わない。
ブラウニーに入れたいナッツなどがあれば持って来てくれれば。」
「うん。ありがとう。ごめんね、また明日。」

◇◆◇

いよいよ放課後。
調理室の鍵を開け、調理台に材料と道具を並べる。
エプロンをつけたところで、彼女がやってきた。

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「か、薫くん、お待たせ!
…あのね、薫くんとブラウニー作るって話したら、友達も一緒にって…。
…いいかな?」

彼女の後ろから彼女の友達がひょこっと顔を出した。

(なっ…なんでそうなる。今日はホワイトデーだぞ…。)

露骨に嫌な顔をしては彼女の面目を潰すことになる。
仕方なく愛想笑いで答えた。

「ああ、構わない。結構大きなブラウニーになるだろうから。」
「薫くん、ありがとう!よかったー。」

なんだかんだと3人で和やかに話しながら作業が進む。
彼女はいつもより饒舌な気がする。

ブラウニーをオーブンに入れて一服。
お湯を沸かして紅茶を入れる。
唐突に彼女の友達がこんなことを聞いてきた。

「ね?会長はデートならどこがいいと思う?」
「え?そうだな…、最初は映画かなんかがいいんじゃないか?」
「映画かー…。」
「共通の話題ができるから会話しやすいだろう?
俺の個人的な好みとしては、映画よりは美術館や博物館が好きだが、相手に興味がないものだとそれも申し訳ないし。」
「び、美術館に博物館…敷居高いね。」
「そうでもないと思うんだが…。」

彼女とはまだちゃんとしたデートはしたことがない。
それを分かっての質問なんだろうか…。
彼女の顔色が気になる…。

「び、美術館、時々展示物が入れ替わるし、いいよね!!」

彼女が突飛に上げた声に相槌を打つ。

「あ、ああ、そうだ。結構頻繁に入れ替わるから面白いぞ。」
「う、うん!」

3人の間に微妙な空気が流れ始めたところでブラウニーが焼ける。
焼き立てを少し切り取り、お茶請けにする。

「さて、これを食べ終わったら、片付けて撤収しようか。
あとで、残りを切り分けてラッピングしよう。」
「あ、これ、ふわふわで美味しい。」
「冷ますともう少ししっとりするんだ。」
「へぇ…。」
「レシピはちゃんとメモを取ったか?
レシピどおりやれば、難しくないから大丈夫だ。」
「ばっちり!また今度作ってくるからね。」

◇◆◇

調理器具もほぼ洗い終わったところで、彼女の友達がエプロンを脱ぎ、
「このあと用事があるの、お先にごめんね」とウインクをして去って行った。
彼女は自分も帰りたそうにしたが、まだ片付けをしている俺に気兼ねして渋々手伝ってくれているようだ。
片付けが終わり、エプロンを外したところで彼女が声を上げた。

「じゃ、じゃあ、私、もう帰らないと!」

この時間から行くところはないだろうに、なぜそんなに急ぐのだろう?

「もう?やっと2人きりに…」
「…ご、ごめん。」

申し訳なさそうにうつむく彼女。
そこまで頑なに俺から離れようするのは…。
考えたくなかったことが脳裏をよぎる。
言わなくてもそうだろうと自分に思い込ませていた言葉が口からついて出た。

「…俺たちって、付き合っているんだよな?」
「う、うん。私はそのつもりなんだけど…。」
「まだデートもしたことがない。
いつも2人きりになったと思ったらすぐに君はいなくなってしまう…。」

黙っている彼女を見ているのがもどかしい。
ずっと自分の気持ちをはっきり言わなかった俺も悪いのだろうが、これでは飼い殺しではないか。

「改めて言う。俺は君が…、君が好きなんだ。
好きという言葉だけでは足りない。
君ともっと一緒に居たいし、独占したい!」

彼女はうつむいたまま身じろぎもしない。
やはり、俺のことを好きではないのかもしれない。
無理矢理付き合ってもらっているのでは彼女に申し訳ない。

彼女には格好悪いところを見られたくなくて、いつも平静を装っているが、本当は彼女と一緒にいるとドキドキしてしまう。
手が触れたりすると飛び跳ねそうになるし、汗をかいたり、声が上ずったりする。
それを今も必死で押さえている。

「か、薫くん…、あのね。」

うつむいたままの彼女が細い声を絞り出して話し始めた。

「わ、私も薫くんのこと大好きなんだよ。ずっと前から好きで、薫くんと付き合えてすごく嬉しいの。」

じゃあなんで?と問い詰めたい衝動を抑えて彼女を見守る。

「薫くんのそばに居ると、くすぐったくて照れちゃって、勝手に顔がにやけちゃうの。
そんなところを薫くんに見られちゃうのが恥ずかしくって。
それで今日も友達に無理矢理付き合ってもらったの…。」

そういって彼女がはにかんだ顔を上げた。
俺を散々悩ませたあの日々はこういうことだったのか。
悩んだことすらバカらしくなって泣きそうになる。

バカだな。俺はそんな君もすごくかわいいって言い切れるのに。

泣きそうな顔を見られたくないのと、彼女がいとおしくてたまらないのとで、力いっぱい彼女を抱きしめた。

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「か、薫くん!!」
「週末、デートしよう。美術館。」
「や、やだっ!恥ずかしいもん…。」
「そうやって恥ずかしがっている君もかわいいんだ、気にするな…。」
「薫くんって、そんな恥ずかしい台詞、言えたんだね?」
「ばっ!バカ!!俺だって恥ずかしい台詞だと思いながら言ったんだぞ!?…で、どうするんだ?デート。」
「もちろん、行きます!薫くんだけに恥ずかしい思いさせられないもんね。」

-終-
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2013/2/10  3:21 | 投稿者: おるん

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◇◆◇2013年2月薫【仮校舎公式イベ】俺の弱味

今日はバレンタインデー。
世の中の男子が一番ソワソワする日だと言っても過言ではないはずだ。
かくいう俺も若干ソワソワしている。

毎年、家族と生徒会の女子役員から義理チョコを貰う。
今年の生徒会の女子はどちらかと言えば食い気のようだから、貰えないのではなかろうか。
あとは、生徒会長の有名税というヤツか、女子生徒が幾人かやってきたりするが、受け取らないようにしている。

…本命チョコ、ちゃんと貰えるだろうか?
昨日の下校時も今朝も彼女はチョコの話をしなかった。
彼女だと思っているのだが、もしかして違うのだろうか?

そんなことを考えているうちに放課後になった。
生徒会室に向かう廊下。毎年なら人だかりができる国語準備室の前が閑散としている。
綾川先生が休んでいるせいか。

生徒会の作業をし終わっても彼女が来ない。
がっかりしながら、荷物をまとめ、生徒会室を出ようとしたところに彼女がやってきた。

「薫くん!遅くなってごめんね!!」
「…いや、別に君を待っていたわけではない。」
「あの、これ…。バレンタインデーだから…。」
「他にも配ってきたのか?」
「え?違うよ!今年は薫くんだけに用意したし、薫くんのためだけに作った本命だからね!!」
「!!! そ、そうか、すまない…。ありがとう。大事に食べさせてもらう。」
「頑張って作ったんだからね。美味しいかどうかわかんないけど、不味くはないと思うから!」
「そうか。もし君も帰るのなら一緒に…」
「あ!ごめん!友達がチョコ渡せなくて、ちょっと付き合ってくるの。ごめんね!また電話するから!」

そういって、彼女は廊下を走って去っていった。
俺の手に、彼女からの赤い包みが残った。

本命チョコが貰えたのだから本望なはずなのに気持ちが少し沈む。
昇降口までやってきて、彼女のチョコを手に持ったままだったことに気が付く。

(鞄にしまわなくては…)

そう思って立ち止まったところに鈍い衝撃が走った。
足元に色とりどりのチョコレートと思しき包みが散乱する。

「うわ!!会長!ごめん!!」

声の方に視線を向けると、そこに相葉がいた。
どうやら、このたくさんのチョコは相葉がファンから貰ったものらしく、一生懸命拾い集めて紙袋に詰め込んでいる。
向こうから走ってきた相葉と衝突し、彼が持っていた紙袋や鞄からチョコがばらまかれたということらしい。

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「いや、こちらこそすまない。前を見ていなかった。」

はたと自分の手元を見て焦る。彼女から貰ったチョコがない!
足元には散らばったチョコをかき集める相葉。

(あっ!)

相葉の手が赤いチョコの包みをとらえようとした時、それを隙からかすめ取った。

良かった。チョコをなくしたなどと、彼女に言えるわけがないからな。
安堵した俺を尻目に相葉は残りを全て拾い終わり、じゃあね!と去っていった。

◇◆◇

夕食後、そそくさと自室に上がり、彼女のチョコの包みを取り出した。
小ぶりの直方体の箱が赤い包装紙で包まれていて、ピンクのリボンと白いハートのシール。
慎重に包みを開けると、そこにはハート型のチョコケーキがあり、メッセージが添えられていた。

『駿くんへ
 いつも一緒にいてくれてありがとう
 バスケしてる駿くんが大好きだよ!
 これからもずっと仲良くしてね』

「な!な!な、なんだこれ!?」

思わず叫んだ。
驚きすぎて卒倒しそうになった。

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俺だけに渡したんじゃなかったのか?
本命だって言っていたじゃないか!
君と俺は付き合っているんだと思っていたのに。
俺は騙されていたのか!?
そもそも、俺が勝手に勘違いしているだけなのか!?

彼女に電話をしようと携帯を手に持った。
が、なんと切り出せば良いのか分からず、そのまま机に突っ伏して悶々とする。

(…『相葉とも付き合っているのか?』って聞くのもなぁ…。
『俺のチョコはどこだ?』って言うのもおかしいだろう…。
『俺に隠していることはないか?』…よし、これでいこう!
…いや待て、本当にこれで良いのか?)

うーんと唸って考え込むと同時に携帯がうーんと唸った。
彼女からの着信だ。戸惑いながらもとりあえず出る。

「はい。」
「あ、薫くん?ブラウニー食べてくれた?初挑戦だったんだー。くるみも入れたんだよ!」
「え、ああ、まだ開けてないんだ…。」

くるみ入り?プレーンなガトーショコラだと思ったんだが…。

「そうなの?感想聞きたかったのにー。ラッピングも可愛いでしょ?」
「赤い包装紙にピンクのリボンだな。」
「うん、白薔薇の造花が可愛いでしょ?苦労したんだよー。」
「白薔薇の…?」

ハートのシールが貼ってあるが…白薔薇を何処かに落としてきてしまったんだろうか?

「シールが貼ってあるが…。」
「シール?そんなの貼ったかなぁ??」
「君は俺以外にもチョコを渡さなかったか?」
「え?今年は薫くんだけだって言ったでしょ?」
「…それが、今手元にあるチョコなんだが、相葉宛のメッセージカードが入っていてだな…。」
「え?なにそれ??」

彼女が驚いた声を上げる。嘘はついていないようだ。
では、どうしてこんなことになったのか…。
チョコを貰ってから廊下を歩いて昇降口に…。

「………あっ!!!」
「ど、どうしたの?」
「いや…、それが、どうやら君のチョコと誰かのチョコを取り違えたらしい。」
「ええー!?どういうこと!?」
「あれから昇降口の前で相葉とぶつかってだな、お互い持っていたものを廊下にぶちまけてしまって。」
「相葉くんか…、たくさんチョコ持ってたね。」
「すまない、拾うときによく似たラッピングの他のチョコと取り違えてしまったようだ。」

本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。彼女を疑うなんて。
自分にガッカリして溜息をついたところで彼女がくすっと笑う。

「薫くんでもそんなことがあるんだね。」
「まぁ、…俺も弱味があるからな。」
「え?なになに??」
「ば、バカ!そんなこと言えるか!」
「えー?チョコ取り違えたくせにー!!」

うぅ。そう言われると反論できない。

「…君だ。君と一緒に下校できなくて考え事をしていたものだから…」

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電話口でぼそぼそ呟くと彼女が声を上げて笑った。

「ふふっ。ふふふっ。薫くん、かわいいね!しばらくこれでからかおっと!」
「や、やめたまえ!!」

彼女が悪巧みする顔が目に浮かぶ。
恥ずかしくて顔が熱くなる。

「…私のブラウニー、相葉くんに食べられちゃったかなぁ…。残念。」
「…まぁ、また時間があるときに食べさせてくれれば。」
「うん。ブラウニーはまた今度作るね。」
「うん。楽しみにしている。」
「じゃあね、また明日。おやすみ。」
「おやすみ。」

電話を切って安堵する。
それにしても、彼女のはじめてのブラウニーはどんな味だったんだろう?
食べてみたかったような、食べずにすんで良かったような。

-終-
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