2011/8/25  0:01 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
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◇◆◇そのほかの人たち10

ひかりの挨拶が終わり、女子達の歓声が収まった頃、咳払いを一つして話し出す。
「あの、私から一つ、皆さんにお願いしたいことがあります。」
シーンと静まり返った後、少し間を置いてザワザワとざわつきだした。
「私は今日まで独身でしたが、そろそろピリオドを打とうと思っています。
そこで、皆さんにプロポーズの立会いをしていただきたいと思います。」
おおーと会場がどよめく。横にいる彼女も目を丸くして俺を見つめる。

「ひかり、私と結婚してくださいませんか?」

微笑んで、ポケットから指輪を差し出す。
彼女はその指輪を見つめ、固まっていた。
皆、固唾を飲んで見守っている。

「あの…そんな…突然言われても…。」

彼女の顔がどんどん赤くなる。
「バカ!私が断ったらどうする気だったのよ!!」
「ということは??」
「…お受けいたします。でも、浮気は許さないから!!!」

会場が割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。
指輪を彼女の指に嵌めてやった。
流れでキスコールが始まり、コールに応えてキスをした。

近くに座っていた、竜士と草間君があっけに取られている。
「してやられたな…。」
「これのために、俺は幹事を…?」

呆然としている草間君に歩み寄り、話しかける。
「そういう訳ではないのですが、あなたが結婚しろと言ったものですから、いい機会だと思いまして。」
「兄貴、プロポーズ失敗しなくて良かったな。おめでとう。」
「ありがとう。いやぁ、ドキドキしましたよ。ビンタでも食らわされるかと思って。」
そこに相葉君が駆け寄ってくる。
「お姉ちゃん!」
「駿!」
「お姉ちゃん、おめでとう!お姉ちゃんが先生と付き合ってるなんて全然知らなかった!」
「私も付き合ってるつもり無かったんだけど。」
ひかりの言葉に竜士と草間君と相葉君が驚く。
「まぁ…いいじゃないですか…。ひかり、撤回しないでくださいよ?」
「どうしようかなぁー。」
「えぇぇ。」
草間君が立ち上がって、ニヤッと笑いながらこう言った。
「ふふ、早速お尻に敷かれていますね、先生。…さてと、ぼちぼち締めますかね。」

マイクを持った草間君が挨拶をした。
「さて、皆さん、最後にスペシャルなサプライズがありましたが、いかがでしたでしょうか?
宴もたけなわではございますが、これをもって、今回の同窓会は終了とさせていただきたいと思います。
最後に我らが母校、白薔薇学園の繁栄と、皆さんの益々のご健勝を祈って、一本締めを行います。お手を拝借。ヨーォッ!」
拍手が小気味良いリズムを刻んで食堂に響いた。

◇◆◇

皆がぞろぞろと、元生徒会役員の俺達に挨拶をして帰っていく。
綾川は仕事だと言って帰っていったが、数人の有志と相葉姉弟が片付けを手伝ってくれた。

「それにしても、綾川先生のプロポーズ、びっくりしたね。」
「あぁ。」
「かっこよかったなぁ…。」
「…そうだな。」
「あ、でも、薫君のプロポーズも素敵だったよ。十年前の約束、守ってくれて嬉しかったし…。」
「本当は、最後の挨拶で君と結婚することを言おうかと思ってたんだが、先生のサプライズで言えなくなったからな。」
「ふふ、薫君、そんなこと考えてたんだ。」
「まぁな。ネタが無かっただけだがな。」

片付けが終わって、学校を出る。
「今日はお疲れ様でした。草間君、谷本さん、安田先生、中手川君…相葉君も、皆さんありがとうございました。
また機会があれば、同窓会をやりましょうね。」
綾川先生が微笑んでそう言った。俺と桜と安田と、口々に次回の時期を言う。
「そうですね。次はまた十年後ですかね?」
「五年後でも良いんじゃない?」
「三年後?」
それをにこやかに見つめながら先生が答える。
「いつでもいいですよ。」
「次はサプライズで離婚式とか止めてくださいね。」
俺の嫌味に桜が慌てて謝る。
「薫君!ごめんなさい、お姉さん!」
「あはは、良いのよ。私もそんな気がするし。」
「えぇ!?ひかり、さっきプロポーズしたばかりなんですよ。」
先生のうろたえぶりに皆が笑った。

十年経ってもまだ俺は綾川の思惑通りに踊らされているのかと溜息を吐いた。
この腹黒教師め。
今回だけは素直に祝って、幸せを願ってやる。

「先生、おめでとうございます。どうか末永くお幸せに。」

-終-

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十年後1.約束の日
十年後そのほかの人たち
<十年後そのほかの人たち9
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2011/8/24  23:59 | 投稿者: おるん

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◇◆◇そのほかの人たち9

食堂の外で草間君を相葉君に引き合わせる。
その時、視界の隅に人影が入り、食堂の裏に去っていくのが見えた。
追いかけて角を曲がったところで、その人物が誰だかわかった。

「ひかり!」
呼ばれた彼女がビクッと肩を震わせた。
「…っ!ひ、久しぶり。司さん。」
恐る恐る振り向いた彼女がそう挨拶をした。
「来てくれたんですね。」
「わ、私、忙しいんだから!駿がどうしてもって言うから付き添いで来てやっただけよ。」
うつむいて、泣きそうな声で叫ぶ。
「来てくれないかと思ってた。」
「…司さんこそ、自分の都合のいいときだけ、こうやって私を呼び寄せて、いい顔をするんでしょ?」
「ごめん。ひかり…。」
「わ、私はもう、あなたの彼女でも何でもないんだから!」
「…。」
「他の女と勝手にどこにでも行けばいいじゃない!」
最後の方は悲鳴に近い、か細い叫びだった。

◇◆◇

十年前、俺たちは確かに付き合っていた。
当時、彼女はまだ大学生だったから、そうそう毎日夜中に連れまわす訳にも行かなかった。
ひかりが居ない日は、奈月の居ない寂しさを紛らわすように酒を飲み歩いて居た頃に知り合った女達と繋がっていた。
恋人ができたにも関わらず、そうやって現実から逃げて惑う数人の女達と怠惰な関係を続けていた。

本当に愛したのは奈月だけだった。愛してくれたのは奈月だけだった。
正確に言うと、他人の愛し方、他人からの愛され方が分からなかった。
奈月だけが俺の本質を見てくれていたと思っていた。
奈月が居ない。キスなんて、セックスなんて、一時の快楽を得るだけで、誰としても同じだと。

ひかりがそのことを知ったのは、付き合い始めて半年くらいの頃だろうか。
彼女を傷つけ、泣かせた。
それでも惚れた弱みだったのか、求めれば応じてくれた。
「司さん!私だけを見てよ!こんなにもあなたの傍に居るのに!」
「あぁ、君だけだよ。」
「ウソばっかり!」
泣きじゃくる君を強引に犯したこともあった。
「ん…司さん…。好きなの…。」

彼女ももう子供ではなかったから、そういう関係でも一種の慣れと諦めでずるずると続いた。
彼女にも俺とは別の恋人が居た時期もあったし、俺にも別の恋人が居た時期があった。

◇◆◇

か細い叫び声をあげたひかりの腕を引いて抱きしめた。
「ひかり、彼氏は元気?」
「そっちこそ、彼女は元気?」
俺の腕の中にすっぽり納まって、胸に顔をうずめている。
「ん…、今、彼女って呼べる人は居ないんだ。」
「私も…。強いて言うなら、腐れ縁の司さんくらいだから。」
「そっか…。」
彼女を肩を掴んでそっと引き剥がして、潤んだ瞳を見つめた。
「…何よ?」
「ふふ、野暮ですね、お姫様。」
「…。」
「キスしても、いいかな?」
彼女はふふっと笑って、俺の首に腕を巻きつけ、熱烈なキスをした。
「んんっ!!!ぷはっ!ひかり!」
キスを終えると、彼女は俺からパッと離れた。
「私はもう、お姫様なんて言われる歳じゃないもんね!」
「…俺にとっては、君は永遠にお姫様だよ。」
「ばっかじゃないの?」
「そうですね……ほら、折角来たんですから、後輩達に挨拶の一つでもしてやってください。」
「仕方ないなー。綾川先生がそこまで頼むんなら一肌脱いであげますよー。」

そろそろ、宴もたけなわの頃。
彼女を食堂に案内し、集まっている同窓生達に紹介した。
「今日はもう一人スペシャルゲストが来ています。相葉駿君のお姉さんで相葉ひかりさんです。」
「こんにちは。相葉ひかりです。今日は弟に付いてきました。とんだ愚弟ですが、仲良くしてやってくださいね。仲良くしてくださった方には、もれなく私の占いを一回受けられます!」
きゃーっ女子達のと歓声が上がった。

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十年後1.約束の日
十年後そのほかの人たち
<十年後そのほかの人たち8 十年後そのほかの人たち10<完結>>
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