喇叭水仙(桜薫る番外編) 9.雨降って地固まる(後編)

2011/2/20  3:50 | 投稿者: おるん

---------------------------------------------
注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
 ウェブカレはリンクシンク社のSNSサービス名です。
 小説内の設定は必ずしもウェブカレ公式設定と同じではありません。
---------------------------------------------

◇◆◇9.雨降って地固まる(後編)

教室を出てサクラの下に行こうとしているであろう彼を引き止める。
「待って。」
「?」
「私の言うことも聞いてくれない?」
「なんだ?」
彼が再び私の方に向き直した。
私は彼に近づいて、間際に立つ。
少し背が伸びた彼。目線が合わなくなっていた。
「…どうしてサクラなの?」
「え………。」
「………。」
私達の間に沈黙が流れる。
彼の肩におでこを付けた。彼の匂いがする。
「や………。」
彼が何か言いたそうにしている。気にせず彼の背中に手を回して抱きついた。
「草間君…。」
「………。」
彼の体温。吐息。全てが愛おしい。出来ることならずっとこうしていたい。
「や、山本…?」
「私…、ずっと好きだったんだよ?草間君のコト。」
彼の体が熱くなるのが分かる。
「………。」
彼が沈黙する。多分、答えに困ってる。
背中に回した手を解き、顔を上げる。
背伸びして目線を合わせ、キスしようとした。
「!!」
彼が私の両肩を掴み、引き離して拒んだ。
「…。」
「…。」
いつも冷静な彼が顔を真っ赤にしていた。
「…恥掻かせないでよ。」
「…すまない。………こういうとき、なんと言うのが相応しいのか…。」
そう言って視線を逸らした彼。そしてこう続けた。
「悪いが、君のコトをそういう対象として見た事はない。」
あぁ、ストレートに直球投げてきた。
もうちょっとやんわり断るのかと思ったけど。
食い下がって困らせてみるのもいいかもしれない。
でも、やっぱり好きな人にこんな顔をさせておくのは嫌だ。
「…いっそ嫌いだって言って欲しいよ。」
ますます彼が困った顔をした。
彼が泣きそうなのかもしれない。いや、私が泣きそうなんだ。
すこし間が空いた後、彼が真顔になる。
「…そうだな。好きじゃない。」
彼が出した結論だ。
嫌いとは直接言わなかったのは彼の気遣い…?
いや、好きじゃないと言うのは本心なんだろう。
嫌いじゃなくても嫌いだと言って欲しかったのに。
「私、帰る。サクラと仲良くね。」
「ああ。」
彼をその場に残して教室を後にした。

そのまま部室には戻らずに屋上へ行った。
誰も居ない放課後の屋上。
いっそ飛び降りてやりたいくらいの気分。
一月の風は頬に突き刺さりそうなくらい強くて冷たい。
空気は澄んで、空には高いところに筋雲が出ていた。
風が目に入って、涙が止まらない。
「草間君…。」
ずっと好きだったのに。
必死でサクラを守ろうとする彼。
やっぱり私がそのポジションに入ることはできないんだ。
分かってたことじゃない。分かってたのに…。
私がずっと好きだった彼。
その彼が何に代えても守りたい大事なサクラ。
サクラが憎い。私が手に入れられなかったものをいとも簡単に手に入れてしまったのだから。
でも、そのサクラを傷つけることは、彼を傷つけることになる。
私は彼に怒った顔や困った顔をさせたかった訳じゃない。
ただ、私に向けて笑っていて欲しかった。
叶わない望み。
彼がサクラと居て笑っていられるのなら、それもいいじゃないか。
大体、友達に影でこんな汚い嫌がらせをするような女がモテる訳ない。
もう、こんなことは終わりにしよう。

---------------------------------------------
1.図書館の君
<8.雨降って地固まる(前編) 10.幸福の黄色い喇叭水仙<完結>>
---------------------------------------------
0



この記事へのトラックバックURLはありません
トラックバック一覧とは、この記事にリンクしている関連ページの一覧です。あなたの記事をここに掲載したいときは、「記事を投稿してこのページにお知らせする」ボタンを押して記事を投稿するか(AutoPageを持っている方のみ)、記事の投稿のときに上のトラックバックURLを送信して投稿してください。
→トラックバックのより詳しい説明へ




AutoPage最新お知らせ