2015/10/12  5:36 | 投稿者: おるん

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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆11.デート◆◇◆

春休み。
二人で初めて、デートらしいデートをしようとでかけることにした。
学生の身で手持ちが少ないので、なるべくお金がかからないデートにしようと、近場の長居公園へお花見に。

朝からおにぎりとかサンドイッチとか作ってみる。
卵焼き、フライドポテト、ウインナー、マカロニサラダ、プチトマト。

二人分って微妙に難しい。
かわいいお弁当箱とかもなくて、大きめのタッパーに詰めた。

暖かな陽気の中、自転車を駐めて並んで歩く。
幼馴染みだから、ずっと昔から知ってるはずなのに。
登下校でも並んで歩いたのに。
なんだか大人になった彼と並んで歩くのがこそばゆい。

「この辺で花見しよか?」
「うん。」

レジャーシートを敷いてその上に座り、お弁当を広げた。

「お、頑張って作ってきてくれたんや。圭子はいい嫁さんになれるな。」
「ば、ばか!頑張って作ったけど、あんまり自信ないから期待せんといてよ。」
「ん!この卵焼き、美味しいな。甘かったらどうしよかと思ってた。」
「よ、よかったー。私も甘い卵焼きは食べへんから。」

お弁当を食べ始めてしばらくすると、話題もなくなって沈黙が続く。

「……ね、眠くなってきたなー…。」

唐突にそう言ってみて、あっちゃんの様子を見る。

「ちょっと昼寝する?」
「うん。」

レジャーシートにごろんと寝転がった私の腰に、あっちゃんが脱いだ上着を掛けた。
さらっとそんなことができるあっちゃんに少しばかり悔しくなる。

あっちゃんは広場の方を向いて座ったままだ。
小学生の時とは違って、大きくなった背中が色っぽいと思う。

あっちゃんも私のこと、大人になったと思うんだろうか?
思わないような気がする。私だけぽつんと置き去りにされているような気がする。

◇◆◇

ふと振り向くと圭子が小さな寝息をたてて眠っていた。

(おいおい、ほんまに寝てしまうなよ…。)

結構しっかり者なのかと思えば、案外昔のままで抜けてたりする。
それがまた可愛かったりするけど、調子に乗るとろくでもないから絶対言わない。

(今日は張り切って弁当なんか作ってきたりして、疲れたんかな…。)

負けず嫌いでへそ曲がりの圭子が、やけにしおらしくなって、なんとなくこそばゆい。
俺のこと好きやって言って甘えてくる。
もちろん俺を頼りにしてくれるのはすごく嬉しくて、当然目一杯守ってやろうと思ってるけど…。
ほんまにできるやろうか?
俺はまだまだそんなに大人じゃない。
圭子は俺のことを買いかぶり過ぎなんじゃなかろうか?
いつかその事に気がついて、俺から離れていってしまうんじゃないか?
いつか俺よりも夢中になれるものを手に入れて離れていってしまうんじゃないか?

二人でデートに来たのに、どんどん不安になって胸が押し潰されそうだ。

抱えた膝に顔を付け、目をつぶった。

「あっちゃんも眠いん?風邪ひいてしまうで?」

圭子が俺の肩に上着を掛けた。
頭をもたげて圭子を見る。
ちょっと眠そうな顔をして俺の顔を覗き込んだ圭子を引き寄せて抱きしめた。

「わっ!ちょっ!?あっちゃん?」
(俺から離れていくなよ。)
「え?なんて?聞こえへんかった。」

その時、強い風が吹き抜けた。

「わぁ…!あっちゃん、見て、キレイ…。」

圭子に言われて振り返り、空を見上げた。
桜の花びらが風に舞い上げられて、花吹雪になっていた。

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「ほんまやな…。」

「あっちゃん…、来年も一緒にお花見しような!」

そう言って微笑んだ圭子はいつもよりほんの少しだけ大人っぽく見えた。
そんな顔をして俺の手を握ったりする。
本人は知ってか知らずか、俺の心をこうして縛りつける。
惚れているのは俺の方。


-続く-

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1.序章
10.卒業
12.入学
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2015/10/12  5:26 | 投稿者: おるん

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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆10.卒業◆◇◆

いよいよ卒業式。
今まではみんな一緒に横並びで同じことをしていたけれど、これからはそれぞれの目標に向かって別々の道を歩き出す。
幼馴染みのあっちゃんとはずっと同じ幼稚園、小学校、中学校に通っていたけど、高校からは別の学校になる。
そんなこと初めてのことだからちょっと不安。

胸に赤いバラのバッチをつけてもらって卒業式に臨む。
卒業証書を受け取り、仰げば尊しを歌った。
学校は好きでもなくて、むしろ嫌いだったから、悲しくもなんともない。
それでもやはり、ずっとあっちゃんと一緒だった子供時代が終わるのだと思うと感慨深いものがあった。

この学年から桜泉には私だけが進学する。
上町へも多分、進学する人はあっちゃんだけだったと思う。
過去のしがらみなんか何もない新しい世界。
真っ白なキャンバスにいろんなことを描きたい。
その中にあっちゃんも居てくれるといいな。
あっちゃんも男子校だもん、今まで通りうまくやれるよね?

卒業式のあと、教室で先生から通知表やらゴム印やら記念品を受け取る。
そのあとは恒例の写真撮影会を兼ねた談笑時間だ。

色んな先生のところを回って、写真を撮ったりお礼を言ったり。
あとは後輩たちがやって来て花束やら何やらを色々くれたり。
所々で告白タイムになってたりする。

学ランの第2ボタンを受け渡ししてるところを見かける。
(あっちゃん…。第2ボタン、誰かにあげたりしたのかな?)
急に胸騒ぎがして、あっちゃんを探す。

友達との写真撮影や雑談も程々に、廊下を走り出す。

あっちゃん、どこにいるんだろう?
2組の男子、どこにいるの?

息を切らして体育館の前に着いた。
あっちゃんが他の友達たちと写真を撮っていた。
まだ第2ボタンは無事だ。

あっちゃんが私に気づいて手招きした。
近付いていくとこう言った。

「圭子、写真撮って貰おう。」
「え?私、写真写りよくないし、恥ずかしい。」
「そう言うなよ、中学の制服で写真撮れるの今日が最後やぞ。」

そう言ってカメラを友達に渡すと、私の手を引いて自分の隣に立たせた。
あっちゃんの友達は何枚か写真を取った後、カメラをあっちゃんに渡すと「ごゆっくり」と去っていった。

「あっちゃん、あの…。」
「ん?」
「あのさ…、よかったら、私に…、私に第2ボタン、下さい。」
「ああ、貰ってくれたら嬉しい。その代わりにさ、校章、交換せえへん?」
「校章?」
「女子、第2ボタンないし。ネクタイとか名札もらうのも違う気がするし。校章交換ってちょうど良くない?」
「うん!」

左胸につけている名札から校章を外す。
あっちゃんは詰襟についている校章を外した。
交換してそれぞれ名札に校章を付ける。

「あとこれな。」

学ランの第2ボタンを外して私の手を取り、それを握らせた。

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「ありがとう、あっちゃん。嬉しい、大事にするからね。」

ちっとも涙なんか出てこないと思ってたのに、嬉しくって涙が止まらない。寂しくって涙が止まらない。

「あっちゃん!離れたくないよ!!」

あっちゃんの胸にしがみついた。

「圭子、別に二度と会えへんわけじゃないし、学校違っても、家向かいやんか。」
「そおやけど…。」
「また一緒に勉強したりすればいいし、心配すんな。」
「うん…。」
「ほら、お前の友達が探しに来たぞ。また後で電話するし。」
「うん。」
「じゃあな。」

あっちゃんが私をそっと引き剥がして、頭を撫でた。

なによ、もう。
一人だけ大人になったみたいにかっこつけてさ。
なんか悔しい。でも、そんなあっちゃんが大好きだ。
これは惚れたモン負けだよなぁ。


-続く-

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1.序章
9.受験
11.デート
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