2015/10/12  5:43 | 投稿者: おるん

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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆13.部活◆◇◆

念願の吹奏楽部に入った。
中学から吹奏楽をやりたかったけど、中学には吹奏楽部がなかったから、文字通り念願だった。
先輩後輩が一遍に出来てちょっと混乱しているけれど、同学年の友達もできて、そこそこ楽しい。
私の担当楽器はユーフォニアムという大きな金管楽器になった。
内部生と他校からの外部生は半々くらいだけど、経験者がたくさんいる中、私はズブの素人なのでヘ音記号の譜読みやら楽器の運指やら覚えることは山ほどあって大変だ。

マーチを少し吹いて、何とかチューニングが出来るくらいになったところで、4月29日に関西吹奏楽祭という催し物で初本番だということを聞かされた。

バサバサっと渡された楽譜は『だったん人の踊り』。
何コレ、譜面が黒い!!
あと1週間くらいなんですけど…。

「村井さん、コレ全部吹くのは無理だと思うから、ココとココと…ココは吹いてね。」
「は、はい!」
「間違えても、間違えたって顔せずに、涼しい顔で座ってれば良いから。」
「は、はい!」
「…明日から、朝練と昼練しようか?」
「え!?はい、頑張ります!」

◇◆◇

…明日から朝練。どうしよう、あっちゃん…。

家に着いたのは19時半。
あっちゃんはもうとっくに家に帰っていると思うけど、夕飯時にインターホンを鳴らしたり、電話したりするのに気が引けて、あっちゃんの家の門の前で気付いてくれないかとウロウロしていた。

「こんばんは。」

後から声を掛けられて、飛び上がりそうなくらい驚く。

「!!!…あ、こ、こんばんは。」

振り向くとあっちゃんのお父さんだった。仕事帰りのようだ。

「圭ちゃん、どうしたん?新?」
「え、あ、はいっ!夕飯時にインターホン鳴らすのもなぁって躊躇してました。」
「ははは、女の子がこんな時間に外に居る方が危ないわ。ちょっと待っとき。」

そう言って、あっちゃんのお父さんが家に入り、しばらくしてあっちゃんが出てきた。

「圭子、どうしたん?」
「あ、あの…。あのね、あっちゃん…。」
「ん?」
「クラブで、4月29日に本番があって、それで、明日から朝練しようって先輩が。」
「え!じゃあ、朝は…。」
「ご、ごめん…。朝7時半からやるっていうから、7時位に家出んとあかんねん…。」
「流石に、7時に一緒に出るのは無理やな…。」
「あっちゃん、ごめんな…。とりあえず、その本番終わったら朝連は解消されると思うねんけど、次はコンクールもあるから、またその頃には朝練せなあかんかも。」
「そうか、しゃあないやん。気にするな。平日でも会えるときは会おう。いつもこれくらいの時間に帰ってくるんやろ?」
「うん…。」

あっちゃんは私の頭を優しく撫でた。
周りをキョロキョロを確認した後、私にキスをして言った。

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「おやすみ。あんま、無理すんなよ。」

◇◆◇

圭子にはああ言ったものの、本当は物凄く不服だ。

ただでさえ別々の学校に通っていて会えないのに、朝の通学時間も放課後もクラブにどっぷりでは、顔も合わせる暇もない。
こんな状態で、本当に付き合っているって言えるのか?

こうして折角想いが通じたのに、一緒に過ごす時間が減ればすれ違うことがふえてしまうだろう。
圭子が俺から離れてしまうことを懸念していたけれども、それがこんなに早くにやってくるとは。
いや、まだ圭子が俺から離れるとは限らないし、まだ大丈夫だと思う。
幸い、男子校と女子校に通っているから、浮気の心配はしなくても良さそうだ。

クラブなんか辞めてしまえ。

そう言えたら楽だろうに。


-続く-

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1.序章
12.入学
14.すれ違い
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2015/10/12  5:41 | 投稿者: おるん

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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆12.入学◆◇◆

いよいよ高校生になった。
真新しい制服に身を包みつつも、互いに学ランとセーラー服なのであまり変わり映えもせず、顔を見合わせて笑った。

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入学式の日は親と一緒に登校したので会えなかったけど、翌日からは途中まで一緒に登校するようになった。
私の学校の方が始業時刻が早いので、あっちゃんに合わせてもらっている。

「クラス、ローマ数字とアルファベットやねん。高I-Gやって。
それから、礼拝ってのがあってな、毎日聖書読んで、聖歌歌うねん。
クラブも案外盛んで、私、吹奏楽部に入ろかなって。」
「へぇ…。俺んとこは仏教やからな。あ、でも、聖歌みたいなやつあるで。」
「へぇ!そうなんや!男子校やから、みんな声低いんやろなぁ。」
「…そやな、そっちは女子校か…いい匂いしそう…。」
「いい匂いって!あっちゃん、エッチやわ!」
「あほ!そんなんちゃうわ!」
「あはは。で、あっちゃんはクラブ入るん?友達できた?」
「クラブは多分入らへんわ。勉強する時間減るし。友達はまあまあかな。まだ1週間も経ってないからな。」
「そっか…。そうやんな、まだ1週間経ってないもんな。私も友達はまだやし…。」
「……。」

◇◆◇

毎日、圭子に合わせて家を出るから、少し早めに学校に着く。
その時間に小説を読んだり、チャート式の問題を解いたりする。
今はまだ、クラブや補講もないから、放課後も待ち合わせをして一緒に下校したりする。

圭子は物凄くよく喋る。
女子は大抵そんなものかもしれないが、それでも毎日、下らないことばかり、よく話題が尽きないなと思う。
表情がクルクル変わって、学校での出来事を色々話す。
今はお互いに高校生活が新鮮だからこうして聞いていても、そんなに嫌じゃなくて、むしろ必死に喋る圭子が可愛いと思ったりもするけど。
そのうちに慣れてきたら、圭子はこんなに色々話してくれるだろうか?
俺は毎日、下らない日常の出来事を聞いてやれるだろうか?
それよりもっと怖いのは、会う時間がどんどん短くなること。
桜泉の吹奏楽部。関西の強豪だって聞いた。
入部したら、放課後は会えない。朝や土日もどうなるかわからない。
クラブに入るなって言えたらどれだけ楽だろう?
でも、あれだけ楽しみにしているのを彼氏だからといって止めさせるのもなぁ。

◇◆◇

女子校に入って、クラスメイトとも少し馴染んできて雑談をする。そう、大抵は恋バナだ。
彼氏がいるか?と言う話で、私は一番最後に聞かれた。

「幼馴染みの彼氏がいて、上町高校に行ってるよ。」
「ええ!?村井さん、彼氏おるん?」
「うん、まぁ…。同い年の幼馴染みやし、腐れ縁みたいなものかもしれんけど…。」

露骨に意外な顔をされて、ちょっとムカつく。
どうせ私は美人じゃないですよ。
でも女は顔じゃないからねー!
見てくればかりで寄ってくるような男なんかろくでもないんだからね!

「で、で、どんな感じなん?写真は?」
「え?ふ、普通やって。写真…こ、これ…。」
「きゃー!!可愛い!優しそうな彼氏やなぁ!」
「ありがと…。」
「で、もうキスとかエッチとかしたん?」
「エッチ!?そんなんまだやって!キスはしたけど…。」
「いいなぁ、彼氏!!今度紹介してよ!彼氏に友達連れてきてもらって!」
「一応言うとくけど、期待せんといてなー。彼、そういうの多分嫌がるから。」

あっちゃんが嫌がるのもあるけど、私が嫌だ。
私より可愛い子ばかりなのに、あっちゃんが心変わりしちゃったら、そんなの耐えられない。
私はあっちゃんとずっと一緒にいて、結婚して、子供も産んで、死ぬまで一緒がいい。


-続く-

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1.序章
11.デート
13.部活
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