2015/10/12 5:51 | 投稿者: おるん
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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆15.期末テスト◆◇◆
お互いにそれぞれの学校で夢中になれるものを見つけ、離れていることに慣れてきた。
春の頃のように会えなくてもそわそわしたり不安になることは少なくなってきた。
「なぁ、あっちゃん、もうすぐ期末テストやからクラブ休みになるねん。一緒に勉強しにいかへん?」
「あー、そうやな。テストいつから?」
「7月1日からやねん。だから24日からクラブ休みやわ。」
「俺んとこも一緒や。24日から夕陽行く?」
「うん。」
「じゃあ、その日、放課後桃谷駅な。」
「うん、また明日。」
そう言って、桃谷駅の改札で別れる。
しばらく歩くと誰かが私の肩を叩いた。
「村ちゃん、おはよう!」
「あぁ、ナッコ!おはよう。」
「さっきの人、彼氏?」
「うん。」
「朝からラブラブやな。」
「んー、朝しか会えへんからね。」
「なぁ、友達紹介してもらう話、した?」
「え、あ、いや、そういうの興味ないって。」
「えー!彼は興味ないかも知れんけど、彼の友達は興味あると思うで!」
「そうやなー…。まぁ、ナッコのこと誰かに紹介したいって言うとくわ…。」
「頼んだでー!!」
ナッコは私の背中を叩いて、先に走っていってしまった。
◇◆◇
今日からクラブが休み!
明るい時間にあっちゃんに会えるのは嬉しい。
「圭子、遅い!」
「あっちゃん、ごめん!当番でさ。」
二人で並んで歩く。
夕陽ヶ丘までは20分弱。
久々にまとまった時間、一緒に歩けて凄く嬉しい。
「ったく、俺、めっさ大回りやねんぞ、桃谷と夕陽ヶ丘、逆方向なんやから。」
「うん。ありがとう。あっちゃんと一緒に歩けてめっちゃ嬉しい!」

学生があまり居ない道で手を繋いで歩いてみる。
ちょっとドキドキして、照れくさい。
夕陽ヶ丘図書館の近くまで来て、桜泉の生徒が居ることに気が付く。
一緒に居る男子は上町の生徒だ。
「あっ!!」
「村ちゃん!?」
桜泉はナッコだ。
「あっ!?」
「津川!?」
上町はあっちゃんの友達らしい。
「津川の彼女?初めまして、俺、佐々木健司。よろしく。」
「あ、はい。村井圭子です。よろしく…。
あっちゃん、こっちは私のクラスメイトで、原口奈津子さん。」
「津川新です。よろしく。」
「こちらこそ。」
簡単な自己紹介の後、あっちゃんが声を上げる。
「佐々木、お前も彼女居るんやんけ!」
「ちゃうって、原口は彼女じゃなくて、同じ中学の同級生。腐れ縁や!」
「大体、俺から紹介とかいらんやん。その子から紹介してもらえよ。」
「こいつに借り作ったら後が大変なんやって、わかるやろ?」
「知るか!じゃあな。圭子、行こう。」
「え、うん。」
そう言って、彼らを置き去りに、図書館に入ったものの、結局自習室では同じテーブルになった。
ナッコがうるさくて、私もあっちゃんも勉強に集中できない。
(いちいち、人の彼氏に絡むなよ…。)
あっちゃんは、なんだかんだ質問してくるナッコに辟易した顔をしつつも、丁寧に答えている。
私の顔を立ててくれているのかもしれない。
「圭子ちゃん、津川っていつもどんなん?」
「へ?」
初対面で『圭子ちゃん』とか馴れ馴れしく呼ばれて気持ち悪い。
いくらあっちゃんの友達でも嫌だな…。
「…いつも?いつもこんな感じやけど…。」
「ふぅん。」
「あの、名前で呼ばれなれへんから苗字で呼んでもらえへんかな。
それと、私、問題解きたいからそっとしておいてくれます?」
「圭子ちゃん、真面目なんやな。」
(だから名前で呼ぶなって…。名前で呼ぶの、親とあっちゃんだけやのに。)
そのまま佐々木君は無視して、ガンガン数学の問題を解く。
ホントは、あっちゃんと一緒に問題解きたかったのに…。
ナッコもあっちゃんに質問いっぱいしてるから、更に話しかけたらあっちゃんが勉強できないし。
2時間ほど勉強して帰宅することにした。
「圭子、そろそろ帰ろか?」
「うん。ナッコ、また明日。」
「バイバーイ。」
「佐々木、じゃあな。」
「おう、また明日。」
帰り道、仏頂面の私にあっちゃんが声を掛ける。
「自分の友達、うるさかったな。お前よりうるさいヤツ、初めて見たかも。」
「…。」
「もしかして、ヤキモチ妬いてる?」
「あほ………ちょっと妬いてる。」
「ごめんな。無視するのも悪いしなーと思って。」
「わかってるけど、私もあっちゃんに質問したりとかして一緒に問題解きたかったのに…。お陰でめっちゃはかどったけど。」
「俺はちっともはかどらずやわ。…圭子、名前で呼ばれるのん嫌なん?」
「ううん。なんで?」
「ほら、さっき、佐々木に。」
「だって、名前で呼ぶの、家族以外ではあっちゃんだけやのに。
大体、初対面で名前とか馴れ慣れしいわ!」
あっちゃんが私の髪をくしゃくしゃと混ぜる。
「…お前のコト、名前で呼ぶんは俺だけやからな。」
照れてる、かわいい。
久々に照れてるあっちゃんを見て、キュンと来た。
「あ、あほ!あんまジロジロ見んなって!」
◇◆◇
とうとう夏休み。
期末テストの成績はイマイチ振るわなかったけど、吹奏楽のシーズン。
あっちゃんと遊ぶ日は少なくなるだろうけど、夏休みは最終週までコンクールに出たい。
目指せ普門館!!
-続く-
---
1.序章
14.すれ違い
16.夏祭り
0
#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆15.期末テスト◆◇◆
お互いにそれぞれの学校で夢中になれるものを見つけ、離れていることに慣れてきた。
春の頃のように会えなくてもそわそわしたり不安になることは少なくなってきた。
「なぁ、あっちゃん、もうすぐ期末テストやからクラブ休みになるねん。一緒に勉強しにいかへん?」
「あー、そうやな。テストいつから?」
「7月1日からやねん。だから24日からクラブ休みやわ。」
「俺んとこも一緒や。24日から夕陽行く?」
「うん。」
「じゃあ、その日、放課後桃谷駅な。」
「うん、また明日。」
そう言って、桃谷駅の改札で別れる。
しばらく歩くと誰かが私の肩を叩いた。
「村ちゃん、おはよう!」
「あぁ、ナッコ!おはよう。」
「さっきの人、彼氏?」
「うん。」
「朝からラブラブやな。」
「んー、朝しか会えへんからね。」
「なぁ、友達紹介してもらう話、した?」
「え、あ、いや、そういうの興味ないって。」
「えー!彼は興味ないかも知れんけど、彼の友達は興味あると思うで!」
「そうやなー…。まぁ、ナッコのこと誰かに紹介したいって言うとくわ…。」
「頼んだでー!!」
ナッコは私の背中を叩いて、先に走っていってしまった。
◇◆◇
今日からクラブが休み!
明るい時間にあっちゃんに会えるのは嬉しい。
「圭子、遅い!」
「あっちゃん、ごめん!当番でさ。」
二人で並んで歩く。
夕陽ヶ丘までは20分弱。
久々にまとまった時間、一緒に歩けて凄く嬉しい。
「ったく、俺、めっさ大回りやねんぞ、桃谷と夕陽ヶ丘、逆方向なんやから。」
「うん。ありがとう。あっちゃんと一緒に歩けてめっちゃ嬉しい!」

学生があまり居ない道で手を繋いで歩いてみる。
ちょっとドキドキして、照れくさい。
夕陽ヶ丘図書館の近くまで来て、桜泉の生徒が居ることに気が付く。
一緒に居る男子は上町の生徒だ。
「あっ!!」
「村ちゃん!?」
桜泉はナッコだ。
「あっ!?」
「津川!?」
上町はあっちゃんの友達らしい。
「津川の彼女?初めまして、俺、佐々木健司。よろしく。」
「あ、はい。村井圭子です。よろしく…。
あっちゃん、こっちは私のクラスメイトで、原口奈津子さん。」
「津川新です。よろしく。」
「こちらこそ。」
簡単な自己紹介の後、あっちゃんが声を上げる。
「佐々木、お前も彼女居るんやんけ!」
「ちゃうって、原口は彼女じゃなくて、同じ中学の同級生。腐れ縁や!」
「大体、俺から紹介とかいらんやん。その子から紹介してもらえよ。」
「こいつに借り作ったら後が大変なんやって、わかるやろ?」
「知るか!じゃあな。圭子、行こう。」
「え、うん。」
そう言って、彼らを置き去りに、図書館に入ったものの、結局自習室では同じテーブルになった。
ナッコがうるさくて、私もあっちゃんも勉強に集中できない。
(いちいち、人の彼氏に絡むなよ…。)
あっちゃんは、なんだかんだ質問してくるナッコに辟易した顔をしつつも、丁寧に答えている。
私の顔を立ててくれているのかもしれない。
「圭子ちゃん、津川っていつもどんなん?」
「へ?」
初対面で『圭子ちゃん』とか馴れ馴れしく呼ばれて気持ち悪い。
いくらあっちゃんの友達でも嫌だな…。
「…いつも?いつもこんな感じやけど…。」
「ふぅん。」
「あの、名前で呼ばれなれへんから苗字で呼んでもらえへんかな。
それと、私、問題解きたいからそっとしておいてくれます?」
「圭子ちゃん、真面目なんやな。」
(だから名前で呼ぶなって…。名前で呼ぶの、親とあっちゃんだけやのに。)
そのまま佐々木君は無視して、ガンガン数学の問題を解く。
ホントは、あっちゃんと一緒に問題解きたかったのに…。
ナッコもあっちゃんに質問いっぱいしてるから、更に話しかけたらあっちゃんが勉強できないし。
2時間ほど勉強して帰宅することにした。
「圭子、そろそろ帰ろか?」
「うん。ナッコ、また明日。」
「バイバーイ。」
「佐々木、じゃあな。」
「おう、また明日。」
帰り道、仏頂面の私にあっちゃんが声を掛ける。
「自分の友達、うるさかったな。お前よりうるさいヤツ、初めて見たかも。」
「…。」
「もしかして、ヤキモチ妬いてる?」
「あほ………ちょっと妬いてる。」
「ごめんな。無視するのも悪いしなーと思って。」
「わかってるけど、私もあっちゃんに質問したりとかして一緒に問題解きたかったのに…。お陰でめっちゃはかどったけど。」
「俺はちっともはかどらずやわ。…圭子、名前で呼ばれるのん嫌なん?」
「ううん。なんで?」
「ほら、さっき、佐々木に。」
「だって、名前で呼ぶの、家族以外ではあっちゃんだけやのに。
大体、初対面で名前とか馴れ慣れしいわ!」
あっちゃんが私の髪をくしゃくしゃと混ぜる。
「…お前のコト、名前で呼ぶんは俺だけやからな。」
照れてる、かわいい。
久々に照れてるあっちゃんを見て、キュンと来た。
「あ、あほ!あんまジロジロ見んなって!」
◇◆◇
とうとう夏休み。
期末テストの成績はイマイチ振るわなかったけど、吹奏楽のシーズン。
あっちゃんと遊ぶ日は少なくなるだろうけど、夏休みは最終週までコンクールに出たい。
目指せ普門館!!
-続く-
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1.序章
14.すれ違い
16.夏祭り

2015/10/12 5:49 | 投稿者: おるん
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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆14.すれ違い◆◇◆
あれから圭子とはなかなか会えない。
会えてもクタクタになって帰ってくる圭子と一言二言言葉を交わすのが精一杯。
グッタリしている圭子を見るのも辛いというか。
会えなくて募る想いを紛らわせるために、学校行事運営の有志を買って出た。
高校では勉強だけすればいいと思っていて、特別仲の良い友達を作ったり、こういった行事への積極的な参加をする気はなかったのだけれども。
クラスメイトと一緒に作業しているうちに、打ち解けてきて、高校生活も結構楽しくなってきた。
「津川、お前、彼女とか居ったりする?」
「え?あぁ…、まぁ、そうやな。」
「居るん!?」
「…一応。彼女っつっても、幼馴染やし、彼女も忙しくてほとんど会ってへんねんけど。」
「そうなんや!どんな子?かわいい?」
「え…、いや、一般的には不細工の部類に入ると思うけど…、こう、なんかほっとけへんっていうか。」
「へぇー!おまえ、なかなかやるな!」
「……。」
「どこの学校の子?」
「…桜泉。」
「おおおー!ご近所さん!じゃあ彼女、真面目なお嬢さんなんやな!」
「…お嬢さんではないと思うけどな。そんなに真面目でもないと思うけど。」
「今度、彼女に友達紹介してもらってや!」
「…まぁ、一応聞いとくけど…。」
◇◆◇
ある日、行事の準備で天王寺まで買出しに行くことになった。
桃谷駅のホームに上がると、向かいのホームに桜泉の生徒がたくさん居た。
放課後だから当然といえば当然。
部活に行っていて、ここには居ないであろう圭子を、思わず探してしまう。
楽器と思しきケースを持った桜泉の生徒がちらほら居る。
(吹奏楽部か?)
ほぼ桜泉の生徒しか居ない中に、明清の男子生徒も混じっている。
そいつらの中にも楽器と思しきケースを持っているヤツがいるが、明清は玉造のはずだ。
「あっ!」
「どうした?津川?」
「い、いや、なんでもない。」
向かい側のホームに背を向けて、電車が来るのを待つ。
圭子が居た!
明清の男子生徒と一緒に並んで、なにやら笑顔で話していた。
男の方は荷物をほとんど持っていないようで、圭子の楽器ケースを持ってやろうとしているようだ。
吹奏楽部の合同練習か何かなんだろうけど、男子校のヤツらと一緒に練習をするなんて話は聞いてなかった。

部活なんだから仕方がないけど!
中学の時は男友達も居なくて、最初は俺と話すだけでも顔を真っ赤にしてうつむいて、まともに話も出来なかったのに。
最近は、家の前で会っても疲れていて、微笑む表情にも力がなかったりするのに。
(なんだよ、ちゃんと笑ってるやん。他の男とならそんな顔すんのかよ。)
普通に考えたら愛想笑いなんだろうけど、無性に腹が立つ。
あれだけたくさん人が居るところだったし、部活の移動っぽかったから、浮気ではないだろう。
それでも、俺の知らない圭子がいると思うと、浮気されたみたいでショックだ。
「津川、もしかして、向こう側に彼女居るん?」
「っ!!…居らんよ。」
「いやー、怪しいなぁ。なぁ、どの子?」
「あほ!俺は時刻表見たかっただけや!…もし居ったとしても教えへんわ!」
◇◆◇
(…今日もクラブ、疲れたなぁ…。)
薄暗い路地をトボトボ歩く。
あっちゃん、今日も会えるかな?
いつも家の前で待ってくれてるから悪いなって思うけど、やっぱり凄く嬉しい。
たまにはクラブが休みになったらいいのに。
そしたらもっと長い時間あっちゃんと一緒に居れるのに。
家の前に着いたけど、あっちゃんは居なかった。
(あれ?いつもの時間よりちょっと早いからかな?)
もう少し待ってみるか、とあっちゃんの家の門の脇にある電柱にもたれて街灯の灯りで単語帳なんかを眺めてみる。
しばらく待っても出てこない。
あっちゃん、もう晩御飯の時間なのかなぁ。
今日、明清で練習したこと話そうと思ったのに。
男子校って初めて入ったから新鮮やったけど、上町も似たような感じなのか聞いてみようと思ったのに。
「…あっちゃん、おやすみ。」
そう呟いて家に帰った。
-続く-
---
1.序章
13.部活
15.期末テスト
0
#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆14.すれ違い◆◇◆
あれから圭子とはなかなか会えない。
会えてもクタクタになって帰ってくる圭子と一言二言言葉を交わすのが精一杯。
グッタリしている圭子を見るのも辛いというか。
会えなくて募る想いを紛らわせるために、学校行事運営の有志を買って出た。
高校では勉強だけすればいいと思っていて、特別仲の良い友達を作ったり、こういった行事への積極的な参加をする気はなかったのだけれども。
クラスメイトと一緒に作業しているうちに、打ち解けてきて、高校生活も結構楽しくなってきた。
「津川、お前、彼女とか居ったりする?」
「え?あぁ…、まぁ、そうやな。」
「居るん!?」
「…一応。彼女っつっても、幼馴染やし、彼女も忙しくてほとんど会ってへんねんけど。」
「そうなんや!どんな子?かわいい?」
「え…、いや、一般的には不細工の部類に入ると思うけど…、こう、なんかほっとけへんっていうか。」
「へぇー!おまえ、なかなかやるな!」
「……。」
「どこの学校の子?」
「…桜泉。」
「おおおー!ご近所さん!じゃあ彼女、真面目なお嬢さんなんやな!」
「…お嬢さんではないと思うけどな。そんなに真面目でもないと思うけど。」
「今度、彼女に友達紹介してもらってや!」
「…まぁ、一応聞いとくけど…。」
◇◆◇
ある日、行事の準備で天王寺まで買出しに行くことになった。
桃谷駅のホームに上がると、向かいのホームに桜泉の生徒がたくさん居た。
放課後だから当然といえば当然。
部活に行っていて、ここには居ないであろう圭子を、思わず探してしまう。
楽器と思しきケースを持った桜泉の生徒がちらほら居る。
(吹奏楽部か?)
ほぼ桜泉の生徒しか居ない中に、明清の男子生徒も混じっている。
そいつらの中にも楽器と思しきケースを持っているヤツがいるが、明清は玉造のはずだ。
「あっ!」
「どうした?津川?」
「い、いや、なんでもない。」
向かい側のホームに背を向けて、電車が来るのを待つ。
圭子が居た!
明清の男子生徒と一緒に並んで、なにやら笑顔で話していた。
男の方は荷物をほとんど持っていないようで、圭子の楽器ケースを持ってやろうとしているようだ。
吹奏楽部の合同練習か何かなんだろうけど、男子校のヤツらと一緒に練習をするなんて話は聞いてなかった。

部活なんだから仕方がないけど!
中学の時は男友達も居なくて、最初は俺と話すだけでも顔を真っ赤にしてうつむいて、まともに話も出来なかったのに。
最近は、家の前で会っても疲れていて、微笑む表情にも力がなかったりするのに。
(なんだよ、ちゃんと笑ってるやん。他の男とならそんな顔すんのかよ。)
普通に考えたら愛想笑いなんだろうけど、無性に腹が立つ。
あれだけたくさん人が居るところだったし、部活の移動っぽかったから、浮気ではないだろう。
それでも、俺の知らない圭子がいると思うと、浮気されたみたいでショックだ。
「津川、もしかして、向こう側に彼女居るん?」
「っ!!…居らんよ。」
「いやー、怪しいなぁ。なぁ、どの子?」
「あほ!俺は時刻表見たかっただけや!…もし居ったとしても教えへんわ!」
◇◆◇
(…今日もクラブ、疲れたなぁ…。)
薄暗い路地をトボトボ歩く。
あっちゃん、今日も会えるかな?
いつも家の前で待ってくれてるから悪いなって思うけど、やっぱり凄く嬉しい。
たまにはクラブが休みになったらいいのに。
そしたらもっと長い時間あっちゃんと一緒に居れるのに。
家の前に着いたけど、あっちゃんは居なかった。
(あれ?いつもの時間よりちょっと早いからかな?)
もう少し待ってみるか、とあっちゃんの家の門の脇にある電柱にもたれて街灯の灯りで単語帳なんかを眺めてみる。
しばらく待っても出てこない。
あっちゃん、もう晩御飯の時間なのかなぁ。
今日、明清で練習したこと話そうと思ったのに。
男子校って初めて入ったから新鮮やったけど、上町も似たような感じなのか聞いてみようと思ったのに。
「…あっちゃん、おやすみ。」
そう呟いて家に帰った。
-続く-
---
1.序章
13.部活
15.期末テスト
