2015/8/9  22:54 | 投稿者: おるん

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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆1.序章◆◇◆

『あっちゃん。』
『オレ、ワガママなヤツは嫌いやし、もう遊ばへん。』
『………。』

それ以来疎遠になった幼馴染み。
家は向かい同士だけど、クラスは幼稚園からずっと、一緒になったことがない。



「ははは!」

彼の笑い声が聞こえる。特徴があるからなのか、好きな人の声だからか、すぐにわかっちゃう。
顔をあげると、廊下を向こうから歩いてくるあっちゃんがいた。

(はわわっ!どこか隠れるところ!!…って、ないよー!!)

走って逃げるわけにもいかず、俯いて、顔を背けながらすれ違う。

「きしょっ…」

すれ違いざま、あっちゃんが私に向かって小さな声で囁いた。

(わー!サイアクっ!あっちゃん、私のこと嫌いやし、仕方ないけど、ちょっと悲しくなるわ。)

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あっちゃん。
津川新(あらた)。14歳。中学3年生。
向かいに住む同い年の幼馴染み。
私の好きな人。

私。
村井圭子。14歳。中学3年生。
何の取り柄もなくて、普通の中学生。
あっちゃんとは幼稚園からずっと一緒のところなのに、同じクラスにはなったことがない。

子供の頃は一緒によく遊んだのに。
私の方がほんの少し早く大人になって、彼を異性として意識するようになった。
お互いにギクシャクするようになって、だんだん遊ばなくなっていった。

それでも、彼は私の好意をそれなりに受け入れてくれていたと思っていたのだけど、
彼も大人になって、それが苦しくなったのか、ある日絶交を言い渡された。

あの時、好きって言わなかったら、今もただの幼馴染みで居れたんだろうか…。


-続く-

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1.序章
2.接近
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2015/8/9  22:47 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
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◇◆◇キラキラしたもの

夏の暑い日、君が校庭を駆け抜ける。
私はそんな君の姿を目で追いかけるけど、キラキラ眩しくって見つめられない。

君が、私のそばにいてくれたらいいのに。
君が、私だけに微笑みかけてくれたらいいのに。
君が、私だけにこっそり弱音を吐いてくれたらいいのに。
ずっと前からそう思ってるけど、そんなこと言えなくて。

現実では、君は私ではない誰かのそばにいて、
君は私ではない誰かにだけ微笑みかけて、
君は私ではない誰かにだけ弱音を吐いてるんだろう。

私は君の隣には不釣り合いで。
こんなに好きなのに、彼には振り向いてもらえず。
神様って不公平だ。

君の姿を目で追いかけてたら、涙が溢れそうになった。
こっそり見てるしかできないの。
見てるだけじゃどうしようもないけど、見てるしかできない。
好きって言いたい。

◆◇◆

今日も暑いな。
そう思いながら、校庭を走る。
乾いた砂が舞い上がって、暑い空気と一緒に肺に入って息苦しい。

この時間になるといつも、校舎の窓からの視線を感じる。
薄汚れた校舎の壁も、太陽の光を反射してキラキラ眩しく見える。
いや、君がそこにいるからかもしれない。

君は、一体誰を見つめているのだろう。
その熱っぽい視線の先が俺だったらいいのに。
その微笑みの相手が俺だったらいいのに。

君は、俺が見つめ返すと目を逸らす。
君は、俺が微笑みかけると泣きそうな顔をする。
君は、俺が話しかけようとすると逃げてしまう。

きっと俺は嫌われているんだろうな。
君に好かれている男が羨ましい。
神様は不公平だ。

俺は君に嫌われたくないから、君の横顔しか見つめられない。
本当は君の顔を正面から見たいのに。
それすらできなくて辛い。
好きだって言いたい。

◆◇◆

突然の夕立、傘を持っていなくて昇降口で立ち尽くす。
こんなとき、君が私に声をかけてくれたりしないかしら?
そんな都合のいい妄想をしても、君は私の事なんて気にも留めないんだろう。

気配を感じて振り向くと、廊下の向こうに君が居た。
君が何か言いたそうにしたけど、怖くて逃げてしまった。

君は私から目を逸らし、そのまま傘を差して校門から出ていった。
他の人たちもどんどん下校していって、私一人が取り残された。

◆◇◆

君が傘を持っていなくて困っていそうだった。
俺のでよければ傘を貸したのに。
俺は余程嫌われているんだな。

傘を差してトボトボ歩く。
小さい傘でも、君と一緒に歩けたらよかったのに、
なんて妄想をしてみる。
君は小さいから、並ぶと俺の肩くらいだろうか。

どんどん雨足が強くなるので、君のことが心配になった。
ちゃんと彼氏が来て、傘に入れてもらえたんだろうか?
踵を返し、来た道を戻る。

「おい!」

豪雨の中、ずぶ濡れの君がトボトボ、こちらに向かって歩いてくる。
傘を持って君に駆け寄る。

「あ…。」
「なにやってんだよ!ずぶ濡れじゃないか!」
「……。」

俯いた君が微かに震える。
しまった、泣かせてしまった。
これでは益々嫌われてしまう。

傘に入れと肩を抱き寄せたくても、君が壊れそうでできない。
濡れた夏服に透けた下着の線が目に毒で、ドキドキする。
濡れた鞄からスポーツタオルを取り出して、君の肩に掛けた。

「ちょっと湿ってて汗臭いかもしれないけど、無いよりマシだろ!」

そのまま俺の傘も君に握らせて、俺は君から走って逃げた。

◆◇◆

君が私にタオルと傘を貸してくれた。
優しくて余計に泣けてくる。
彼女だけじゃなくて、こんな私にも優しくて。

タオルと傘をどうやって返そうか、途方に暮れる。
君の匂いがするタオルを肩に掛けたまま、君の後を追う。
まだ雨が降っているのに、傘も差さずに走っていった。
君が嫌じゃなかったら、相合傘が良かったのに。

そう思ったのも束の間、夕立が止んで、空が明るくなった。
雨が空気の汚れを洗い流して、清々しい。

君の家の前までたどり着いた。
ずぶ濡れの君が空を見上げている。

「あ、あの、傘、ありがとう。」
「虹…。」
「え?」

君が見上げる先を見る。
大きな虹が出ていた。

「キラキラだな。」
「うん。キラキラだね。」
「君も。」
「…私より、そっちの方が眩しくて。」

二人で虹を眺めながら、無言になる。

「……」

声にならない二文字が君の耳に届いたか。

-終-
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