2013/2/10  3:21 | 投稿者: おるん

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◇◆◇2013年2月薫【仮校舎公式イベ】俺の弱味

今日はバレンタインデー。
世の中の男子が一番ソワソワする日だと言っても過言ではないはずだ。
かくいう俺も若干ソワソワしている。

毎年、家族と生徒会の女子役員から義理チョコを貰う。
今年の生徒会の女子はどちらかと言えば食い気のようだから、貰えないのではなかろうか。
あとは、生徒会長の有名税というヤツか、女子生徒が幾人かやってきたりするが、受け取らないようにしている。

…本命チョコ、ちゃんと貰えるだろうか?
昨日の下校時も今朝も彼女はチョコの話をしなかった。
彼女だと思っているのだが、もしかして違うのだろうか?

そんなことを考えているうちに放課後になった。
生徒会室に向かう廊下。毎年なら人だかりができる国語準備室の前が閑散としている。
綾川先生が休んでいるせいか。

生徒会の作業をし終わっても彼女が来ない。
がっかりしながら、荷物をまとめ、生徒会室を出ようとしたところに彼女がやってきた。

「薫くん!遅くなってごめんね!!」
「…いや、別に君を待っていたわけではない。」
「あの、これ…。バレンタインデーだから…。」
「他にも配ってきたのか?」
「え?違うよ!今年は薫くんだけに用意したし、薫くんのためだけに作った本命だからね!!」
「!!! そ、そうか、すまない…。ありがとう。大事に食べさせてもらう。」
「頑張って作ったんだからね。美味しいかどうかわかんないけど、不味くはないと思うから!」
「そうか。もし君も帰るのなら一緒に…」
「あ!ごめん!友達がチョコ渡せなくて、ちょっと付き合ってくるの。ごめんね!また電話するから!」

そういって、彼女は廊下を走って去っていった。
俺の手に、彼女からの赤い包みが残った。

本命チョコが貰えたのだから本望なはずなのに気持ちが少し沈む。
昇降口までやってきて、彼女のチョコを手に持ったままだったことに気が付く。

(鞄にしまわなくては…)

そう思って立ち止まったところに鈍い衝撃が走った。
足元に色とりどりのチョコレートと思しき包みが散乱する。

「うわ!!会長!ごめん!!」

声の方に視線を向けると、そこに相葉がいた。
どうやら、このたくさんのチョコは相葉がファンから貰ったものらしく、一生懸命拾い集めて紙袋に詰め込んでいる。
向こうから走ってきた相葉と衝突し、彼が持っていた紙袋や鞄からチョコがばらまかれたということらしい。

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「いや、こちらこそすまない。前を見ていなかった。」

はたと自分の手元を見て焦る。彼女から貰ったチョコがない!
足元には散らばったチョコをかき集める相葉。

(あっ!)

相葉の手が赤いチョコの包みをとらえようとした時、それを隙からかすめ取った。

良かった。チョコをなくしたなどと、彼女に言えるわけがないからな。
安堵した俺を尻目に相葉は残りを全て拾い終わり、じゃあね!と去っていった。

◇◆◇

夕食後、そそくさと自室に上がり、彼女のチョコの包みを取り出した。
小ぶりの直方体の箱が赤い包装紙で包まれていて、ピンクのリボンと白いハートのシール。
慎重に包みを開けると、そこにはハート型のチョコケーキがあり、メッセージが添えられていた。

『駿くんへ
 いつも一緒にいてくれてありがとう
 バスケしてる駿くんが大好きだよ!
 これからもずっと仲良くしてね』

「な!な!な、なんだこれ!?」

思わず叫んだ。
驚きすぎて卒倒しそうになった。

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俺だけに渡したんじゃなかったのか?
本命だって言っていたじゃないか!
君と俺は付き合っているんだと思っていたのに。
俺は騙されていたのか!?
そもそも、俺が勝手に勘違いしているだけなのか!?

彼女に電話をしようと携帯を手に持った。
が、なんと切り出せば良いのか分からず、そのまま机に突っ伏して悶々とする。

(…『相葉とも付き合っているのか?』って聞くのもなぁ…。
『俺のチョコはどこだ?』って言うのもおかしいだろう…。
『俺に隠していることはないか?』…よし、これでいこう!
…いや待て、本当にこれで良いのか?)

うーんと唸って考え込むと同時に携帯がうーんと唸った。
彼女からの着信だ。戸惑いながらもとりあえず出る。

「はい。」
「あ、薫くん?ブラウニー食べてくれた?初挑戦だったんだー。くるみも入れたんだよ!」
「え、ああ、まだ開けてないんだ…。」

くるみ入り?プレーンなガトーショコラだと思ったんだが…。

「そうなの?感想聞きたかったのにー。ラッピングも可愛いでしょ?」
「赤い包装紙にピンクのリボンだな。」
「うん、白薔薇の造花が可愛いでしょ?苦労したんだよー。」
「白薔薇の…?」

ハートのシールが貼ってあるが…白薔薇を何処かに落としてきてしまったんだろうか?

「シールが貼ってあるが…。」
「シール?そんなの貼ったかなぁ??」
「君は俺以外にもチョコを渡さなかったか?」
「え?今年は薫くんだけだって言ったでしょ?」
「…それが、今手元にあるチョコなんだが、相葉宛のメッセージカードが入っていてだな…。」
「え?なにそれ??」

彼女が驚いた声を上げる。嘘はついていないようだ。
では、どうしてこんなことになったのか…。
チョコを貰ってから廊下を歩いて昇降口に…。

「………あっ!!!」
「ど、どうしたの?」
「いや…、それが、どうやら君のチョコと誰かのチョコを取り違えたらしい。」
「ええー!?どういうこと!?」
「あれから昇降口の前で相葉とぶつかってだな、お互い持っていたものを廊下にぶちまけてしまって。」
「相葉くんか…、たくさんチョコ持ってたね。」
「すまない、拾うときによく似たラッピングの他のチョコと取り違えてしまったようだ。」

本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。彼女を疑うなんて。
自分にガッカリして溜息をついたところで彼女がくすっと笑う。

「薫くんでもそんなことがあるんだね。」
「まぁ、…俺も弱味があるからな。」
「え?なになに??」
「ば、バカ!そんなこと言えるか!」
「えー?チョコ取り違えたくせにー!!」

うぅ。そう言われると反論できない。

「…君だ。君と一緒に下校できなくて考え事をしていたものだから…」

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電話口でぼそぼそ呟くと彼女が声を上げて笑った。

「ふふっ。ふふふっ。薫くん、かわいいね!しばらくこれでからかおっと!」
「や、やめたまえ!!」

彼女が悪巧みする顔が目に浮かぶ。
恥ずかしくて顔が熱くなる。

「…私のブラウニー、相葉くんに食べられちゃったかなぁ…。残念。」
「…まぁ、また時間があるときに食べさせてくれれば。」
「うん。ブラウニーはまた今度作るね。」
「うん。楽しみにしている。」
「じゃあね、また明日。おやすみ。」
「おやすみ。」

電話を切って安堵する。
それにしても、彼女のはじめてのブラウニーはどんな味だったんだろう?
食べてみたかったような、食べずにすんで良かったような。

-終-
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2013/2/10  3:18 | 投稿者: おるん

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◇◆◇2012年7月薫【仮校舎公式イベ】世界征服

時折吹き抜ける風に七夕の短冊が飾られた笹の葉がなびく渡り廊下。
さらさらと笹の葉の音が鳴る。

「今年も七夕は終わりか…。ぼちぼち片付けないとな…。」
笹に掛けられた短冊を一枚手にとって読んでみる。


『世界征服』


「ぶはっ!!こ、コホン。」
なんだコレ!?
まぁ、ここにそんな切実な願い事を書くヤツはいないか。
それにしても、予想していなかっただけに驚いたな。
…気を取り直して、もう一枚見てみるか…。


『百人一首かるた大会開催』
…綾川先生?

『ダンクシュートを決める』
…これは相葉だな。

『メジャーデビュー!!』
…綾川竜士か。


「…ふむ。世界征服が一番インパクトがあったな。」
「でしょ!?」
「うわっ!!!」

背後に突然人が現れて驚く。
やたらと俺に寄ってくるアイツだ。
いつも唐突に現れるので危険だ。
注意してやろうと、彼女のほうへ向き直る。

「君っていうヤツは…!な、な、なんだその格好!!!」
「??何って、水着だけど?」

俺の胸元に立って下から俺を見上げる。
あまり大きいとはいえない胸とはいえ、女子な訳で、谷間が見える…。

「くっ!なぜ水着なのかと聞いている!」
「え?明日プール開きでしょ?みんなで掃除してるのよ。」
「………」

普通、体操服でやるだろう…。
水着姿で校内を走り回るなど考えられない。
説教しようかとも思ったが、そんな気力も無い。

「そうか。頑張りたまえ。」

彼女に背を向け、その場から立ち去ろうとした。

「ちょっと待ったぁ!ほら、草間君も一緒に掃除してよね!」
そう言って彼女が俺の腕を掴む。

「こ、こら!離したまえ!俺はやることがあるんだ!」
「えー!生徒会でしょー?困っている生徒を助けてくれるんでしょー??」
「それはそうだが、俺は他にもやることがあってだな…」
「えーーー!人手が足りないんだってばー!」
「ああ!もう!仕方がないな!手伝えばいいんだろう?
着替えてくるから先にプールへ行っていろ!」

七夕の笹を片付けるのを綾川先生に相談して、人手を集めてもらおうと思っていたのに。
七夕の笹は本来、川に流すものらしいが、流石にこのご時世ではそういうこともできない。
笹の枝葉と短冊飾りを焼却炉で焼くのだ。
プール掃除が終わってからだと、生徒はほとんど下校しているだろうな。
今年は一人で後始末か。アイツのせいで帰るのが遅くなりそうだ。

そんなことをブツブツ考えながら、生徒会室で体操服に着替え、プールサイドへ急ぐ。

プールに近づくにつれ、キャアキャアと騒ぐ声が聞こえてくる。
プールサイドに出てみると、アイツが走り回っていた。
数人は真面目に掃除をしているようだったが、水をかけられたのか、頭から体操服からずぶ濡れになっていた。

「あっ!会長ー!アイツをなんとかしてくれよー。
ふざけてばかりで邪魔なんだよ。」

ずぶ濡れの男子が一人こちらにやってきて言った。
…何が『人手が足りない』だ。
邪魔して足を引っ張っているのか、アイツは。

「草間君!来てくれたんだ!ありがとう!はい、デッキブラシ!」

当の本人は全く悪びれもなく、デッキブラシを持って走ってきた。
俺はそのデッキブラシを受け取り、早速プールの中に下りる。

「お前も掃除しろ!」

と彼女に呼び掛けたら、ハーイという声と共にバシャッと頭からバケツの水を浴びせられた。

「………水をかける先が違うだろう………?」
「へへーん!暑いし、ちょうどいいでしょ?」
「真面目にやれ!!」

体操服を脱いで上半身裸になる。
髪からポタポタ雫が落ちるのを見ながら、体操服を絞る。

「草間君、隙アリ!!」
いつの間にかプールに降りてきたアイツが俺の脇腹を突付いた。
「っ!!!」

ふざけたアイツが踵を返して逃げ出す。
が、足が滑って転びそうになる。

「水があるんだ!危ないだろう!?」

辛うじて彼女を背中側から抱き止めた。

「………。」
彼女が俺の腕の中で仰向けになっていて、放心状態だ。
そのまま、何も言わず立ち上がり、俺の背後で真面目に掃除をし始めた。

「おい。プール掃除が終わったら、俺の用事にも付き合え。」
「なんでよ?」
「俺の仕事を放置してこっちに来たんだぞ。
しかも頭から水まで浴びせられて。
ちょっとは俺の役にも立ってくれ。」
「うん。分かった…。」

プールの掃除がひとしきり終わったところで、プールの後始末を体育委員に任せ、アイツと二人、先にプールから出てきた。

「何するの?」
「七夕の笹を燃やす。」
「え?」
「いつまでも飾っておくわけには行かないからな。」

渡り廊下の柱にくくりつけられた笹を一本一本外す。
彼女に数本持たせ、残りを自分が担ぐ。
歩くたびに、笹の葉が擦れ合ってさらさらと音がする。
何か話そうかとも思ったが、彼女の横顔と笹の葉の音だけで十分だった。

焼却炉の前に着いた。担いできた笹を下ろす。

「短冊、枝ごと切って全部外せ。燃やすから。」
「えー!?これ全部?もったいないよ!」
「そんなこと言っても、置いておくわけにも行かないだろう。」
「そうだけど…。」
「ほら、日が暮れると体が冷える。」

グズグズ言う彼女を尻目に焼却炉に火を入れた。

「みんなの願い事が叶うように、ちゃんと燃やせよ。」
「………」
「おっと、君の分は燃やさないでおこうか。」

そっと笹から君の短冊を外して手元に置いた。
生徒会では恒例なのだが、こうやって好きな人の短冊を自分のお守りにする。

…好き…なのか?
考えたこともなかったが、気が付けばいつも傍に居て…。
彼女は無邪気に笑って、俺は説教ばかり。
それでもその掛け合いが内心楽しいと思っていた。

「私の願い事、叶わないじゃない。」
「…叶ってたまるか。『世界征服』なんて。」
「私も草間君の分の短冊、燃やさないで取っておこうかな。」
「俺の願い事が叶わなくなるな。」
「草間君の願い事って?」
「ん?『世界平和』だ。
君みたいなヤツを野放しにしておいたら世界が乱れるだろう?」
「じゃあ、短冊燃やさなくても、その願い事は叶うと思うよ?」
「??」

「だって、私を野放しにしなかったらいいんでしょう?
草間君の鎖で、ちゃんと私を縛っておいて……」

彼女は震える瞳で俺の目を見つめる。
彼女は水着姿で、俺は短パン姿で、裸同然の姿な訳で。
喉が渇いているはずなのに、生唾が出て、ゴクッと飲み込んだ。

「ば、バカ!」
「なーんてね!やーい!照れてやんのーーー!!
草間君のエッチ!!!」

彼女が笑いながら、俺の短冊を見つけて笹から取り外した。

「生徒会では好きな人が書いた短冊をお守りにするって先輩から聞いたよ?
…私が持っててもいいよね?お守りにするから。」
「!!……そうだな、きっとご利益があるぞ。」

彼女が俺の短冊を胸に当て、えへへと嬉しそうに微笑んだ。

俺としたことが。完全に彼女のペース。
『世界征服』と『世界平和』。どっちが勝つんだろうか。

-終-

スチル:佳鈴さん
※スチルは仮校舎にてどうぞ。
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