2011/8/18  8:58 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
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◇◆◇そのほかの人たち5

なんだかんだと慌ただしい毎日を過ごし、あっという間に八月になった。
いよいよ同窓会。皆忙しいのか、想定よりも返信率は低いし、出席予定者も八十名程度。
食堂に手配していたケータリングが届き、準備真っ只中だ。
準備を俺と桜でやるには人手が足りなさ過ぎるからと、安田が中手川を呼んでくれた。

「この歳になって、このメンバーで何かするって思っても見なかったよ。」
と中手川がテーブルに皿やコップを並べながら言った。
「俺だって。もう此処に来ることなんて無いだろうと思っていたからな。」
「ふふ、二人ともあまり変わらないね。」
ドリンクの瓶を運んできた安田がくすくす笑う。
そこに、お菓子の袋を持った桜がやってきて言う。
「そうかな?草間君はちょっとお腹が出てきたよね?」
「うるさいな!…運動不足なんだ。」
不機嫌に言う俺を中手川と安田が笑う。
「くっ、はははっ!お前達、変わらないよな。結婚するんだろ?十二年?長いよなー。」
「そうよねー。高二からだから長いよね!私もまさか草間君と桜ちゃんがこんなに長く続くと思ってなかったもの。」
俺と桜は顔を見合わせ、同時に、なんで?と安田の顔を見た。
「桜ちゃんが愛想尽かすんじゃないかと思ってた!」
「なっ!?愛想尽かすのは俺の方だろう?」
「ぷっ、あははは!晶ちゃんったら!」
「安田の言うことわかるなぁ。俺も、どっちかと言えば、谷本が逃げると思ってた!」
「中手川君、どうして?」
桜も、中手川もがそう思うのに疑問を抱いた。
「…草間ってさ、なんかこう、気難しいだろ?それに…最初は谷本が草間に惚れてるのかと思ってたけど、完全に逆だったからな。」
「なっ、なっ、なんだ、それ!?」
思わず、声が裏返った。ニヤニヤしながら俺を見た中手川が続ける。
「俺、最初は草間は結城さんと付き合ってるんだと思ってたんだよな。で、谷本が草間を追って生徒会室に来るようになったんだと思ってたんだけど…。」
うんうん、と安田がうなづいている。中手川は更に続けた。
「なんだかんだ、谷本と二人で最後まで残ってたりすることも多かったしさ。結城さんと家が近所の割に余り一緒に帰らないし。」
「…。」
「…何よりも、一度だけ見たことあるんだよな!綾川と取り合ってるとこ!!!」
「なっ…!」
綾川と…?いつの話だ?そんなことあったか?
「なにそれ!?」
目を輝かせた安田が身を乗り出して中手川に食いつく。
「いつか忘れたけど、放課後、廊下でさ、綾川が草間の胸ぐら掴んでて…。その時は綾川が谷本を連れて行ったんだけど、その後の草間の機嫌が悪かったこと!!今でも忘れられないぜ!」
「すごーい!私も見たかったなぁ!」
ゲラゲラ笑う中手川と目をキラキラにした安田。
今、鮮明に思い出した。アレか。見られていたと思うと、物凄く恥ずかしい。
「分かった…。もう、俺が桜にベタ惚れでいいから、そんな昔の話は止めてくれ…。」
「そんなに機嫌が悪かったんだ?」
俺の顔を見る桜。思わず顔が熱くなる。
「あぁ、機嫌が悪いってモンじゃなかったぜ。力余って、置いてあった資料破っちまったんだから。平静を装ってたんだろうけど、手がずっと震えてた。会長の意外な弱点見たなーって。…怖いから攻める気は起こらなかったけど。」
何を言い出すか分からない中手川を遮って話題を逸らす。
「もういいだろ!?お前こそ、どうなんだよ?あの時のメンバーで結婚していないの、お前達だけだぞ!?」
「え?そうなのか?榎本さんと結城さんは?」
「その二人が二年程前に結婚した。少し前に子供が生まれたし。」
「えぇぇ!いつの間に付き合ってたんだ!?」
「…さぁ。俺たちが高二の時のクリスマス辺りからじゃないか。」
「えぇぇ!知らなかった!!お前らが面白すぎて見てなかったー。」
どういう意味だ…。そんなに面白かったのか?若かったとはいえ、とんだ失態だ。
「晶ちゃんと結婚なんて事は…?」
桜の言葉に、二人が顔を見合わせた。
「安田…?」
「中手川君…?」
二人して吹き出し、ないない!と否定した。
「…残念ながら、俺ももうすぐ結婚するんだよね。」
「そうなの?おめでとう!」
「おめでとう!相手は?どんな人??」
安田と桜が中手川に食いつく。女子はいくつになってもこういう話が好きなようだ。
「勤め先の後輩。銀行員だから、女子行員の方が多いし、案外すんなり決まった。」
「へぇ…。銀行だったら美人が多そうだよね。」
「まぁ…普通だけどな。」
いいなぁを連呼する安田をなだめる桜。

そこに綾川先生がやってきて言う。
「ほらほら、そろそろ時間になりますよ。早く準備してくださいね。」
はーいと全員で返事をして、作業に戻る。
もうそろそろ誰かがやってくるだろう。

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十年後1.約束の日
十年後そのほかの人たち
<十年後そのほかの人たち4 十年後そのほかの人たち6>
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2011/8/18  8:52 | 投稿者: おるん

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◇◆◇そのほかの人たち4

プロポーズから二ヶ月。
結納も滞りなく終わり、結婚式の会場探しと新居探しに追われる。
毎週、桜と二人、不動産や式場巡りであちこちに出掛けている。
今日も会場を二件見て回った。

デパートの売り場をうろうろ物色しながら、桜が話し出す。
「ねぇ、薫君。そういえば、同窓会ってどうなったの?」
「ああ、先月出した案内状、返事が随分届いているらしいぞ。…いくつかは宛先不明で戻ってきたそうだが。」
「結構集まるのかなぁ?」
「どうだろうな。折角やるのだから、それなりに集まってくれると嬉しいがな。」
「何人かメールで聞いてみようかなぁ。」
「ああ、それもいいな。」
桜が急に立ち止まって棚を覗き込んだ。
「あ、これカワイイ!これ買って渡そうよ!」
どれ、と肩越しに桜の指差す先を見る。
「ガラガラ?そういうのは、初孫だから大量に貰うんじゃないか?」
「じゃあ、どんなのが良いのよ?」
「…うーん。一番良いのは現金だと思うが?」
「そんなの、色気ないよぅ!」
「…何が欲しいか聞いてくれば良かったな…。少し後で使いそうなものとかが良いんじゃないか?被らなくて。」
「うーん、じゃあ、絵本とか?」
「そうだな。布で出来たヤツとか、音が出るヤツとか。」
桜はトコトコと店の奥に入り、あれこれ探している。
「じゃぁ、こんなのは?カワイくない?」
「あはは、いいんじゃないか。桜らしい選択だな。」
女子のカワイイは意味不明。俺にはちょっと不気味だが、それがカワイイのだと言う。
「じゃあ、これにしよっと。」
桜が商品を手に店員に話しかける。会計と包装をして貰っている。

綾乃が出産してから一ヶ月。そろそろ榎本家に戻ると言うので、結城家で集まって夕食を一緒にすることになった。
家に帰ると、珍しく一家勢揃いだ。
「あれ?梓、今日は休みなのか?」
「そうよ。他の人にシフト代わって貰ったから。」
「看護師さんって大変でしょ?大丈夫?」
「まぁ、まだ若いから大丈夫!この前私が代わってあげたから、その貸しで。」
そこに穂が入ってきた。ダイニングテーブルの上のお菓子をひとつ摘んだ。
「あ、薫兄、桜さん、お帰り。ぼちぼち隣に行く?」
「さぁ。まだ早くないか?母さん、何時行けば良いんだ?」
「そうねぇ、母さん、隣に行って手伝ってこようかしら。この人数だし。」
「あ、じゃあ、私も行きましょうか?」
「良いのよ、多すぎてもキッチンが狭いから。」
確かに。綾乃の家もウチと大体同じ造りだから、キッチンに入れるのはせいぜい三人までだ。
我が家のリビングに大人が六人。まだ余裕はあるが、広々ではない。
結城家の人間を合わせると大人十人か…。

そんなことを考えていたら、チャイムが鳴った。
「はーい。」
入り口に一番近いところに居た穂が玄関に出た。
「わぁぁぁぁ!ひ、人違いです!!薫兄!!」
何事かと玄関に出る。
「あれ!?草間?こっちは?」
見てみると、榎本さんが穂にヘッドロックを掛けていた。
「はぁ…。榎本さん、お久しぶりです。そっちは穂です。」
俺の顔を見ると、穂を放す。
「ほう。やっぱり似てるよなー。」
「似てるのは認めますが、人の家に来て、いきなりヘッドロックは無いと思いますよ。穂はまだ学生なんですから、頭が使い物にならなくなったら困ります。」
「学生?」
「ええ。医学生なんですよ。頑張って国家試験に通ってもらわないと。」
「そうか、穂君、ごめんな!」
「良いですよ…。もう、軽いなぁ。」
「で、どうしたんです?」
「あぁ、夕飯の準備がもうすぐ出来るからどうぞって。」
「榎本さんも入れると、大人十一人…入るんですか?」
「どうせお義母さんは立ちっぱなしだろうから、俺とお前とで立ってりゃ、残り八人。何とかなるだろ。」

結城家で赤ん坊のお披露目があった。
名前は二人の名前が『あ』で始まると言うことで、灯里(あかり)にしたそうだ。
目元が綾乃に似た、聡明そうな女の子だった。

リビングの隅で男二人壁にもたれてビールを飲む。
「榎本さん、パパになった感想は?」
「まだほとんど実感無いよ。これから一緒に暮らすから、大変だろうな。」
「そりゃそうか。女は自分の体の中で子供が大きくなるのを感じていただろうけど、男にしてみれば、生まれてからやっとスタートですからね。」
「女って凄いよな。お前もやっと結婚するんだろ?おめでとう。早く子供作れよ。」
「ありがとうございます。子供…そうですね。」
「で、お前、仕事何してるんだよ?」
「公務員です。」
「官僚?」
「いいえ。普通に区役所ですよ。」
「東大出で区役所!?エリート官僚にでもなれただろうに!」
「なんか、大学にはこだわりがあったけれど、エリートになりたいわけでもなかったし…。無難に公務員になりました。」
「はぁ…お前らしいといえばお前らしいか。」
「榎本さんは?仕事、何してるんです?」
「俺?一応ITエンジニアってヤツだ。しょうもない仕事だよ。」
「IT…忙しい業界だって聞きますよ。」
「まぁな。さして儲からないけどな。人の親になったんだ、頑張らないとな。」

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十年後1.約束の日
十年後そのほかの人たち
<十年後そのほかの人たち3 十年後そのほかの人たち5>
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