2011/7/22  22:03 | 投稿者: おるん

---------------------------------------------
注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
 ウェブカレはリンクシンク社のSNSサービス名です。
 小説内の設定は必ずしもウェブカレ公式設定と同じではありません。
---------------------------------------------

◇◆◇そのほかの人たち2

三人でコーヒーを飲みながら、カレンダーを覗き込む。
「…やはり休暇の会社が多いであろうお盆が一番スケジュールの融通が利くのでは?」
八月の真ん中を指差しながら言う。それに綾川先生が腕組みをしながら応える。
「そうですねぇ、夏休みはこれといって大きなイベントや保護者会もありませんしね。」
「でも、結婚してる人は相手の実家に帰省なんてこともあるんじゃない?」
桜がコーヒーをすすりながら反論した。
「まぁ、それもありそうだが、まだ独身の方が多いだろうし、大体皆この近辺の出身なんだから今もこの近辺に住んでいるやつの方が多いだろう?」
「…じゃあ、食堂、仮押さえする?日程は??」
桜がコーヒーカップを机に置き、ペンを持つ。
「盆休みが無い会社もあるだろうから、一応土日…八月十四か十五日がいいんじゃないか?」
俺の言葉を聞いて、桜がその日付をペンで囲んだ。
「…では、それで申請を出しておきましょうか。」
綾川先生が机の引き出しから申請用紙を取り出した。
「お願いします。」
「押さえられたら、また連絡しますね。…連絡先を聞いていいですか?」
先生は申請用紙の必要事項に書き込みをしながら俺にメモを差し出す。
「じゃあ、俺の携帯番号を…。また来週にでも案内状を出す相談に乗ってください。」
ペンで名前と電話番号を書き込み、先生の前に差し戻した。先生はそれを一瞥し、また記入を続けた。
「はい。分かりました。」
記入を続ける先生を横目に桜が残りのコーヒーを飲みながら言う。
「…案内状の送料って、自腹なんですか?」
「おいおい、学年何人居ると思ってるんだ。何のための同窓会費だよ。…ですよね?先生。」
まだ冷めないコーヒーを冷ましつつ、飲む頃合を計りながら言った。
「あぁ!そうですね。そっちの申請用紙も書いておかなくては!ええっと、職員室に取りに行かないと行けませんね…。」
手持ち無沙汰の桜が費用の計算をしだした。
「…往復葉書で百円、学年約二百人だから…二万円?」
「そうだな。施設使用費や印刷代も掛かるだろうから、もう少し上乗せだろう。もし、何か軽食でも用意するなら、会費を取らないと流石に賄えないだろうな。」
「そっか、何もないのもつまらないしねぇ。」
「食堂は盆休みで営業していないだろうから、ケータリングでオードブルでも頼まないとな。どうせ二百人全員は集まらないだろうから百人分くらい?アルコールなしなら割と安く済むんじゃないか?」
「会費…千円か二千円くらいかな?」
「そんなものだろう。…会費取るなら、葉書代もそれで足りるか??…いやいや、出席率が低いと賄えないかもな。やっぱり案内状は同窓会費で賄ってもらおう。」
施設使用の申請用紙の記入が終わった先生が言う。
「算段は終わりましたか?一応、葉書代と施設利用費分を同窓会に申請しておきますね。印刷はこっそり学校のを使えばいいですよ。」
「お願いします。」

机の上のカレンダーと申請用紙を片付けた先生がコーヒーを飲みながら話しはじめた。
「それにしても、あなた達も結婚するような歳になったんですねぇ。」
「…もう二十八ですから。」
「あれから十年ですか。早いですねぇ。谷本さんもすっかり大人の女性ですね。」
無愛想に答えた俺に、ニヤニヤしながら返してくる。
「そうですよ。俺達は既に、十年前の先生よりも年上なんですよ。」
「おっと、本当ですね。あの頃のあなた達はかわいかったですからね。」
「今も相変わらず生徒にちょっかいを出したりしているんですか?」
「ふふ、ちょっかいだなんて。でも、もうそんなことはしていませんよ。高校生を相手に出来るような歳ではないですし、何かと問題になると困りますから。」
「…。」
「あの頃の谷本さん、ウブでしたね。覚えていますか?」
そう言って、綾川が桜の顔を覗き込む。
「!!せんせっ!セクハラですよ!!」
十年前を思い出した桜が顔を赤らめて叫んだ。相変わらず悪趣味な腹黒教師だ。
「ふふ、すみません。思い出したら、ちょっとからかってみたくなりまして。」
「やめてくださいよ!思い出さないようにしてたのに!」
「あの時の草間君、なかなか格好良かったですよ。」
「…俺の事はいくらでも弄って頂いて構いませんが、桜の事は止めて頂きたい。」
「ふふふ。あなた達はまだまだ若いですね。」
「若くて結構。その話、俺の中でもまだ笑えませんから。」
「おやおや、そうでしたか。すみませんね。」
ムカつく!もう少し若かったら今この場でその面を殴っていただろうに!
「コーヒー、ご馳走様でした。また来週来ますから、手続きお願いします。行くぞ、桜。」
「う、うん。先生、ご馳走様でした。」
立ち上がった桜の手を引き、学校を後にした。

---------------------------------------------
十年後1.約束の日
十年後そのほかの人たち
十年後そのほかの人たち3>
---------------------------------------------
0

2011/7/22  0:35 | 投稿者: おるん

---------------------------------------------
注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
 ウェブカレはリンクシンク社のSNSサービス名です。
 小説内の設定は必ずしもウェブカレ公式設定と同じではありません。
---------------------------------------------

◇◆◇そのほかの人たち

高校卒業から十年。白薔薇学園から封書が届いた。
差出人は綾川司。
「前略。お久しぶりです。綾川です。お元気ですか?
あなたたちが白薔薇学園高校を卒業して、十年が経ちました。
折角ですから、110期生の同窓会など企画しませんか?
場所は講堂や食堂を使うのも良いと思います。
(と言うのも、中学校を新設することとなり、学校側が寄付金集めに躍起になっているのです。
ですから、私もこうして人を集めてくれそうな人にお手紙など書いています。
大人数でも学校施設を借りることも今なら容易でしょう。)
あなたたちの元気な姿を拝見できるのを楽しみにしています。草々。」

同窓会。
高校時代はそれなりに楽しかったが、そんなに仲が良い人間も多くはなかった。
母校が嫌いという訳ではないが、寄付金集めをしてやる程の義理も無い。
大体、俺だってこれから彼女と結婚するに当たって忙しいのに。

今日は朝から桜が家に来ていて、新居に引っ越すための準備と称して、俺の部屋の荷物の整理をしていた。
「なあ、桜。高校の同窓会、行くか?」
「え?何それ?そんな連絡、私のところに来てないよ?」
「行く?」
「そりゃ、あるなら行きたいかな…。」
「そうか…。じゃあ、やるか。」
「??どういうこと?」
「これ。こんなものが綾川から届いた。」
「綾川君??」
「いいや、兄貴の方。学校の封筒だろう?」
そういって封筒を桜に手渡す。
「薫君、幹事に抜擢されちゃったのね。」
「そういうことみたいだな。俺に何ができるっていうんだ。こっちの都合も考えずに…。」
「まぁまぁ、そう言わずに。同窓生名簿ってきっと学校にあるんでしょ?学校から発送してもらえばすぐだよ。」
「明日にでも行ってみるか?」
「うん!」

翌日、学校に電話をし、綾川先生が居ることを確認してから学校を訪ねた。
「綾川先生。」
「草間君、お久しぶりです。谷本さんも一緒でしたか。元気そうで何より。」
「お陰様で。同窓会についてですが。」
「はいはい。とりあえず、国語準備室にでも行きましょうか。」
先生から来客用カードを手渡され、それを首に掛けて校内に入った。
「十年振り…。なんか校舎が綺麗になってる!ほら、見て!!」
桜がきょろきょろと校内を見回し、あちこち指を差していた。
「去年、補修工事をしたんですよ。…おや?あなた達、結婚したんですか?」
綾川先生が桜の左手の婚約指輪を見て、あっと目を大きくした。
「…お陰様で。俺達、夏に入籍するんです。」
「そうですか!それはそれは、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。先生は…独身なんですか?」
桜が満面の笑みでお礼を言って、聞きにくい事をそのままズバリ聞いた。
「…ええ。残念ながら、良いご縁がなくてね…。」
流石の綾川もこれには困ったようだった。
「先生、綾川君は元気なんですか?」
「あぁ、竜士君も元気にしていますよ。仕事が忙しそうで、家でもあまり顔を合わせないですけどね。」
「そうなんですか…。」
「あ、でも、同窓会にはきっと来ると思いますよ。あなた達が幹事なら間違いなく。」
そうして辿り着いた国語準備室のドアを先生が開けた。
「はい、どうぞ。入ってください。」

あの忌々しい国語準備室。
綾川にとっては大したことではなかったかもしれないが、俺にとっては未だに屈辱的な記憶が残る。
あれから十年。大人になった俺達は、キスなんかよりももっと色んな事をしたし、たかがキスなのだが、されどキスな訳で。
「薫君、どうしたの?眉間に皺が寄ってるよ?」
「ん?あぁ、いや、なんでもないんだ。」
先生が部屋の奥でなにやらガサガサしている。
「今、コーヒーを入れますから…。そこに適当に座ってください。あ、これが今年のカレンダーです。これを見て日程を考えましょう。」
そうして、当時よりは新しくなった事務椅子に腰掛け、机の上のカレンダーを見た。

---------------------------------------------
十年後1.約束の日
十年後そのほかの人たち
十年後そのほかの人たち2>
---------------------------------------------
0




AutoPage最新お知らせ