2011/4/26  15:50 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
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◇◆◇3.約束の言葉

「薫君。」
彼女が俺の名を呼ぶ。
薄暗くて彼女の顔がはっきり見えない。微笑んでいるのか、泣いているのか。
近づくにつれ、段々彼女の顔が見えてくる。
優しく微笑む桜。
背後から差す遠くの電灯の明かりがあたかもソフトフィルターのように彼女の肌の上で反射する。
綺麗だ…。そう思った。
でも、心配したのと安心したのと、準備してきたことが全て覆されて、振り回されてクタクタの俺。
無性に腹が立って仕方がない。

「お前は何をやっているんだ!!」
自分でも驚くほど大きな声が出た。
「え?な、なによ?」
彼女も目を大きくして驚いている。
今日は彼女の誕生日なんだし、無事だったんだからそんなに怒らなくても良いじゃないか。
そう思う自分が居て、でも、感情が高ぶりすぎて抑えられない自分が居て。
「一人でこんな時間にこんな所で!危ないだろう!!」
「ご、ごめん…。」
「ごめんじゃない!俺は!俺は…!!」
「あぁ、もう!そんなに大きな声で怒鳴らなくてもいいでしょ!?」
「怒鳴られるようなコトをしているのは君だろう!?」
「忘れてたのは悪かったけど、思い出したから、ここに来たんじゃない!」
「思い出したなら部屋に居ればよかったじゃないか!」
「だって、桜の木の下で出会う方がロマンチックでしょ!?」
「バカ!!」
「どうせバカですよっ…くしゅっ!」
そうして、薄着の彼女は小さなくしゃみをした。
「…ほら、そんな格好でこんなところに居るから…。」
自分が着ていたジャケットを脱いで彼女の肩に掛け、抱き寄せた。

自分の胸元に当たる彼女の額。
冷たくなっている。かなり長い時間、ここで俺が来るのを待っていたんだ。
「薫君、汗だくだよ…?」
「悪かったな。お前のせいだよ。あっちこっち駆けずりまわって、脚も腕もガクガクなんだから…。風邪引いたら看病しろよ…。」
「ふふ、私も風邪引いちゃいそう…。」
「俺は看病なんかしてやらないからな…。」
「そんなこと言って…。ウソばっかり…。」
「嘘なんかじゃないぞ。」
俺は嘘つきだ。もし君が風邪を引いたら、俺は言われなくても看病しにいくだろうな。
「二人で風邪引いて、ずっと一緒にベッドで寝てようか?」
「ああ、それも良いかもな…。」
彼女の甘い誘惑に負けそうになる。少し色を失った彼女の唇にキスをする。
唇が微かに離れた。ほんのり俺の熱を奪った唇が動く。
「かおるくん…。」
熱っぽい声の桜。あぁ、タガが外れてしまいそう。
「さくら…。」
「かおるくん…、もうすぐ、誕生日が終わっちゃう…。」
もうそんな時間か、残念。そう思いながら桜を抱いている腕を緩める。

「…誕生日おめでとう、桜。」
「ありがと…。」
「君にプレゼントがあるんだ。」
「なぁに?」
背中の鞄から、指輪のケースを取り出し、彼女に向けて開けた。
「…これ。」
「これ…?」
「うん。」
「…十年前の続き?」
「そうだ。」
彼女が黙った。笑うでもなく、泣くでもなく、困っているように見える。

「…桜、今までずっと一緒に居てくれてありがとう。これからも俺とずっと一緒に居て欲しい。」

彼女の目を見つめて約束の言葉を言った。

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1.約束の日
<2.約束の場所 4.約束の続き<完結>>
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2011/4/22  12:18 | 投稿者: おるん

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◇◆◇2.約束の場所

夕食を軽く済ませて自室に戻る。
もう少ししたら、桜が帰宅するはずだ。

誕生日プレゼント…エンゲージリング。

彼女はどんな反応をするだろうか?
床に寝転がってリングをケースから出し、光にかざしてみる。
キラリと石が光る。
昼間渡すつもりだった指輪。
まぁ、夜のほうが人は少ないし、ロマンチックかもしれない。

携帯が鳴る。メールだ。
「今から帰るね。」

指輪をケースに仕舞い、鞄に入れる。
鞄を背負って家を出て、自転車に乗る。
彼女の部屋までたどり着いたところで、再び携帯が鳴った。
「ゴメン、ちょっと忘れ物したから遅くなる。」

「…ったく。いつまでたってもそそっかしいな…。」
彼女の部屋の前でいつまでも待っている訳にも行かず、かといって、勝手に部屋に上がりこむのもどうかと思う。
結局、駅前のコンビニで時間を潰すことにした。
雑誌を立ち読みしていると、背中を叩かれた。
「草間君。」
見覚えのない女性。いぶかしげに見ると、こう話し出した。
「ほら、前に会ったでしょ?ファミレスで。サクラと大学で一緒だった…。」
「あぁ!こんばんは。」
「サクラは一緒じゃないの?」
「え?あぁ、友達と一緒に食事すると言っていたから。」
「サクラ、それ来なかったよ?」
「え!?」
「今日は彼氏と約束あるからって…。」
「なっ…!う、コホン。いや、実家に一旦戻ってからだった。もうすぐこっちに来るんだ。」
「??ホントに?」
「あ、ああ。…君も余り遅くまで出歩かずに早く帰ったほうがいい。」
「うーん。…わかった…またね。」

桜の友達が店の奥に移動したのを見届けると、読んでいた雑誌を元に戻して店を飛び出した。
アイツ、何をやっているんだ!?
すぐさま自転車にまたがり、彼女の家まで戻る。
部屋のインターホンを押してみても反応がない。持っていた合鍵で部屋に入る。
部屋の明かりも消えていて、やはり人の気配はない。
上がり込んで部屋の明かりを点けて見渡す。
「やっぱりまだ帰っていないか…。」
朝、寝坊したのか、ベッドが少し乱れていたが、特に変わった様子もない。
電話を掛けてみたが、一向に繋がらない。
ああ、もう!!
彼女の部屋を後にして、また自転車にまたがる。

彼女が行きそうなところ…。
カフェや本屋、雑貨屋、ケーキ屋…。いくつか回ってみたものの、何処にも居なかった。
「何処に居るんだ…。」
途方に暮れて、しばし空を仰いでいたその時、携帯が鳴った。
「今日は私の誕生日だったよね?忘れてたよ。」
桜からのメール。

もしかして!?あのバカ!!!

自転車であの場所に向かう。
必死に漕いだ。運動不足が祟って、脚が思うように動かない。
ヨレヨレになりながら、約束の場所にたどり着いた。

まだ咲いていない桜の木の下に彼女が立っていた。

自転車をガチャンと乗り捨てて、彼女の元に突き進んでいく。
薄暗い公園。人影もほとんどない。
それでも彼女の周りがほのかに光っているように見えた。
彼女が風になびいた髪を押さえながら、こちらを向いた。

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1.約束の日
3.約束の言葉>
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