2011/1/13  1:23 | 投稿者: おるん

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◇◆◇12.愛しい人

奈月の家を訪ねる。誰もいなければ、ポストに入れていこうかと思っていたが、留守ではなかった。
ひかりを置いて、奈月の家に上がらせてもらう。
お母さんが出迎えてくれた。
「突然すみません。…以前お約束したとおり、奈月さんに指輪を届けに来ました。」
「綾川さん、久しぶりですね。お元気そうで。わざわざありがとう。」
「これ、あの時、プロポーズしようと思って作った婚約指輪なんですけど。」
「…。」
「私もやっと、前を向いて歩いて行けそうなので。」
「まぁ!もしかして、結婚なさるの?」
「い、いえ。まだそんなことはありません。やっと、新しい恋人を見つけまして。」
「そうだったんですね。おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「奈月もすこし寂しがるかもしれませんが、きっと喜びます。」
「ええ…。奈月には寂しがらないで欲しいです…。
彼女が、私が奈月さんのコトを好きだったことも含めて好きだと言ってくれまして。
だから、私の心から奈月さんが居なくなる訳ではないんです。」
「…でも、それだと彼女がかわいそうでしょ?」
「…そうですね…。なので奈月さんのスペースはほんの少しになってしまいますが。」
「ふふ。奈月もきっと応援していますよ。彼女を悲しませないでくださいね。」
「わかりました。」
指輪を彼女の仏壇に供える。

奈月…。写真の中の君は、あの頃のままの若さで微笑んでいる。
奈月、俺が他の女と付き合うって言ったら…普通怒るよな。ごめんな。
でも、俺も前を向いて歩かないとな。それこそ君に笑われてしまいそうだ。
多分、ひかりと君なら気が合うんじゃないかと思うんだ。
これからも時々は君の事を思い出して懐かしむと思う。
今までありがとう。

「今日は突然ですみませんでした。これで失礼させていただきます。」
「綾川さん、お元気で。お幸せに。」
「はい。本当にありがとうございました。」

車に戻ると助手席のひかりが聞いてきた。
「もういいの?」
「ああ。もう済んだよ。」
車を走らせ、彼女の家の近くまで送る。
停めた車の中で、彼女を降ろす前に聞く。
「なぁ、ひかり。俺のどこが好きになったんだ?」
「うーん…、カッコいいところ?」
「顔だけ!?」
「あはは、冗談。見た目がカッコいいのももちろんあるけど、なんかねぇ、こう見え隠れする何かがね、凄く色気があって。」
「ふむ…。」
「高校生の時は、それが何かわからなかったけど、大人っぽくてカッコいいなって。
それ、奈月さんのコトだったんだね、きっと。」
「…俺、優しくないよ。」
「知ってます。自分に優しくないでしょ?」
「…俺、多分、君が思っているような男じゃないけど?」
「私が思っている司さん?
真面目で優しい男前の国語教師。結婚を決めた恋人と死に別れた悲劇の青年。
地元企業の御曹司。弟大好きのお兄さん。
…で、昔は他校の生徒からも一目置かれる不良。」
「ほう。そこまでよく知っていたね。」
「ま、情報網も結構網羅してるんですよ。バスケ部。」
「ホントに良いの?俺で。君を悲しませるかも知れないよ?」
「そうかもしれないけど、大丈夫。私の勘は結構当たるから。占いと一緒で。」
「…。」
「これだけ気にしてくれて、優しくないわけないじゃない。そういうところも好き。」
彼女が俺の方を見て、俺の腕を引いた。
「司さん、私のこともちゃんと好きになってね。」
「ああ。もちろん。」
高校生の頃から彼女はこんなだった気がする。
回りくどいけど、ちゃんと自己主張してたんじゃないか。それを全く気付かなかったなんて。
現金だな、俺。ひかりが物凄く愛おしい。
瞳を閉じた彼女に優しくキスをした。


-終-

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1.よく当たる占い
<11.墓参り
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