2011/1/22  1:22 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
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◇◆◇1.図書館の君

高校入学の日。
昇降口で出会った。たまたま隣り合わせでクラス分け表を見ていた草間君。
涼しげな顔。一目惚れだった。
そのあとの入学式で彼が首席入学生だと知った。
彼とは同じクラスにはならなかったので彼とはなかなか会えない。どんな人なのかもわからない。
インタビューとか取材とかにかこつけて、話したり写真を撮れたりするかもと新聞部に入部した。

彼は図書委員だったから足しげく図書館にも通った。
淡々と手続きする彼は私に笑いかけてくれることもなかったし、世間話も私が話しかければ一言二言返してくれるくらいだった。
多分顔と名前位は覚えてはくれただろうけれど、全く興味を持ってくれる気配はなかった。
そりゃそうか。165cmの長身、ショートカットで見た目も男っぽい私。
彼は私より少し背が高いくらいで、体重なんか、もしかしたら変わらない位かもしれない。

放課後、いつものように図書館に行った。
いつものカウンターに彼が居ない。
あれ…?今日は休みだったのかな?
仕方なく、なにか小説でも探そうと書架の間の通路に入った。
適当な本を手に取って読んでいると、何かがこちらに近づいて来ている気配がする。
そちらを見ると、大量に本を積み上げられたワゴンが目の前に迫っていた。
「きゃっ!!」
「うわっ!!」
ワゴンが私に当たり、バサバサとワゴンに積まれた本が崩れ落ちた。
降ってきた本を避けようと反射的に座ってしまい、余計痛い目に遭った。
「痛ったー…。」
「すまない!大丈夫か?」
ワゴンを押していたのは草間君だった。
心配そうな顔をして私を見つめる彼。
いつも表情を滅多に変えない彼が、動揺しているっぽい。
「あ、うん。大丈夫!」
「やはり、横着はダメだな。一遍に運ぼうとしたから前が見えなくて。」
彼と一緒に崩れ落ちた本を拾い集める。最後の一冊を手に取ろうとして彼の手と触れた。
「あっ!」
思わず声を上げ、手を退いてしまった。一気に体中が熱くなる。
一瞬止まった彼の手が、その最後の一冊を拾い上げる。
「ありがとう。助かった。」
そう言って本をワゴンに載せ、歩き出そうとしている彼。
私は通路を空けようと書架にぴったりへばりついた。
彼がそのまま私の後ろを通り抜けるのかと思いきや…。
「君、本が好きではないだろう?」
「え?」
「結構難しい本を借りていく割にはすぐに返却するし、読んでいないのではないか?」
「そ、そんなこと…。」
「カラマーゾフの兄弟、一日では読めないだろう?」
「よ、読んだわよ…。」
「…他にも夜明け前と封神演義。どれも小説だが趣味が違いすぎやしないか?」
「私は雑食だから何でも読むの。」
「…まあいい。期限どおりに返却してくれれば。
読まないなら他の人の機会を失うから止めろと言いたいところだが。
たまにはちゃんと読んでみることだな、山本。」

彼と喋っちゃった!!うわー、こんなに話をしたのは初めて!
しかも、手まで触っちゃったし、名前まで呼ばれちゃった!!
すんごい嬉しい!!!

今日も何か本を借りようと思ってたけど、彼の顔を見て冷静に振舞える自信がなくて、そそくさと下校した。
帰りに書店に寄って、彼が言っていたカラマーゾフの兄弟を買って帰る。
もし内容を聞かれたら困る。
彼が指摘したことは本当で、彼と話すためだけに毎日本を借りていたのだから。
彼の気を引きたくて、読めもしない小難しそうな本ばかり。
これをちゃんと読み終わったら、彼になにかオススメを見繕って貰いたいな…。


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1.図書館の君
2.取材>
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2011/1/13  1:23 | 投稿者: おるん

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◇◆◇12.愛しい人

奈月の家を訪ねる。誰もいなければ、ポストに入れていこうかと思っていたが、留守ではなかった。
ひかりを置いて、奈月の家に上がらせてもらう。
お母さんが出迎えてくれた。
「突然すみません。…以前お約束したとおり、奈月さんに指輪を届けに来ました。」
「綾川さん、久しぶりですね。お元気そうで。わざわざありがとう。」
「これ、あの時、プロポーズしようと思って作った婚約指輪なんですけど。」
「…。」
「私もやっと、前を向いて歩いて行けそうなので。」
「まぁ!もしかして、結婚なさるの?」
「い、いえ。まだそんなことはありません。やっと、新しい恋人を見つけまして。」
「そうだったんですね。おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「奈月もすこし寂しがるかもしれませんが、きっと喜びます。」
「ええ…。奈月には寂しがらないで欲しいです…。
彼女が、私が奈月さんのコトを好きだったことも含めて好きだと言ってくれまして。
だから、私の心から奈月さんが居なくなる訳ではないんです。」
「…でも、それだと彼女がかわいそうでしょ?」
「…そうですね…。なので奈月さんのスペースはほんの少しになってしまいますが。」
「ふふ。奈月もきっと応援していますよ。彼女を悲しませないでくださいね。」
「わかりました。」
指輪を彼女の仏壇に供える。

奈月…。写真の中の君は、あの頃のままの若さで微笑んでいる。
奈月、俺が他の女と付き合うって言ったら…普通怒るよな。ごめんな。
でも、俺も前を向いて歩かないとな。それこそ君に笑われてしまいそうだ。
多分、ひかりと君なら気が合うんじゃないかと思うんだ。
これからも時々は君の事を思い出して懐かしむと思う。
今までありがとう。

「今日は突然ですみませんでした。これで失礼させていただきます。」
「綾川さん、お元気で。お幸せに。」
「はい。本当にありがとうございました。」

車に戻ると助手席のひかりが聞いてきた。
「もういいの?」
「ああ。もう済んだよ。」
車を走らせ、彼女の家の近くまで送る。
停めた車の中で、彼女を降ろす前に聞く。
「なぁ、ひかり。俺のどこが好きになったんだ?」
「うーん…、カッコいいところ?」
「顔だけ!?」
「あはは、冗談。見た目がカッコいいのももちろんあるけど、なんかねぇ、こう見え隠れする何かがね、凄く色気があって。」
「ふむ…。」
「高校生の時は、それが何かわからなかったけど、大人っぽくてカッコいいなって。
それ、奈月さんのコトだったんだね、きっと。」
「…俺、優しくないよ。」
「知ってます。自分に優しくないでしょ?」
「…俺、多分、君が思っているような男じゃないけど?」
「私が思っている司さん?
真面目で優しい男前の国語教師。結婚を決めた恋人と死に別れた悲劇の青年。
地元企業の御曹司。弟大好きのお兄さん。
…で、昔は他校の生徒からも一目置かれる不良。」
「ほう。そこまでよく知っていたね。」
「ま、情報網も結構網羅してるんですよ。バスケ部。」
「ホントに良いの?俺で。君を悲しませるかも知れないよ?」
「そうかもしれないけど、大丈夫。私の勘は結構当たるから。占いと一緒で。」
「…。」
「これだけ気にしてくれて、優しくないわけないじゃない。そういうところも好き。」
彼女が俺の方を見て、俺の腕を引いた。
「司さん、私のこともちゃんと好きになってね。」
「ああ。もちろん。」
高校生の頃から彼女はこんなだった気がする。
回りくどいけど、ちゃんと自己主張してたんじゃないか。それを全く気付かなかったなんて。
現金だな、俺。ひかりが物凄く愛おしい。
瞳を閉じた彼女に優しくキスをした。


-終-

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1.よく当たる占い
<11.墓参り
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