2010/12/28  11:22 | 投稿者: おるん

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◇◆◇8.新しいスタート

どうにかこうにか、彼女と連絡が取れた。
早速占ってもらうことにしたけれど、場所がない。
俺の自宅でも良かったけれど、突然自宅というのも困るだろうし、もちろん彼女の自宅に行ける訳もなく、ファミレスやカフェではやりにくいだろう…、という事で学校の国語準備室にした。
校門の前で彼女を待つ。
「先生!待たせちゃった??」
「いいえ。すみませんね。突然お呼び立てして。」
「暇だから来てあげたの。もちろん、なんか奢ってくれるんでしょう?」
「そうですね。お茶くらいなら。」
「学校にはあなたが私の資料を借りに来たと言ってありますから。」
「まぁ、私用で学校を使うのもねぇ。」
「そういうことです。はい、これ。」
彼女に来客者カードを渡す。
「卒業生なのに面倒くさいー!」
「そう言わないで。決まりなんですから。」
「はーい。」
彼女は渋々それを首に掛けた。

春休み中の校内は補講に来ている生徒やクラブ活動に来ている生徒が居るものの、閑散としている。
彼女は来客用スリッパで校舎内を歩いて、あちこちを見回している。
「懐かしいなあ、まだ卒業して三年なのに。」
「そんなものですよね。私も卒業して三年で教育実習で戻ってきた時にそう思いましたから。」
「そっか、先生もこの学校の卒業生だったんだね。」
「知りませんでしたか?」
「ううん、知ってたけど、意識してなかったから。」
「ま、そんなものですよね。」
「先生って、私のいくつ先輩になるの?」
「えぇっと、五つかな?」
「そっか、五つしか変わらないんだ…。先生、若かったんだね。」
「どういう意味ですか?」
「そのままの意味ですよ。やっぱり先生っていうと大人ってイメージでしょ?」
「まぁ、そうですよね。子供の時の五歳と大人の五歳はかなり違いますからね。」
「大人になっちゃうと、五つなんて大したことなくなっちゃうね。」
「ええ。…そうか、あなたももう成人してるんですね…。」
「何を今更。」
「ええ、もし時間が空いているなら、お酒を飲むのもありかなと。私の奢りで。」
「え…。それって、そういうお誘いとかだったりする??」
「うーん、あなたが構わないなら、そういうお誘いにしても構いませんが?」
「わ、私、先生のコト、そんな風に…。」
「ま、占いで決めるのもいいんじゃありませんか?ついでに。」
「…。」

国語準備室のドアを開けて彼女を案内する。
以前のように、彼女が机の上にクロスを広げ、タロットの準備をし始めた。
同じようにカードを混ぜ、カードを並べる。
「さて、いかがですか?」
「うーん??」
「どうしました?」
「先生、今日は何を占いたかったんですか?」
「そうですね、新しい出会いがあるかどうかです。」
「出会い…。」
「出てませんか?」
「うん…。」
「では、もう出会っているのかもしれませんね。」
「…先生、彼女探してるんですか?」
「ぶっちゃけるとそういうことです。」
「先生ならモテるから大丈夫ですよ。」
「うん…、そうかもしれないけど、前の彼女が忘れられなくて、彼女が作れなかったんですよ。」
「あ、またナル入ってるし。先生なら仕方ないけど。…忘れられない彼女って、昔占った時の恋人?」
「そうです。」
「初詣の時、言ってたもんね。逃げられたって。振られたの?」
「…そうですね。振られたんじゃないんです。」
「??じゃあ、振ったの?」
「いいえ。あなたの占いの通りだったんです。」
「??あの時の結果…、あんまり良くなかったのよね、確か…?」
「…彼女、事故で亡くなったんですよ。」
「え!?」
そのまま彼女が絶句した。当然といえば当然。黙っておいたほうが良いとは思ったけれど、言わないと次に進めないと思った。
別に胸が苦しくなるわけでもなく、穏やかに、目の前に座る彼女を見つめていた。
「…それはいつ??」
「あなたに占ってもらって、一ヶ月後。夏休みに入る前でしたよ。」
「そんな…。私のせいみたいじゃない…。」
「…すみません。あなたを責めるつもりじゃないんです。あなたの占いが当たるから、今日、こうして占ってもらってるんです。」
「…。」
うつむく彼女に向かって続ける。
「あれから三年半経ちました。彼女のコトはもちろん忘れられないのですが、やっと心が落ち着いてきたんです。
ある意味、悲しいですが、記憶が薄れてきたというか。もう、彼女のコトは過去にしようと思ったんです。
私は新しい出会いを得て、彼女を過去にすることができますか?」
「…先生は、もう答えを出していますよ。」
「…。」
「全てはあなたの気持ち次第です。
きっと彼女さんだって、先生が縛られることを喜ばないと思います。
先生はいつでも新しいスタートを切ることができます。」
「そうですか。ありがとう。」

彼女がタロットを片付けてながら言う。
「さーて、先生には何を奢って貰おうかなぁ…。」
「あまり無茶は言わないでくださいね。」
「わかってますよぉ。でも、先生と行くところだもんなぁ…。」
「何か問題でも?」
「んー、折角大人の男の人とデートするなら、学生じゃ行けない所が良い。」
「ふむ。では、行きつけのバーに行きますか?」
「いいの?」
「ええ。少し冷やかされそうですけど。」

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1.よく当たる占い
<7.司の過去 9.ホテルバー>
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2010/12/26  1:13 | 投稿者: おるん

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◇◆◇7.司の過去

高校を卒業して数日。
家のリビングでゴロゴロしながら映画のブルーレイを見ていた。
兄貴も仕事が休みのようで家に居る。
リビングを覗いた兄貴が俺に向かって言う。
「竜士、今日は家でゴロゴロしてるのか?珍しいな。」
「あー?金が無ぇんだよ。別に行かなくちゃならないところもねぇし。」
「なんか不健康だよな。体でも動かせばいいのに。」
「何言ってんだよ、これでも俺は結構鍛えてるんだぜ?それに、出掛けても不健康そうなところにしか行かねぇよ。」
「ふふ。それはそうかもな。」
「兄貴こそ、どっか行かねぇのかよ?」
「そうだな、昼間から酒を飲むのもね。」
「けっ、そっちのほうがよっぽど不健康だぜ。」
「竜士も成人したら一緒に飲みに連れてってやる。」
「やだよ、何で兄弟で飲みに行くんだよ。」
「えー?男同士、色々あるだろう??」
「ねぇよ、バカ!!」
「ほう、この兄に向かってバカとか言うか…。」
兄貴の目が光る。
「わわっ、冗談!冗談だって!お兄ちゃん!!」
兄貴がリビングに入ってきて、俺の座るソファまでやってくる。
逃げようとしたが時既に遅し。足を掴み取られてツボ押し。
「ぎゃぁぁぁっ!痛てぇって、兄貴!やめろっ!!」
「ほう、これは胃がかなりやられてるな。肝臓もか?未成年が酒なんか飲んでるんじゃないだろうな?」
「の、の、飲んでませんっ!俺が不健康なのはわかったから、もうやめて!!」
「わかったのならよろしい。そうだな、俺の机の上に万歩計があるから、それ着けて歩いて来い。」
「えぇ?万歩計??なんでそんなの持ってんだよ?」
痛い足をさすりながら聞く。
「あぁ、忘年会のゲームの景品。使わないけど、捨てるわけにもいかないし、あげる人も居なかったから。」
「ふーん…。ま、いいや、じゃあ音楽聞きがてら、ちょっと公園にでも行ってくるか。」

久しぶりに入る兄貴の部屋。
昔はもっと乱雑で煙草臭かった気がするけど、大学に入ったあたりから小奇麗な部屋になった。
家具も買い換えられて、整理整頓が行き届いていて、ホテルの部屋みたいだ。
「教師の鑑ってヤツか…。昔は不良だったのに。」
机の上を見て、あれ?と思う。
写真立てが置いてある。裏向きに。そっと手にとって表を見る。
あ…、兄貴と女の人…。彼女かな?
そういえば、初詣の後、相葉の姉貴がそんなことを言ってたな。兄貴は逃げられたって言ってたけど、この人が?
どこかしら、桜に似ている気がする。仲良く肩を寄せ合って写っている二人。
兄貴が優しく微笑んでいて、彼女も嬉しそうで、とても別れそうには見えない。
「ん?」
写真立てが置いてあった場所の奥に小さな箱があった。
写真立てを置いて、そっと箱を手に取る。開けてみると指輪ケースと思しき箱が入っていた。
「ダイヤモンド??」
指輪ケースを開けると石のついた指輪が入っていた。そっと指輪を抜き取ってリングの内側をみる。
『Tsukasa to Natsuki』
司からナツキへ…。これって婚約指輪なんじゃねぇの?兄貴、かなり本気だったんだな。
摘んだ指輪をTシャツで拭ってケースに戻す。
箱を元通りにして写真立ても元に戻したその瞬間、ドアが開いた。
「竜士?」
「あっ、兄貴。」
「万歩計、見つからないのか?」
「え?あぁ、どこだよ?」
「あれ?机の上にないか?…あるじゃないか、目の前に。」
「あぁ、これ??時計かと思った。」
「あんまり、人の部屋を物色するなよ。」
「…ごめん、兄貴…。」
俺の視線の先を見て、兄貴が言う。
「ん?…あぁ、それ、見たのか?」
「ああ…。」
「彼女も白薔薇から慶応に行ったんだよ。俺の一個後輩。」
「付き合ってたんだろ?」
「ああ。結婚するつもりだった。」
「いつ?なんで結婚しなかった?」
「えぇっと、大学三年から付き合いだして、就職した最初の夏にプロポーズするつもりだったんだけど。」
「兄貴なら振られたりしないだろ?」
「はは、そうだな。振られたんじゃない。…彼女、事故で亡くなったんだ。」
「え!?」
兄貴が穏やかな顔で俺を見ている。
「ええっと、兄貴が就職した時……俺は中三か…。そんなこと全然知らねぇぞ!?」
「そりゃ、誰にも言ってないからな。学校にも家族にも友達にも。奈月の友達はもちろん知ってるけどな。」
「そんな…。兄貴、指輪、まだ大事に…。」
「えぇ?指輪まで見たのか?お前ってヤツは…。」
くすっと笑って言う。
「まだ奈月が忘れられないんだ。奈月を過去にできたら、その指輪を奈月に渡す約束なんだよ。」
「兄貴…。」
「ま、俺もまだ若いから大丈夫。そのうちまた、いい出会いがあるさ。」
「…桜みたいな?」
「え?あぁ、谷本さんね。確かに彼女、奈月に似てるね。なんとなくだけど。」
「でも、アイツは草間のモノだからな。手ぇ出したらいくら兄貴でも許さねぇぞ。」
「おやおや、かなりの入れ込みようで。お前だって、彼女のコト、好きだったんだろう?いいのか、他の男に取られたままで。」
「いいんだよ、俺のコトは。桜が幸せだったら良いんだ。それに、草間のコトも嫌いじゃない。」
「ふふ、大丈夫。
確かに、彼女に初めて会った時、これは神様がくれたチャンスなんじゃないかって思った。
彼女が俺のコトを好きになってくれたら…、草間君ももっと情けない男だったら…、と思ったけれど。
やっぱり彼女は奈月じゃないし、俺は奈月の代わりが欲しいわけじゃない。」
「…。」
「いつかちゃんと、俺が心から大事に思える人が、そして俺のコトを大事に思ってくれる人が現れると思うから。」
「…。」
「んー。もうすぐ現れると思うんだよな。…よく当たる占い師にでも見てもらうかな。」
兄貴が手を組んで上にあげ、背伸びをしながら言った。
「なんだよ、それ。」
「なんかそんな気分なんだよ。よし、竜士、相葉君に連絡取って。」
「えぇ!?意味わかんねぇ!」
「ほら、いいから。彼のお姉さんが良く当たる占い師なんだよ。」
「えぇ、知らねぇし…。ええいくそ、桜に聞けばわかるかな…。」

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1.よく当たる占い
<6.閻魔帳 8.新しいスタート>
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