2010/11/14  2:35 | 投稿者: おるん

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◇◆◇4.意外な一面

高校に入ってから、休みの日にはちょくちょく、電車や自転車でターミナル駅まで出掛けるようになった。
この駅の近くにお気に入りのシフォンケーキ屋がある。綾乃に教えてもらって以来、月に一度は来ていると思う。

今日は本屋で問題集を物色して、図書館で予約していた小説を借りる。
「そういえば、この前の巻にクラシック音楽が出てきていたな…。」
どんな曲なのか気になってCD屋に寄ることにした。
CD屋など滅多に来ることがない。ポップスや洋楽オムニバスなんかの試聴コーナーを通り過ぎてどんどん奥に進む。
あれ?今、見覚えのある髪色が…。
「竜士ぃ、これなんかどう?」
「ん?あぁ、こっちのが良くねーか?」
「あぁ、良いかも!」
その赤髪の後頭を見る。女といちゃいちゃ、CDを試聴していて、こちらの気配に気付くそぶりもない。
綾川も連れている女もチャラい格好。バンドを組んでいるという噂を聞いたから、バンド仲間なのかもしれない。
女の方が綾川にベッタリ。でも綾川もそれが自然なようで嫌がっていそうではない。
付き合ってるのか…。…そりゃそうか、高校生だもんな。彼女が居たっておかしくはない。
彼らに声を掛けることなくクラシック音楽コーナーに向かった。
「えぇっと、確か、ヤナーチェクだったと思うんだが…。」
CDを見つけて手に取る。
近くに人の気配がして、そちらを見ると、綾川だった。
「!?」
手に取っているCDはペール・ギュント。
意外だ。コイツもクラシックを聞いたりするのか…。
まだ気付いていない様子だったので、知らん顔してその場を離れる。

会計をしていると、後から声を掛けられた。
「よぉ。」
「…なんだ、君か。」
「お前も音楽なんか聴くんだな。」
「…たまにはな。そっちこそ、クラシックなんて柄ではないだろう?」
「なんだ気付いてたんじゃねぇか。」
「…折角気付かなかった振りをしてやったのに。」
「あんなに傍にいて声掛けねぇのもどうかと思うんだけど?」
「そっちはデート中だろう?」
綾川が自分の後を親指で指す。彼女は試聴CDに夢中だ。
「良いんだよ。いつもあんな感じだから。」
「…俺はこれで失礼する。ではな。」
「お、おい!?ちょ、待てって!」
綾川を置いて去ろうとしたが、肩を掴まれた。
「なんだ?まだこれから行くところがあるんだが。」
「お前、ロック聴いたりするか?」
「…まぁ、たまにTVくらいでは見るが。」
「ライブハウスのチケットのノルマがあるんだよ。」
「…ほう、それを買えと?」
「次の日曜だ。ホントは二千円なんだけど、千五百円でどうだ。」
「…二千円で買ってやる。貸しだからな。」
綾川に二千円を渡してチケットを受け取る。場所はこの近くのライブハウスだ。
一人で行くのは気が引けるが、かといってもう一枚買える程の持ち合わせはない。
この後ケーキ屋に行くつもりだったのに、二千円の出費は流石に堪える。
平静でいるつもりが、少し顔に出てしまったらしく、綾川がこんなことを言い出した。
「悪いな、これから買い物だったのか?」
「まぁな。でも今日は止めにして家に帰る。」
「そうか…悪いな…。じゃあさ、今からライブハウスに行かねぇか?」
「なんでそうなる!?」
「ほら、どんなトコかわからねぇと来づらいんじゃね?
それに、オーナーがもう一枚くらいタダ券くれるかもしんねーし。そしたら、彼女連れて来れるだろ??」
彼女…そんなものは居ない。仲の良い友達というものも居ない。誘うとしたら、綾乃だが…。
「お?草間もそういうヤツが居るのか!意外!!」
「う、うるさい!!」
思わず顔が熱くなる。綾川のヤツ、ニヤニヤしながら俺を見やがる。
そのまま綾川もCDを数枚買って、試聴コーナーから彼女を連れてくる。
「コイツ、北河原恭子。バンド仲間なんだ。で、こっちはウチの高校で隣のクラスの草間薫。」
「よろしくね。」
「あぁ、こちらこそ…。」

一緒にCD屋を出て、ライブハウスに向かう。そこで彼女と綾川が色々喋っている。
「竜士、こんな真面目そうな友達居たんだ!意外!!」
「悪かったな、俺は不真面目で。」
「白薔薇だもんね。そりゃ、みんな真面目なお坊ちゃま、お嬢様ばかりだよね。」
「そうでもねぇよな?草間。」
「…そうだな。少なくとも俺は坊ちゃんじゃない。言うほど真面目でもないしな。」
「おいおい、お前が真面目じゃねぇなら俺はなんなんだよ?」
「…さあな。案外、真面目にしようと思えば真面目にできるんだろう?」
「けっ、学校なんか面倒くせぇだけだぜ。」
「ふふふっ、仲良いね、二人とも。」
「「どこが!!」」
あ。嫌な被り方をした。本当に仲良しみたいじゃないか。

ライブハウスに入って、隅のカウンター席に座り、彼らの練習を見ていた。
マスターが声を掛けてくれて、竜の友達なら、とコークを奢ってくれた。
「竜のヤツ、ちゃんと学校に行ってる?」
「え?あぁ、いや、まぁ、そこそこは…。」
ほのかにレモンの味がするコークを飲みながら話す。
「アイツ、学校サボってやがるな。出入り禁止にしてやろうか?」
「え?あ!でも、遅刻だけどちゃんと来てます!」
「遅刻!?やっぱちゃんと行ってねぇんじゃねぇか!」
あぁ…要らぬ事を喋ってしまった…。
「君は真面目そうだよな。竜が学校の友達連れてくるのも初めてだけど、まさかこんなに真面目な友達が居るなんて。」
友達…。なんか変な感じだ。そんなに仲が良いわけでもないし、春に知り合って、まだ半年くらいでほとんど喋ったことも無いのに。
「綾川は学校では浮いてるけど、良いヤツですよね。真面目にしたら真面目に出来るヤツだと思うんですが。」
「ふふ。なかなかよく見てるじゃん。」
「学校の先生とも、不良止めたらいいのにって。」
「まぁ、止めねぇだろうな。アイツ、期待されんのが嫌なんだよ。」
期待されるのが嫌…。バンドなんかやって、目立ちたがりなんだと思っていた。人々に注目されて期待されたい人種だと思っていた。
俺も期待されるのは苦手だ。
俺の場合は、期待されたくて仕方なくて、でも、結局期待に応えられなくて絶望したんだが。もう、絶望したくないから期待されたくない。
もしかして綾川も過去にそんなことがあったんだろうか??
今日は綾川の意外な一面をたくさん知った…。

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1.本の虫
<3.生徒会へ 5.兄弟>
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2010/11/10  0:04 | 投稿者: おるん

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◇◆◇3.生徒会へ

夏休み明けに高校に入ってから初めての全国模試を受けた。
その結果に驚いた。

まず、自分の成績。なんと、全国一位を取ってしまった。
今までも三桁位の順位は取ったことがあったけれど、一位は初めてだ。
満点だったから当然で、きっと全国に一位のヤツはたくさん居るはずなのだが。
学校でも初めてのことだったらしく、職員室に行くと色んな先生から声を掛けられた。

それから、あの綾川竜士の成績。流石、綾川先生の弟だけあって、馬鹿ではないらしい。
見た目、おおよそ優等生には見えない彼。
一学期の中間考査、期末考査も学年十位以内だったけれど、全国模試でも校内で学年六位に食い込んでいるらしく、実力は本物らしい。
彼は職員室には近づかないけれど、彼も職員室ではよく噂をされている。

数学の山中先生が言っていた。流石、綾川先生の弟だと。
聞くところによると、綾川先生も白薔薇学園高等学校の卒業生だとか。
山中先生はここだけの話だと教えてくれた。
「綾川も在学中は不良で授業なんかまともに受けていなかったな。
頭が良かったのは間違いないが、その綾川が先生になってここに戻ってきたことには驚いたよ。
確か、綾川の家は祖父の代から白薔薇に通っているとかで、弟が入学してきてもなんら不思議はなかったんだが…。
入試の時には大人しそうにしていたのに、入学してきたらアレだ。これまた絵に描いたような不良で笑ったよ。」
山中先生の言うことがにわかに信じられなくて、呆然としていたら、こう続けた。
「生徒会室の資料室に、卒業アルバムがあるぞ。生徒会役員に立候補するなら見せてやろう。
草間、中学でも生徒会長をやっていたんだろ?悪い話じゃないと思うが。」
ちょうど生徒会役員の選挙期間だった。
アルバムも見れるなら見たいし…。生徒会か…確かに嫌いじゃない。綾乃も生徒会役員だし、悪くはない。
「わかりました。立候補します。」
「よし、決まりだな。
そうだな、今、総務の立候補者が居ないんだが、一年に総務というのもな…。榎本を総務に鞍替えさせるか。
草間は会計で立候補な。数学もできるし、几帳面そうだから大丈夫だろう。」
半ば強引に決められてしまったが、まぁいい。

そのまま山中先生に付いて、三階の生徒会資料室まで上がる。
生徒会室では役員達が体育祭の準備をしているらしい。
先生が生徒会室のドアを開けて役員を呼んだ。
「榎本!ちょっと来い!」
はい、と返事をして、一人、榎本と呼ばれた男子生徒がこちらにやってきた。
「何ですか、先生。」
「おう、生徒会に新人をスカウトしてきた。」
「は?」
「コイツだ。草間薫。今年の新入生代表で全国模試一位のツワモノだぞ。」
榎本さんと目が合って、ペコッと少し頭を下げる。
「へぇ…。で、何で俺を?」
「いや、お前、会計で立候補してたよな?総務に鞍替えしないか?で、コイツを会計に据える。」
「…まぁ、悪くないですね。」
榎本さんが俺の顔を覗き込む。
「…。」
「よろしくな、草間。俺は2-Cの榎本飛鳥だ。」
「…。」
「おいおい…。先生、こんなに愛想無しで大丈夫なんですか?」
さわやかに微笑みかけられて、どんな顔をすればいいかわからなくて、無言になる。
「ははは、多分…。なぁ、草間。」
「…な、何とか…。」
その後から、もう一人誰かがやってきた。
「先生、どうしたんですか…?あ!」
榎本さんの横から見覚えのある顔が覗いた。綾乃だ。
校内で見かけることはあったし、登下校も同じ時間になることはあった。でも、校内でこんな至近距離で対面するのは初めてだった。
なんだか物凄く照れる。
「な、なんだよ…。」
照れ隠しの俺を尻目に、綾乃が先生に語りかける。
「あれ?彼、もしかして生徒会に来るんですか?」
「あぁ、そうだ。なかなか優秀だぞ。」
「全国一位でしょ?聞きましたよ。」
「そうか、草間、お前、こんな美人のお姉さんに知ってもらえてるなんて、羨ましいヤツだな。」
先生が茶化して言う。
「美人のお姉さん…??」
綾乃と顔を見合わせ、二人沈黙した後、俺が耐え切れなくなって噴き出した。
「はは。どこが!」
「あ、笑ったな!こら!!」
綾乃が榎本さんの横をすり抜けて廊下に出てきて俺のわき腹を掴んだ。
「痛てっ!や、止めろって!!」
「謝るまで許さないから!」
「わ、悪かった!ちょっとは加減しろ!」
俺達のやり取りを見ていた先生と榎本さんは訳がわからず驚いていた。
「お前達…。」
「あ、あぁ、先生。彼は私の家の隣に住んでる幼馴染なんです!」
「あぁ、なるほど…。」
先生と榎本さんが呆気にとられたまま、俺達を見ていた。
「よし、じゃあ、生徒会に来たついでだ。帰り、家まで送って。」
「は?」
「ほら、段々日が暮れるのが早くなってきたから…。」
「ふむ…。仕方ないな。一緒に帰るか。」
「よしよし。ついでに何か手伝っていけば?」
「…こっちの用事が済んだらな。先生??」
俺に急に話を振られた先生が気の抜けた返事をする。
「あ、あぁ、さっきの約束のな。」

榎本さんと綾乃と別れて隣の資料室に入る。
山中先生が、キャビネットから卒業アルバムを出してくれた。
「確か、この辺の年だったと思うんだよな…。…3-Bだったよな…、あぁ、これだ。」
そう言って一冊、俺に手渡してくれた。
パラパラとアルバムをめくる。
『綾川 司』
集合写真には辛うじて参加したらしい。周りの生徒と溶け込むことなく浮いた存在だ。
個人の顔写真ではそれがもっと顕著だった。
透き通るような白い綺麗な肌に、端整な顔立ち。今と変わらない口元のホクロ。
思春期特有のものというか、世の中みんな敵と言わんばかりに眉間に皺を寄せた仏頂面で写っている。
今よりももう少しだけ若くて少年らしい雰囲気だ。
今と違うのは髪の色。綺麗な金髪に染めてある。元々の(今の)髪色も薄いから、違和感はそんなにない。
ハーフ(地毛)なんだよと言われれば信じてしまいそうだ。
他のページも見たが、先生が写っているところは他にはなかった。
クラスの寄せ書きがあったが、そこにも誰かが押したらしいゴム印の名前があっただけで、先生の自筆はなかった。
「意外だろ?でも、アイツ、高三になって図書館に入り浸りで。ウチの図書館の蔵書をほとんど読んだらしい。」
「へぇ…。」
「そんなこともあって、アイツを採用したんだ。ちゃんとやってくれるだろうって。」
「…。」
「弟も案外化けるんじゃないかな。見た目は不良だからウチの高校のイメージにはそぐわないけど、元は優秀だからな。」
「そうですね…、彼は案外いいヤツなんですよ。」
「ほう、草間がそんなこと言うとは珍しいな。」
「前、学校の近所の子供たちを遊んでやったりしてましたからね。あと、学校に住み着いてる野良猫にエサやってるところも見ましたし。」
「…アイツ、不良止めたほうがいいんじゃないか?」
「ええ。自分もそう思います。」

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1.本の虫
<2.正反対 4.意外な一面>
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