2010/9/27  0:02 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
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◇◆◇35.生徒会役員選挙 再び


いよいよ、薫君の会長三選が掛かった生徒会選挙。
私の応援演説さえトチらなければ、対抗馬が居ないから当選できると思うのだけど。
選挙管理委員会が舞台で話している。もうすぐ演説会が始まる。
舞台袖で出番待ちをしていると、彼が話し掛けてきた。
「桜、頑張ろうな。」
「うん…。」
「もしかして、緊張しているのか?」
「あ、当たり前でしょ!こんなにたくさんの人の前で話すのなんて初めてだもん。」
「そうだな…。まぁ、そういう俺も緊張しているのだがな。」
「そうなの?」
そう言って、彼が私の手を握った。微かに汗ばんで、震えている。
「武者震いというヤツだな。」
「…。」
「大丈夫だ。君は笑顔が良いんだ。ほら、笑ってみろ。」
「こ、こうかな?」
「…くくっ。少し不自然だが、それも良いだろう。」
「もう!」
「大丈夫だ。笑っているうちに緊張も解ける。」
そうしているうちに舞台から呼ばれる。いよいよ演説だ。

「皆さん、こんにちは。三度目の生徒会長に立候補いたしました、2-Aの草間薫です。」
彼は息を吸い、観衆に向かって目を見開き、挨拶をした。
そして、熱く、それでいて淡々と彼が演説をする。
「私が目指すものは、皆さんが充実した高校生活を送れる学校です。
これまでももちろん、これを目指して邁進してまいりましたが、引き続き皆さんのお力になれるように頑張りたいと思っています。
では何を以って充実することになるのか…。
学生の本分である学問のみならず、体育系、文化系の各クラブ活動、体育祭や文化祭などの校内行事、かけがえの無い一生モノの友人を得ることなど、高校生活の醍醐味はたくさんあります。
これらを生徒会でバックアップし、皆さんの高校生活をより良きものにしたいです。
私が掲げる公約は次の四つです。
その1.選択補講の科目拡充…主にセンター入試対策の一環として、三年次の授業では扱わない科目を中心に増やすように学校に働きかけます。
その2.クラブ活動時間の拡張…生徒の安全を確保するために活動時間が決められていますが、朝練や休日練習などの機会を増やすよう、学校に働きかけます。
その3.校内行事企画…通常の校内行事以外にも、季節ごとに節句や七夕、肝試しなどのイベントを企画、実施し、皆さんの思い出作りに貢献します。。
その4.目安箱の設置…これまでも設置されていますが、校則や設備の面に関しての不満を吸い上げ、必要なものについて学校へ交渉します。」
緩急を付けながら公約を述べた。彼の真剣な声、真剣な顔がかっこいい。
「最後に、私自身も皆さんの規範となるよう、益々精進していく所存です。どうぞよろしくお願いします。」
彼が一礼する。
一歩下がると私をマイクの前に促す。

「皆さん、こんにちは…。草間君の応援演説をさせていただく、2-Bの谷本桜です。」
緊張する。みんな私を見てる。深呼吸。笑顔だ…。
「私は昨年九月にこの白薔薇学園高等学校に転入してきました。
なので、私なんかよりも皆さんの方が草間君のことをよくご存知だと思うのですが、
あえて、私から彼の良いところを述べさせていただきたいと思います。」
私に反感を持っている人も居るだろう…。
私のことは嫌いでも良い。みんなが好きな彼のこと、みんなよりもちょっとだけ多く知っている。
みんなと同じように、いや、もっと。私も彼のことを好きだというこの気持ち、表現したい。
「彼は…、皆さんご存知のようにとても優秀な頭脳を持っています。
それに、本が好きで知識の量も豊富です。我が校の図書館にいる彼を見かけたことがある人も多いと思います。
だから、どんなに難しい問題集でも、彼の手に掛かれば瞬殺です。
もちろん日々の努力の賜物なのでしょうが、彼はそれを苦ともせず、要領よくこなすことができます。
よって、学校内に発生した問題も、彼の頭脳を以ってすれば、必ず良い方向に解決させることができるのではないかと思います。」
これはみんなが知ってる薫君。
「それから、彼は…堅物です。それはそれは頑固です。驚くほど公平に物事を捉え、時には冷徹な言葉も言ってのけます。
でも、彼は決して冷たい人なんかではありません。とてもとても優しい人なのです。
彼の家には犬が二匹居ます。そのうちの一匹は昨年九月に学校の傍で捨てられていた犬なんです。
今ではすっかり彼に懐いています。犬も彼の優しさが分かっているんです。」
これはみんなが知っているかも知れないけど、あまり知られてない薫君。
次はみんなは多分知らない薫君。薫君ってすごいけど、でもみんなと同じ高校生なんだよね。
「あと、このとおり、無愛想ですが…、笑うととても人懐っこくてかわいい顔をするんです。
意外ですよね?ほら、草間君、笑って?」
突然振られた薫君がびっくりしている。舞台の上とあっては怒るに怒れず、照れながら笑ってみせる。
「…今日は六割くらいでしょうか…。生徒会長に再選した暁にはきっと、皆さんに素敵な笑顔を見せてくれると思います。
ですから、是非、白薔薇学園高等学校を彼に任せていただけたらと思います。
絶対後悔させないと思います。どうか、草間薫君にあなたの一票をよろしくお願いいたします。」

みんなに一礼し、彼を見る。
いつもの無愛想な表情に戻っていたけど、その目は微笑んでいた。


◇◆◇


各候補の演説の後、投票が行われ、そのまま午後から即日開票作業が行われた。
終礼の時間に全校放送で彼の三選が報じられた。

終礼が終わって廊下に出た。同じく教室から出てきた彼の元に駆け寄る。
「おめでとうございます。生徒会長。」
「ありがとう。引き続き、手伝いを頼むぞ。」
「うん。任せといて。」
「ただ…、君の演説、とても良かったのだが、その。」
彼が眼鏡を押さえながらうつむいている。
「どうしたの?」
「クラスメイトや廊下ですれ違う生徒に『笑って』と言われ続けてだな…、困っている。」
よく見ると、耳が赤くて、恥ずかしそうだ。
「あはは…。ちょっとやりすぎちゃったかな?ごめんね…。」
「まぁ、そのうち静かになるか…。」
「でも、ホント、薫君、笑ったらすごくかわいいんだから。」
「男にかわいいとは、褒められているようには思えないのだが?」
顔を上げて私を見る。ちょっと怒ってる?
「うん…でも、かわいいんだもん。」
「ぐ…。」
弱みを見せることが少ない彼。困った彼をさらに困らせたくなっちゃう。
「そんな薫君が好きなんだもん。」
「なっ!!!こ、こんなところで言うなっ!」
一気に顔が赤くなって、口をパクパクさせながら怒ってる。
「照れた顔もかわいいの!」
「ば、バカ!からかうんじゃない!!」
これ以上からかうと本気で怒りそうだから、そろそろ止めておこうかな。

「…むぅ。じゃあ、生徒会室に行くか。みんなが作った引継ぎ資料の最終確認と、新年度の新入生歓迎会の計画を立てないと。」
「うん。」
二人でこの時間の廊下を並んで歩くのは久しぶりかもしれない。
これまでは騒がれるからと、わざと時間をずらしたり、違うところを通ったり。
今日の演説で、ある意味公認になったというか、薫君は私を見せ付けたいようにさえ思える。

「会長、笑って!」
「あぁ。今日だけで頼む。」
廊下での女子生徒の呼びかけにぎこちなく愛想笑いしている。
私がああ言っちゃったから、仕方ないよね。ごめんね。
「谷本さん、かわいいー。こっち向いてー。」
突然でびっくりした。私に男子生徒から声が掛かった。
「あはは、ありがとう…。」
とりあえず笑ってごまかした。
…もしかして、これか。彼が私を一緒に歩かせている理由。
一応、愛想良くしているけど、目が笑ってないもん。
確実にこれは『俺の彼女だから!』って男子生徒を牽制してるよね。
これは、ほとぼりが冷めるまで、大変かも知れない。

生徒会室に入る。
執務机に引継ぎ資料を広げて、薫君が読み始めた。
「桜、これ、君が読んでみろ。」
「なんで?」
「君一人で読んで、意味が分からなければ、新役員にも意味が分からないだろう。」
「あぁ、なるほど。」
「分かりにくいところがあれば付箋を貼って、指摘事項を書いておいてくれたまえ。」
そう言って、彼が席を立つ。
「どこ行くの?」
「職員室。クラブ顧問に渡しておいた新歓の出し物のアンケートを回収してくる。」
「行ってらっしゃい。」

彼が出て行って、一人きりの生徒会室。
執務机に座って黙々と資料に目を通す。
「うーん…。分かるんだけど、分かりにくいなぁ…なんでだろ??」
思いついたことをレポート用紙に書く。
しばらくして彼が帰ってくる。
「桜、どうだ?」
「うん…。大体分かるよ。でももうちょっと分かりやすくならないかなと思って、気が付いたことを書き出してみたの。」
「ふむ。」
彼がレポート用紙を手に取り、読み始めた。
「なるほどな。参考になる。永く居ると当たり前になってしまって、気が付かなかった。ありがとう。
…やっぱり、君も役員になってくれたら良かったのに。」
「…言ったでしょ?役員なんて似合わないって。私、手伝うし。」
「あぁ。そうだったな。…中手川と安田が来たら、早速伝えて作業しよう。」
「うん。」

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1.出会い
<34.ホワイトデー 36.桜の誕生日>
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2010/9/21  23:47 | 投稿者: おるん

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◇◆◇34.ホワイトデー


冬の寒さもだいぶ和らいで、暖かくなってきた。
小春日和に卒業式があった。式典には三年生と二年生が出席した。
送辞を生徒会長の薫君が読んで、答辞を副会長の榎本さんが読んだ。
仰げば尊しの歌を聞いて切なくなる。
式典の後、校庭でそれぞれが思い思い、集まって話をしたり、写真を撮ったりしていた。
クラブ活動をしていた人は後輩達から花束を貰ったりしている。

生徒会役員達も校庭で集まるというので、お世話になったし、私も薫君について行くことにした。
「榎本さん、結城さん、卒業おめでとうございます。」
「あぁ、会長。ありがとう。」
「榎本さん、はいどうぞ。」「結城さんも。」
晶ちゃんが榎本さんに花束を渡し、中手川君が結城さんに花束を渡した。
「おう、サンキュ。」「中手川君、ありがとう。」

「いよいよ、私達も大学生か…。あなた達も三年生なんだね。」
「結城さん、何をそんなにしみじみ…。」
薫君が感慨深げにした結城さんを見て言った。
「ん?生徒会、もう終わりだと思ったら寂しくて。丸二年、あっという間だったな…。」
「そうだな、草間なんか、最初、めちゃくちゃ生意気だったもんな。はは。」
「榎本さん!そんなことなかったでしょう?」
榎本さんに言われて取り繕う薫君。
「いやいや、無愛想で誰ともほとんど喋らないし。結城と幼馴染だって知らなかったからさ、何で上級生にタメ口なんだって。」
「あぁ、なるほど。」
薫君は仕方ないと後ろ頭を掻きながら言った。
「でも、会長、最近はだいぶ穏やかな表情をするようになったよね。」
と晶ちゃんが言った。中手川君がうんうんとうなずく。
「…それは谷本さんのお陰かな?」
「なっ!いや、俺は…!!」
結城さんに言われて反論しようとするも、結局言い返せない薫君。
こんな薫君を見れるのはこのメンバーだけ。結城さんが卒業したら、薫君にこんな風に軽口を叩ける人はいなくなると思う。
そう思うと少し寂しい。
「谷本さん、生徒会役員になるんでしょう?」
結城さんが私を見て聞く。
「あ、いえ…。私は今までどおり、外からみんなのお手伝いをしようと思っていて…、立候補しないんです。」
「え?」
結城さんだけじゃなく、榎本さんも中手川君も晶ちゃんも驚いていた。
「そうなの…。谷本さんならよく気が利くし、薫も仕事がしやすくなると思ったんだけど…。」
「…そう思ったんですけど、公私混同とか言われたら、余計邪魔になっちゃうかなと思って。
役員になっちゃったら、公私混同って言われても職務を放り出せないし、逃げ場なくなるじゃないですか。
外からだったら、身を引くこともできるから。」
「…そうね、外からでも十分に支えてくれるわよね。」
みんなの雰囲気がしんみりしてしまった。
「やだ、暗くなっちゃいましたね。先輩達の門出なのに。ほら、写真撮りましょ!!」
みんなで交代で写真を撮った。そして先輩達は謝恩会が催される食堂へ行った。


◇◆◇


残った四人で校舎に入る。
選挙管理委員会が発足されて、職員室横の掲示板に生徒会役員選挙の告示がされていた。
告示を見た薫君が他の二人に言う。
「よし、立候補の届出が必要だな。書類、貰ってくるか。」
「そうだな。俺は副会長になろうと思うけど、問題ある?」と中手川君。
「いいや。安田は?」
「問題ないよ。私は総務に立候補するけど大丈夫?」
「想定どおり。なぁ、中手川。」
「ああ。また一緒に生徒会できるといいな。」
職員室に入って、先生から書類を受け取って出てくる。
そこで彼が私に声を掛ける。
「…桜、立候補しないなら、俺の応援演説をしてくれないか?」
「え…でも…、私が応援したら、反感買わないかな?」
「君が、校内では一番、俺のことをわかってるだろう?」
「…できるかな?」
「大丈夫。桜なら。」
「うん。分かった。頑張るね。」
「よろしく頼む。」

翌週、立候補者が出揃い、選挙公示がされた。
会長・副会長・総務は薫君・中手川君・晶ちゃんが立候補。書記には二年生の女子と一年生の女子が立候補し、会計には一年生の男子と女子が一人ずつ立候補した。
公示には彼の公約が記されていた。
『文武両道、青春謳歌。かけがえのない高校生活をバックアップ。』
一週間後、いよいよ選挙だ。


◇◆◇


放課後、彼が教室にやってきて、声を掛ける。
「なぁ、今日、寄り道していかないか?」
「?いいよ。どこに行くの?」
「まぁ、ついてくれば分かるさ。」

自転車の前籠に二人分の鞄を載せる。後ろの荷台に座るように促されて乗る。
「掴まってろよ。」
彼が自転車を漕ぎ出した。少しして知らない道になった。どこに向かってるんだろう?
「ねぇ、結構遠くまで行くの?」
「もう少しで着く。心配するな。」
自転車が止まったところは、彼の家。
「薫君のお家…?」
「今日が何の日か知っているだろう?」
「あ、ホワイトデー…。」
「ほら、上がって。」
「いいの?」
「あぁ。今日は弟も妹も居るけどな。」
そう言って彼がドアを開ける。
「お邪魔します…。」
「ただいま。」
彼の声に反応して、リビングから妹の梓ちゃんとココアとチョコが出てきた。
「薫兄!!お帰り!!…わぁ!!この人が薫兄の!??」
私を見てアワアワしている。彼と同じ黒髪で色白の女の子。目がクリクリっとして、元気でかわいい。
ワンちゃん達もアワアワ。彼にくっついてきた私が珍しいらしく、ココアはそわそわうろうろ。
チョコは私のことを思い出したのか、私の横で尻尾を振っている。
「梓!失礼だろう。ちゃんと挨拶しろ。」
「ご、ごめんなさい。…こんにちは。初めまして…草間梓です。」
「こちらこそ初めまして。谷本桜です。よろしくね。」
照れ隠しか、ぷいっと向こうに向いて、またリビングに入っていってしまった。
「しょうがないな…梓のヤツ。ほら、お前達も入ってろ。」
彼がため息をつく。お兄ちゃんなんだね。申し訳ないけど笑っちゃいそう。
彼が靴を揃えて家に上がり、ワンちゃん達を追い立ててリビングのドアを開ける。
彼の足に纏わり付いていた犬達が中に入ったのを確認して、梓ちゃんに話しかけている。
「穂は?…まだ帰ってない?そうか。…俺達は上に居るから、上がってくるなよ!」
梓ちゃんが何かを言ったようだけど聞こえなくて。
「ば、バカ!!変なコト言うな!!」
ドアをバタンと少し乱暴に閉めた彼の顔は少し赤かった。
ホント、仲良し兄妹なんだね。かわいい。
「…上に上がろう。」
うつむいた彼が私に言う。私も靴を脱いで揃え、階段を上がった。

彼の部屋に通されて、少し待つ。
部屋から出て行った彼が戻ってきた。
「今日はホワイトデーだから…。」
「うん…。」
テーブルの上に小さなケーキと思しき箱と紅茶のセットが並ぶ。
「ホワイトデーは、日本では飴菓子の組合が提案し、広まったとされていて、
返すお菓子はキャンディ、クッキー、マシュマロと種類が多い…。」
「へぇ…、薫君、やっぱり詳しいんだね。」
「返すお菓子にも意味が色々あるようだが、…実はこれがはっきりしない。
バレンタインからずっと調べていたのだが…その、す…。」
「す??」
「す…。…その、好意を意味するお菓子は地方によって違うという結論に辿り着いた…。」
「え?」
それって、もうそんなに照れて言うことでもないと思うよ、薫君。私も照れちゃう。
でも、一ヶ月も前から調べてって、嬉しい。
「…それで、まぁ、苦肉の策でこんなものを作ってみたんだが。」
「これ?ケーキ??」
「あぁ。開けてみてくれ。」
「うん。わぁ…すごい!生クリームにイチゴのトッピングまで!この琥珀色のは何?」
「それは飴細工だ。ただキャンディをあげてもつまらないからな。」
「え?ひょっとして…。」
この琥珀色のリボン、手作りなんだ…。すごい。
「…まぁ、食べてみてくれ。俺は紅茶を淹れよう。」
彼の作ったケーキをお皿に載せ、フォークを持つ。
「じゃあ、いただきます。」
そっとフォークを差し入れ、ケーキを切り出して口に運ぶ。
スポンジケーキの間にイチゴジャムが挟んであると思っていた。
「…ん…?」
なんだか、さくさくする。何だろう??
「…あ…!砕いたクッキーが入ってる!」
イチゴジャムと一緒に砕いたクッキーが挟んであって、イチゴジャムの甘酸っぱさと合う。
「ああ、どうだ?」
「おいし〜!」
「ふむ、良かった。それを思いつくのに二週間掛かったんだ。紅茶はここに置くぞ。」
彼が満足そうに笑ってる。ホントに嬉しい。その辺のお店のケーキよりもずっと美味しいよ。
「ありがと…。あ…、紅茶の上に白いハートが…。」
「手作りのマシュマロだ。砂糖の代わりに浮かべてみたんだが。」
「すごい…これ全部持って帰って眺めていたい…。」
余りの凄さに恍惚としてしまう。惚れ直しちゃう。
「お菓子は鮮度が命だ。できれば早く食べてくれ。その…来年はもっといいものを作るから。」
「え…。」
これより凄いもの?薫君、私、これで十分嬉しいよ。
「実はこれ以外にもお返しがある。
これだ。君がくれた本に対抗したという訳ではないのだが…。」
「あ…、『初心者でも簡単!お菓子レシピ』。」
「俺が毎日付きっ切りで教えてやれれば良いのだが、そういう訳にもいかないからな。」
「ううん、これを読んで勉強する。」
「…バレンタインでヤケドをさせてしまったからな。その責任は俺が負うつもりだ。」
「薫君…。」
責任って、結婚とか!?やだ!想像しちゃうじゃない。
「その…いつか一緒のキッチンで君とお菓子を作れれば…と思っている。」
「…じゃあ、私もこの本を読んで勉強しておくね。」
彼と結婚して、いつか一緒のキッチンで一緒にお菓子作り。幸せそう…。
「もし分からないことがあったら、いつでも聞いてくれ。」
「…うん。」
照れながら言う彼が愛しい。彼も、私との未来を想像したのかな?
「ん…?桜、口の端にマシュマロがついているぞ。」
「…えっ。」
「動くな、取ってやる。」
机の斜めに座っていた彼が手を床について、こちらに寄ってくる。
私の口を指で拭うのかと思ったら…そのまま私の口を舐めた。
「うん、甘いな。マシュマロ。」
好きって言うのに大照れの人がこんなことするなんて、もうよくわかんない。
「バレンタインは…君のチョコが一番嬉しかった。ありがとう。
これからも…、俺の傍に居てくれるか?」
「…うん!」
強引に攻めてくると思えば、控えめだったりするんだから。
あなたの方こそ、ハラハラして目が離せないよ。

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1.出会い
<33.鬼の霍乱? 35.生徒会役員選挙 再び>
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