2010/8/26  14:22 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
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◇◆◇ハッピーバースデイ 薫兄


昼間に俺の誕生日を彼女に祝って貰って、夕方家に帰る。
「ただいま。」
玄関に入ると、妹と犬たちがリビングから飛び出てきた。
「薫兄、お帰り!」
「梓か。他に誰か帰ってきているのか?」
「穂兄が帰ってきてるよ。父さんはまだで、母さんは準夜勤。」
「そうか、夕食を作らないとな…。俺は着替えてくるから、梓、ココアとチョコに餌をやっておいてくれ。」
「はぁい。ほら、おいで。」
梓が犬たちと一緒にリビングに入っていった。

二階の自室に上がって鞄を置く。鞄の中にある彼女からのプレゼントを取り出して机の上に置いた。
普段着に着替えて一階に下り、リビングのドアを開けた。
「さて、お前達、何が食べたい?…ん?」
何か食べ物の匂いがする。キッチンで穂と梓が何やら格闘していた。
「だ、大丈夫か?」
必死の形相の穂が答える。
「か、薫兄、お帰り。だいじょぶ、だいじょぶ!」
そう答えた端から梓が叫ぶ。
「穂兄!それ違う!」
カウンターで手元が見えないが、一体何を作っているんだ?
「お前達、何を?」
「薫兄はテレビでも見てて。今日、誕生日でしょ。」
なるほど。たまにはご馳走してくれると言う訳か。
激しく不安だが仕方ない。梓に背中を押され、餌を食べる犬たちが居るテレビの前に座った。
背後のキッチンからワーとかキャーとか悲鳴が聞こえて、何かを落とす音がしたりする。
この分だと、夕食にありつけるのは当分先になりそうだ…。
本当に大丈夫なのか?我が弟妹ながら、こんなに要領が悪いものかと心配になった。
普段、俺が全てやってるからな。家事も教えないといけないな。
まぁまぁ食べられるクッキーを焼ける様になった彼女の方が上手く料理するかもしれない。
…あぁヤキモキする!

小一時間ほど経って、いい匂いが漂い、静かになった。
「薫兄!お待たせ!」
梓の声で食卓に移動する。
「ほう、頑張ったじゃないか。」
食卓にランチョンマットが敷いてある。
その上にカレーライスとスプーンとフォーク、ゆで卵が載った野菜サラダに麦茶の入ったコップ。
「ん?これは?」
食卓の真ん中に大きなパンケーキ。
「普通のケーキが難しくてホットケーキなんだけど、林檎載せてみた。」
林檎の甘露煮を放射上に載せて焼いたらしい。なかなかどうして、結構美味しそうだ。
「へぇ、やるじゃないか」
「でしょでしょ?それは私が作ったんだよ。」
「サラダは俺が作ったんだからな。カレーは二人で作ったけど。」
得意気に話す二人がかわいらしい。
「あぁ、ありがとう。食べようか?」
みんな一斉に席に着く。
「薫兄、お誕生日おめでとう!」
「ありがとう。いただきます。」
「いただきます!」
久々に自分以外が作った夕食を食べる。家族は揃っていないけど、とても幸せだ。
「ふむ、中々美味いぞ?二人共。」
「やったね!」「よし!」
「これだけ作れるなら普段もたまには作れよ。」
「やだ。」「薫兄のが美味いもん。」
席に座る前にチラッと見たキッチン。色んなものが散乱して凄い事になっている。
…今しばらくは見なかった事にしよう。
きっと、夕食後、アレを全て俺が片付けをする事になるんだろう。
弟達にはまだまだ家事は無理だな。やれやれ。
満足気にしている二人を見て、食後の片付けに悪戦苦闘するであろう自分を想像すると笑いがこみ上げる。
「薫兄どうしたの?急に笑って。」
「え?いや、…良い誕生日だなと思って。」
「でしょ?」「だろ?」
食卓で笑う声が響いた。

−終−

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2010/8/26  14:20 | 投稿者: おるん

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◇◆◇ハッピーバースデイ 会長


もうすぐ夏休みも終わる、ある日の午後。
図書館で勉強する彼の背中を見つけた。
そっと背後から忍び寄って背中を叩く。
「わっ…。」
「うわっ!!」
思った以上に大きなリアクション。体を大きく震わせてシャープペンを落とした。彼の声が図書館に響いた。
シャープペンを拾い、振り向いた彼が私を視認した。
「まったく、君というヤツは。何を考えているんだ、ここは図書館だぞ。」
声のトーンは下げているものの、かなり怒っている声だ。
「ご、ごめんなさい。こんなに驚くとは思ってなくて…。」
「まぁいい。何か用か?」
「あ、あの、これといって用事はないんだけど…。」
「…。」
彼は勉強道具を片付け、席を立った。
「頼むから、勉強の邪魔をしないでくれ。」
そう言うと、私を置いて図書館から出て行ってしまった。

◇◆◇

誰も居ない生徒会室。
私用だが、少しくらい使わせてもらってもいいだろう。
机に勉強道具を広げて、勉強し始める。
暑い…。溶解しそうだ…。でも、流石にエアコンを使うのははばかられるな…。
蝉の声が聞こえる。まだまだ日も高く、窓の外の青い空には白い積乱雲が浮かんでいる。
「夏だなぁ…。…今日は俺の誕生日なのに…。」
忘れているのか…。休みの日に学校に居るくらいだから、覚えていてくれていると思ったのだが。

◇◆◇

彼を探して、生徒会室を覗くと彼が机に突っ伏していた。
机を挟んで彼の向かい側に立って、呼びかける。
「会長?」
「…ん??」
「会長、こんなところで寝てたら茹で上がっちゃいますよ?」
「あ、あぁ…。ありがとう。寝てしまっていたか…。」
突っ伏した机から起き上がると、私を見てむっとした顔をした。
「桜か…。邪魔をしに来たか?」
「う…、違うよ…。どうしたの?凄く機嫌悪い。」
「…。」
「…。」
「…どうして、今日は俺のことを会長と呼ぶ?」
「たまには、初心に帰るのもいいかと思って。」
「ふん。くだらない。」
彼が視線を手元に落として勉強をし始める。私はその様子をじっと見ていた。
「…。」
見つめられているのがわかっているのか、彼が照れはじめた。
「…用事があるなら早く済ませてくれ。」
「そう?じゃあ…。」
立ったまま机に手を付き、机越しに彼に顔を寄せた。

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…ちゅっ。
ガタガタンッ。彼が椅子を後に引いた。
「なっ、なっ…。突然、何するんだ!?」

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真っ赤な彼を見て、流石に私も照れる。
「あ、あの…。ほら、これ!」
鞄を開けてプレゼントを出して渡す。
「今日、薫君の誕生日でしょ?だ、だからっ!」
「あ、あぁ…。ありがとう…。」
彼がプレゼントを目の前にしてキョトンとしている。
「クッキー焼いてみたの。そんなに上手くないけど。」
彼が早速包みを開け始める。
「やだっ、ここで開けないで。」
「…手紙?」
彼が手紙を取り出して開いた。
恥ずかしい!
居ても立っても居られず、その場から離れようとした。
ついてきた彼が私の手首を掴む。
「手紙も嬉しいが、…その、直接、君の口から聞きたい。」
「〜〜〜!!」
恥ずかしくって声にならない。多分、顔も真っ赤だ。
「じゃあ、俺が代わりに声に出して読んでもいいか?」
私の手を引いて振り向かせ、意地悪そうにくすっと笑った。
「わかりました。私がちゃんと言います。……………!!」
い、言えない!!
「どうした?」
彼は益々、嬉々としてこちらを見つめている。
「もう!薫君の意地悪!!…私、薫君が大好きなの。これからもずっと一緒に居て。」
彼の胸に抱きついた。頭上で彼の声がする。
「ふふ。ありがとう。…君はすごくかわいいな。」
「…。」
「君が俺の誕生日を忘れているのかと思ってイライラしていたが、照れた君の顔を見たら幸せな気分になった。」
…ちゅっ。
彼が胸から私を引き離してキスをした。
「バカ。忘れるわけないじゃない。おめでとう、薫くん。」
「ふふ、そうだな。君が忘れるわけないな。好きだよ、桜。」
もう一度彼の首に腕を回して抱きついた。彼も私を抱きしめてくれた。
暑い暑い夏の日だったけど、彼の温もりだけが心地良くて、蝉の声も暑さも気にならなかった。

−終−
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