〜コネタ 567〜
クネクネな手すりの正体は?
最近、駅などの階段で、
クネクネと波のような形の変わった「手すり」をよく見かける。
変わった形なので、一見持ちにくそうだが、
重い荷物を持って階段を上がるとき、
この手すりがとても使いやすいことに気づく。
この手すりの名前は「クネット」。
筆者がこの名前を知ったのはクネットの故郷の地、
長崎県佐世保市だった。
この不思議なクネクネした手すりが
全国に広まっている秘密に迫ってみよう。
◇クネットの仕組み◇
普通の手すりは、斜めにまっすぐなので、
滑りやすい、力をかけにくい、
といった欠点がある。
それに対して、
クネットは「水平部分」と「垂直部分」がある。
これにより、握りやすく、滑りにくくなっている。
「水平部分」で「杖」のようにしっかりと体を支え、
「垂直部分」で「取っ手」のように体を引きつけることで、
従来の手すりより階段の昇り降りが安全で楽になるのだ。
安全な上、手にしっかりと力が入ることにより
膝への負担も軽減される、
ユニバーサルデザインな手すりなわけ。
なお、世界でこのような形の手すりはクネットだけとのこと。
(クネットは世界26カ国で、特許や実用新案を取得)
◇クネットの誕生◇
佐世保市も長崎市と同じく、坂が多い町。
そんな町で、
急な階段に手をついて昇り降りをしているお年寄りから、
「手すりにも水平部分が必要」
とヒントを得て、クネットは2001年に誕生した。
2004年には、「株式会社クネット・ジャパン」が設立され、
本格的に営業活動が開始。
順次、東京・大阪・福岡と支社が開設され、
全国へ普及への第一歩が始まった。
だが当初は変わった形への拒絶反応、高コスト、
そして前例(設置事例)が少ないことなどを理由に、
なかなか採用されなかった。
◇クネット普及とそのわけ◇
転機は2006年のバリアフリー新法施行と、
2007〜2008年のガイドラインの改定。
従来「手すりは2段設置しなければならない」とされていたが、
このとき
「クネットは1本で、直棒2段手すりと同等以上の機能性を持つ」
と認められた。
これにより、コストの問題もほぼ解決され、
多くの鉄道駅などでの本採用を皮切りに、
行政や民間の施設、
さらには集合住宅や個人の住宅での設置も進み、
現在の設置数は日本全国で約5万1000件となっている。
また、採用の理由も様々。
例えば学校では
「手すりを滑って遊ぶのを防止するため」
といった理由もあるが、
「ユニバーサルデザインの生きた教材」
という理由も大きいとのこと。
これは公共施設や企業の建物でも同じで、
その独特な形は、
多くの人々にユニバーサルデザインを意識させ、
また行政や企業の取り組みの姿勢を表すという意味でも、
メリットが大きいわけだ。
◇クネットはどこにあるのか?◇
クネットの設置場所の例をいくつかあげてみよう。
関東
六本木ヒルズ、アークヒルズ、新宿サザンテラス、明治神宮球場、
東京国際フォーラム、デックス東京ビーチ、
京王永福町駅・調布駅、JR国分寺駅など。
関西
関西国際空港、道頓堀人道橋、京阪中之島線4駅、
阪神電鉄なんば線4駅、JRAウインズ梅田、
清水寺、石清水八幡宮など。
全国的に寺社での設置も進んでおり、
湯島天満宮、太宰府天満宮(福岡県太宰府市)、
岩津天満宮(愛知県岡崎市)、防府天満宮(山口県防府市)など。
なお、学問の神様、湯島天満宮では、
”滑らない”手すりということで、
クネットの水平部分に
「すべりませんように」
と書かれた絵馬がかけられていたこともあり、
このときは
「ラクラク(楽々)でラック(幸運)な手すり」
と、クネット・ジャパンの社内は
ダジャレで盛り上がったとか……。
(もがみ)
お世話になったのは、
「
http://www.excite.co.jp/」
エキサイトのコネタです。

0