〜コネタ 566〜
それでも「わらづと納豆」を売る理由
「昔の納豆は、わらに包んで作られた、
天然の納豆菌による“わらづと納豆”だったんですよ。
250〜300gの大容量を、
例えば家族6人で小分けにする食の文化がありました。
今、わらづと納豆を作っている業者は、かなり少ないですが」
(全国納豆協同組合連合会)
時代が移り、1人分ずつ食べられる利便性や、
生産・流通のしやすさなどから、パック入りの納豆が主流になった。
3パック100円以下でも買えちゃう、庶民の味方だ。
そんな今でも、わらづと納豆を作っている業者がいくつかある。
例えば東京都にある登喜和食品は、
都内で唯一、わらづと納豆を作っている納豆メーカー。
値段は525円で、正直言って納豆としてはぜいたく品だ。
その値段になる理由について、
登喜和食品の遊作社長に話を伺った。
「稲わらを使うので、1年分のわらを置いておく場所も、
わらを買うお金もかかりますよね。
また、他の納豆とは発酵室が別ですし、
その他の設備も必要になります。
それに手作業なので、あらゆる工程に手間がかかりますから、
他の納豆よりもはるかにコストがかかってしまうんです」
わらづと納豆を作る業者は、1950年代中盤に激減したという。
理由は、関東で次々に発生した、わらづと納豆による食中毒。
当時はわらの消毒として、
簡単にお湯に浸けるだけだった業者が多かったらしく、
納豆菌とともに雑菌も残っていた。
ネズミを媒介してわらに付いていたサルモネラ菌が、
食中毒を起こしていた。
それ以降、わらを消毒することが厳しく義務付けられ、
その設備に大金を投じなければならなくなった。
結果、多くのメーカーがわらづと納豆から離れていった。
現在全国に600前後ある納豆メーカーのうち、
わらづと納豆を製造しているのは数えるほどしかない。
「(登喜和食品では)
高温の蒸気と圧力で約1時間、滅菌処理をしています。
ただ同時に納豆菌も死んじゃいますから、
生き残る納豆菌は3〜4匹くらいですね。
そこから30分ごとの細胞分裂で、倍々に増やして、
二十数時間かけるんです。
また、その納豆菌を抽出し、培養して煮豆にかけて、
確実に納豆を作ってもいます」
このように、普通の納豆よりも作るのが大変な、わらづと納豆。
そのため、本来ならもう100円も200円も高い値段にしないと、
儲けは出ないらしい。
でも、納豆は庶民の食べ物。
高ければ買ってもらえない。
そこで、抑えられるギリギリの値段に設定し、
利益度外視で販売しているという。
じゃあ、それでもわらづと納豆を売る理由って何だろう。
「もちろん納豆本来の美味しさがある、
“ザ・納豆”というのを作りたいという理由もありますが、
一番の理由は、納豆をつくる技術がなくならないようにしたい、
ということです。
納豆本来の作り方である、わらを使い、
煮豆を入れて発酵させる技術を残したいんです」
各メーカーが行ってきた、
安い納豆を提供するための努力で、
庶民の食べ物であり続けている納豆。
その一方で、わらづと納豆を作り、売ることで、
文化を残そうという努力を行っているってわけだ。
ちなみに理由は、もうひとつあるという。
「納豆に使っている稲わらは、
新潟県の棚田の上の方や、宮城県の自然農法の田んぼで、
主に手で刈られ、干したものを使い、
むすんで頂いたものを農家の方から買い取っています。
このわら作りは、みなさん高齢な方がやってるんですね。
ですので、高齢者の仕事のひとつとして、
残しておきたいというのがあります。
手作業をすることで、ボケ防止も含めて、
高齢な方のプラスになればいいですよね」
1日に作ることができるわらづと納豆は、50〜60本ほど。
稲わらを作る農家に合わせた結果の上限だという。
(イチカワ)
お世話になったのは、
「
http://www.excite.co.jp/」
エキサイトのコネタです。

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