〜コネタ 62〜
日本人の知らない日本―「韓人民泊」に泊まってみた
韓国人が日本を旅する際に使うガイドブックを読んでいたところ、
本場の日本人である私も知らない単語が出てきて驚いた。
宿泊施設の項、ビジネスホテルやカプセルホテルよりも先に、
「韓人民泊(ハニンミンバク)」なるものが
真っ先に紹介されているのである。
韓国では『地球の歩き方』に相当するメジャーなガイドブック、
『100倍楽しむ』シリーズの東京編によると、
韓人民泊は主に韓国人が経営する宿泊施設であり、
新大久保などの韓国人街に多く存在するそう。
客室はおおむねドミトリー(相部屋)となっており、
お風呂やキッチンは共用。
宿泊費は1泊およそ2500円〜3500円とのことで、
これだけ見ると低価格が魅力の、
普通のゲストハウスと大差ないように思える。
ところで私の経験から話をすれば、
一般ゲストハウスは意外と日本人客が多い。
国際交流を期待して宿泊しても、
外国人に出会えずがっかりすることも多かった。
だがこの韓人民泊なら、
韓国人に囲まれ密度の濃い体験ができる違いない。
なぜなら、『100倍楽しむ』に出ている韓人民泊の名を
日本の検索サイトに打ち込んでみても、
ほとんど情報が現れないからだ。
日本向けには広報していないのだろう。
ここでなら、初来日のウブな韓国人と触れ合えるかもしれない。
早速、ハングルで書かれたガイドブックを見ながら予約することに。
韓国のテレビでも紹介されたことがあるというC民泊は、
宿泊数日前に電話したところ、すでに予約で一杯。
なかなか繁盛しているようだ。
どのような宿泊客が多いのか聞いてみたところ、
「大半は韓国人のビジネスマンや留学生で、
次にマレーシアなど東南アジアからのお客さんが多いです。
日本人も時々泊まりますね」
と答えてくれた。
次に電話したS民泊は、1日だけなら宿泊できるとのことで、
さっそく予約をお願いする。
「日本人がなぜウチを知っているのか」
と逆に質問されるほどで、否応なしに期待は高まる。
当日、ガイドブックに書かれた地図を見ながら
S民泊とおぼしき場所に行ってみるが、
それらしき看板はまったく見つからない。
再び電話すると主人のおばさんが現れ、
やはり看板のない10階建てマンションの一室に案内してくれた。
そこはダイニングキッチンを中心に、
ユニットバスと和室2つがある、一般的な2DKの住まいだ。
設備は新しくないが、日当たりは良く不衛生ということはない。
6畳の和室には2段ベッドが2組置かれ、
そのうちひとつが私の場所ということだ。
なお、もうひとつの和室はすでに先客がいるようで、
おばさんが扉越しに韓国語で何か話しかける。
おばさんによると、宿泊客の大多数が韓国人旅行者なのだが、
ごくまれに受験などで上京する日本人も訪れるという。
韓国語のサイトはあるが日本では一切告知をしておらず、
ここに来る日本人は口コミでこの宿を知るのだそうだ。
部屋は一見すると日本のそれなのだが、
ところどころのディティールが韓国仕様で興奮した。
壁に貼られている注意書きはすべて韓国語。
ダイニングには自由に使えるパソコンが一台あるのだが、
キーボードの上にはハングルが並ぶ。
炊飯ジャーには炊いたお米が、冷蔵庫にはキムチが入っており、
自由に食べてよいというのもいかにも韓国式である
(韓国の学生向け下宿にはこうしたシステムが多い)。
さらに夜眠るとき、ベッドの布団がやけに薄いなと思ったら、
敷布団は電気で暖まるものだった。
これなんかも、家にオンドル(床暖房)は
当たり前の韓国人らしい選択である。
同じ部屋の宿泊客はその日私だけで、
隣の部屋の人は、気配はするれども一度も現れず、
結局ウブな韓国人とのコミュニケーションは実現できなかった。
それでも日本の一角に、
韓国を切り取ったような小さな空間があるということが、
私にとっては新鮮であった。
東京最安値というわけではないが、新宿からのアクセスも良く、
なかなか使える韓人民泊。
プチ韓国旅行を体験しに、また泊まってしまいそうである。
(清水2000)
お世話になったのは、
「
http://www.excite.co.jp/」
エキサイトのコネタです。

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