国立国語研究所編「日本語の大疑問 眠れなくなるほど面白いことばの世界」(幻冬舎新書)を読みました。
国民のみなさんからメールや電話で国立国語研究所(略称 国語研)に寄せられた日本語に関する疑問・質問について、専門家たちからの回答をまとめた本です。
私はこういう本は好きで、北原保雄著「問題な日本語」シリーズ4巻なども読んだことがあります。
本書には「問題な日本語」のような面白いイラストは載っていませんし、少し論理的でかたい内容です。
ただし、ことばの正誤に関して裁定を下すことはしていません。
さまざまな言語との比較を通して日本語の特徴を際立たせています。
私が一番興味深く読んだのは、日本の元号についての考察です。
言語学的には「令和」は予想通りだったというのです。
過去の元号の約7割が2拍+2拍(長+長)で、その大半が慶応、大正、平成のように〔強弱強弱〕のリズムを持つのだそうです。
残りの多くは、明治、昭和のように2拍+1拍(長+短)で〔強弱強〕のリズムを持ちます。
さらに、江戸時代末期から160年間の元号は、文久、元治、慶応、明治、大正、昭和、平成と、〔強弱強弱〕と〔強弱強〕が交互に選ばれています。
すると、平成の次は〔強弱強〕の番です。
「令和」はそれに該当しています。
この「令和」ですが、「明治」と同じ頭高(高低低)のアクセントで発音する人と、「昭和」のような平板(低高高)のアクセントで発音する人がいます。
政府やマスコミ関係者は前者が多く、一般市民は後者が多いといいます。
元号に限らず、3拍漢語の多くは頭高アクセントで発音されます。
しかし、「昭和」は例外で、平板アクセントです。
これは「○和」だからだといいます。
平和、温和、緩和など、和で終わる言葉は平板アクセントになりやすいそうです。
「令和」もそうなので、平板アクセントになっても不思議ではないと結論づけています。
私が以前から抱いている日本語についての疑問があります。
集団の中では、しばしば出てくる用語(とくに外来語)が頭高アクセントにならず、平板アクセントになりやすいような気がするのです。
私はかつて鉄鋼メーカーに勤めていましたが、先輩達が「カーボン(炭素)」や「サルファー(硫黄)」を平板で発音するの聞いて驚いたものです。
「スカート」を平板に発音するアパレル関係者がいたような気がします。
テニスの上級者は「ロブ」を平板に言うようです。
かつて「ナイトクラブ」などの「
クラブ」は頭高アクセントですが、若者が行く「クラブ」は平板アクセントです。
SNSアプリの「LINE」も平板アクセントで「ライン」って言いますね。
「この『
ライン』(線)に沿って」だったら、頭高で発音しますよね。
ほかの事例をすぐには思い出せませんが、ときどき平板アクセントが気になることがあります。
隠語とは言えませんが、仲間内だという確認になるのでしょうか?
国語研に問い合わせてみましょうか。