昨年1月、三重県三重郡菰野町にある「パラミタミュージアム」に行きました。
そのときはじめて、小嶋千鶴子氏の名を知りました。
「パラミタミュージアム」は、小嶋千鶴子氏の私設美術館です。
池田満寿夫の陶芸(陶彫?)作品「般若心経シリーズ」の常設展示や回遊式庭園など、面白い美術館です。
東海友和「評伝 小嶋千鶴子 イオンを創った女」(プレジデント社)を読みました。
2018年11月に発刊された本です。
この時点で小嶋氏は102歳。
現在は104歳ということになります。
日本最大の流通業イオングループの前身はジャスコです。
その前は四日市市にあった岡田屋呉服店でした。
岡田屋呉服店の次女として千鶴子は生まれました。
11歳のときに父が心臓病で急逝しました。
後を継いだ母は、世界大恐慌の中、奮闘しましたが、千鶴子20歳のときに亡くなりました。
その後、姉である長女が店を取り仕切りましたが、彼女も千鶴子が23歳のときに亡くなりました。
残されたのは、千鶴子のほか妹2人と14歳の弟・卓也の4人でした。
当時、千鶴子には婚約者がいましたが、結婚は延期し、社長に就任しました。
戦争中の苦難の時代を乗り越え、30歳で、卓也に社長の座を引き渡しました。
卓也はそのときまだ早稲田大学の学生でした。
千鶴子は、その後も経営陣の一員として卓也を支えました。
とくに人事面で才能を発揮しました。
この本では、そういった千鶴子の人生は第1章にまとめています。
第2〜5章は、千鶴子の経営哲学や人事戦略などを詳細に論じています。
ですから、彼女の伝記というよりは、ビジネス書です。
カバーに「今まで僕が読んだ人事の本で最高の本」という柳井正氏の書評が載っています。
著者は、長年、千鶴子に仕えた側近で、パラミタミュージアムの創設にも深く関わりました。
したがって、第三者として千鶴子を描いているとは言えません。
彼女の経営哲学としながら、著者自身の考えを主張しているように見受けられる箇所も少なくありません。
また、いくらかは彼女を美化しているでしょう。
それでも、たぐいまれな女性経営者だったことがわかります。
今後、NHK朝ドラのモデルになってもおかしくないと思いました。