就職情報大手のリクルートキャリアが大学生を対象に、AI(人工知能)の発達でなくなる可能性があると考えた業種を複数回答で聞いたところ、「銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫」が59.4%と目立って高かった。次いで「生命保険・損害保険」(31.2%)、「証券」(29.0%)と金融業が続いた(日本経済新聞)。
オックスフォード大学の先生は、米国内の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高いと言っています。
AIは、人間にとって脅威なのでしょうか、より幸福をもたらす存在なのでしょうか?
NHKスペシャル取材班「人工知能の『最適解』と人間の選択」(NHK出版新書)を読みました。
まず、本書で取り上げているのは、電王戦。
トッププロ棋士がコンピュータと将棋の対戦をするものです。
将棋ソフト「ポナンザ」は、ますます強くなり、天才棋士と呼ばれる名人でも歯が立たなくなりました。
定石を覆す戦法がどんどん繰り出されます。
羽生善治氏が、「人間は絶対指さない手ですね。」と驚くほどです。
それでは、プロ棋士という職業はなくなってしまうのでしょうか?
AIタクシーは、すでに日本国内で走っています。
タクシー客の需要をAIが高い精度で読んでいくので、空車率が激減したのです。
導入したタクシー会社は、人手不足の昨今、大きなメリットを得ています。
しかし、その先、自動運転が普及すれば、ベテラン運転手の仕事を奪いかねません。
金融マーケットでは、AIトレーダーが膨大なデータを瞬時に計算し、未知の法則や答えを導き出しています。
東京株式市場の取引の8割近くがコンピュータによるものだそうです。
1000分の1秒単位の超高速取引は、当然、人間には不可能です。
歴代大統領が軒並み汚職で逮捕される韓国では、「AI政治家」の研究が進んでいます。
AIだったら、「最適な形で予算を配分し、効果的な政策を実現することができるのです。人工知能を使えば、国会議員が1年かかる仕事をわずか1日で達成できてしまいます。」
コンピュータが国を治めるようになるのでしょうか?
「人工知能の進化をどこまで許し、どこから許さないか、真剣に議論すべき時期に来ているのではないか。その進化のスピードは、社会の合意形成のスピードを圧倒している。残された時間は少ない。」
と、本書は警告しています。