自衛隊を活かす会・編著「新・自衛隊論」(講談社現代新書)を読みました。
はしがきによると、
正式名称は「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」といいます。
この「会」は、自衛隊を否定するのでもなく、かといって集団的自衛権や国防軍に走るのでもなく、現行憲法の下で誕生した自衛隊の可能性を探り、活かしていくための提言を行うことを目的に、2014年6月7日に発足しました。代表は柳澤協二(元内閣官房副長官補・防衛庁運営局長)で、伊勢崎賢治(東京外国語大学教授)と加藤朗(桜美林大学教授)が呼びかけ人を務めています。
本書は、カバーにあるように、3部で構成されています。すなわち、
第一部 「専守防衛」と「安全保障」の本質を考える
第二部 対テロ戦争で日本と自衛隊が求められる役割
第三部 集団的自衛権のリアリティ――防衛のプロが見た15の事例
であり、計16本の論考が収められています。
これらの執筆者は、上記3名を含む12名ですが、うち5名は防衛大卒で陸上幕僚長などの自衛隊の幹部であった人たちです。
最後に、あとがきにかえて提言を掲載しており、そのタイトルは、
「変貌する安全保障環境における『専守防衛』と自衛隊の役割」
となっています。
昨年、いわゆる安保法制が成立しました。
この本が発刊されたのは、2015年6月ですから、当然、その是非にも踏み込んでいます。
政府が提示した15事例は、海上、陸上、航空の3自衛隊の立場から、すべてリアリティが欠如していると一刀両断にしています。
最後の提言では、21世紀の世界は、冷戦時代とは異なり、グローバルな経済で国と国が結びついており、「米中や米ロが本気で戦争状態に入ることなど、真面目に国際政治に携わっている人なら、誰も真剣には想定していません。」
「日本のような国にとって必要なことは、紛争を未然に防ぎ、紛争が起きた場合にはそれをできるだけ局地的なものに限定しながら早期に収拾することです。専守防衛は、こうした日本の特性に最も適合した防衛思想であると思います。」
「日本は、テロをどうなくしていくかが焦点となる現在の世界において、世界でもっとも重要な役割を果たせる位置にいるということです。」
「現地の人に銃を向けない特別な軍隊というブランドを活かしていくべきだと思います。」
「日本が『敵』とみなされない『非戦のブランド』を守ることが必要です。」
自衛隊の実際を知り尽くした論者たちによるこの本は、まさに「日本の国防を考えるための入門書」であり、多くの人に読んでもらいたいと思いました。
