マーリーン・ズック著、度会圭子訳「私たちは今でも進化しているのか?」(文藝春秋社)を読みました。
原題は、“Paleo Fantasy”で、原始時代のライフスタイルをまねる健康法である「パレオファンタジー」を現実離れした幻想であると否定する本です。
「パレオファンタジー」を信奉する人たちは、私たちの体の中身は石器時代の人間と同じなので、当時と同じように生活をするのが、体にも心にも適していると考えます。
農業を始める前の生活ですから、穀物や乳製品は食べず、主に肉を食べます。
「糖質制限ダイエット」の源流です。
また、裸足に近い状態で走ったり、負荷の高い運動を短時間おこなうといったことも含まれるそうです。
このブログでも、夏井睦「炭水化物が人類を滅ぼす〜糖質制限からみた生命の科学」(光文社新書)や佐藤健太郎「炭素文明論 『元素の王者』が歴史を動かす」(新潮選書)、ディードリ・バレット著、小野木明恵訳「加速する肥満 なぜ太ってはダメなのか」(NTT出版)などを紹介しましたが、それらは、農業は人類の生活を改善しなかったと主張し、炭水化物をののしっていました。
しかし、この本では、まず、原始人の生活が安楽でも快適でもなかったと指摘します。
そして、旧石器時代から現代まで、人類は身体的に進化しなかったという思い込みが誤りだと主張します。
進化は、一般に信じられているより、はるかに速く起こっているというのです。
たとえば、著者はハワイに生息するコオロギの一種が、寄生バエから身を守るために、わずか20世代のうちに鳴かなくなったという事実を発見しました。
人類においても、ミルクを分解する大人のラクトース分解酵素が、牧畜生活が始まって以後に、急速に進化したといいます。
また、富士山頂より標高の高いところに住むチベット人は、たった3000〜6000年で、高山病にかからない体に進化したのです。
つまり、農業を始めてからの時間は、人間の体を進化させるのに短すぎるということはないのです。
ですから、「炭水化物は人類を滅ぼさない」と垂水雄二氏が、巻末で解説しています。
実は、この本を通読するのに、1ヶ月以上かかってしまいました。
晩酌のあと、寝床で読み始めるのですが、すぐ眠気がやってきて、読み進められませんでした。
内容はそんなにむずかしくなかったのですが、一般向けに面白がらせようとしすぎて、文章がすらすらと読めませんでした。
こんなに分厚くなくてもいいのに・・・
