つい先日、日本経済新聞の夕刊に「働かないアリに意義があることを北大研究グループが発見」というような記事が載りました。
あれ? それ、今、私が読んでる本の内容そのままじゃん!
長谷川英祐「働かないアリに意義がある」(メディアファクトリー新書)です。
たしかに著者の長谷川氏は、北海道大学大学院准教授です。
でも、この本が発刊されたのは、2010年12月31日。
2年も前のことです。
日経新聞記者にとっての“新発見”ということでしょうか?
ようやく昨夜、読み終えました。
読みやすい本なのですが、毎晩のように飲んで酔ってて、読書が進みません。(^_^;)
知的好奇心を刺激し、科学的見方を伝える好著だと思いますが。
本のカバーには、「社会性昆虫の最新知見に学ぶ、集団と個の快適な関係」とあります。
「社会的昆虫」とは、アリ、ハチ、シロアリなどのように、コロニー(巣)を作って集団生活するものです。
本の帯には、生物学者の福岡伸一氏の「サボっているやつがいる組織こそが強い」というお言葉が。
こういう昆虫の社会と人間の社会を混同させるような言い方は、私は嫌いです。
出版社は、本を売らんがために、こういった誤解を招くような推薦文(?)を載せたんでしょうね。
「よく働き、集団に貢献するアリと普通のアリとサボって喰わせてもらってるアリの比率は2:6:2である。
そのうちサボってるアリを排除しても、今まで働いていたアリの一部がサボり始めて、結局、元の比率になる。
会社も同じだ。」
な〜んて、言っちゃう中小企業経営者や経営コンサルタントがいたりします。
全然違います!
たしかに、著者らによるシワクシケアリというアリを用いた実験では、そのような現象が観察されました。
「よく働く」30匹の働きアリだけを選抜したコロニーでも、「働かない」30匹を選抜したコロニーでも(それぞれ女王アリは一緒にいます)、元のコロニーと同じような労働頻度の分布になったそうです。
でも、アリの社会と人間の社会、とくに会社組織を同一視するのは論外です。
アリの社会に、「上司」はいません。
決して「女王アリ」に命令されて働いているわけではありません。
(「女王アリ」は、実際には「女王」というより、「生む機械」です。)
「兵隊アリ」がいる種類であっても、彼らは巣の防衛や腹の中へのエサの貯蔵といった特殊な仕事の専門家で、分業をしているにすぎません。
アリたちは、みんな自主的に働いているのです。
みんなが一斉に、過労死するほど働くと、コロニーが壊滅します。
そうならないように、「働かない働きアリ」が存在するのです。
彼らは、条件次第で働き始めるのです。
この本は、あくまで社会的昆虫に関する研究結果をわかりやすく解説したものです。
人間社会との比較を目的とはしていません。
類似性を見つけ出す必要はないし、アリに学ぶ必要はありません。
怠け者を選んで社員にしたら、そのなかから優秀な働き者が出てきて、会社を繁栄させたりはしないでしょう。
やっぱり会社はつぶれると、私は思います。
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