この絵は、類人猿から原人、そしてホモ・サピエンスへという進化を示しているようですが、その先には、太った人間が・・・
全員、何か食べ物を持っています。
4人目は、おそらく右手にハンバーガーの入った紙袋、左手にはマックシェーク?
これは、ディードリ・バレット著、小野木明恵訳「加速する肥満 なぜ太ってはダメなのか」(NTT出版)の表紙の一部です。
原題が、絵の下にあります。
waist(ウエスト)とwaste(ごみ)の語呂合わせや、revolution(進化)とevolution(革命)をかけた言葉遊びに見られるように(って、英語なので実はピンときませんが(^_^;))、軽妙洒脱な筆致です。
なぜ、われわれは(私も含めて!)、太ってしまうのか?
人類の祖先は、もともと狩猟採取で食料を得ていました。
脂肪、塩分、砂糖などを含む食料は、なかなか手に入りませんでした。
これらに対して、強い欲求を持っていました。
そして、約4万年前、最後の氷河時代、飢えとの戦いに直面しました。
「脂肪を蓄積してエネルギーを蓄えた者や、不必要な運動を避けようとする者は、この厳しい時期を生きのびるのに有利だった。身体に脂肪を蓄えたり、脂肪分の高い食品を欲したりする遺伝傾向が培われてきたのはそのためだ。」
歴史家のジャレド・ダイアモンドは、農業を「人類史上最大の失敗」と断じているそうです。
狩猟採取民は、伝染病やけがを除けば、糖尿病、心臓病、がんなどにかからず、健康的でした。
食生活は、非常に多彩で豊かでした。
それが、農業や牧畜の普及とともに、不健康になり、また貧しい食生活になっていったのです。
著者は、アメリカ人であり、アメリカの実態を取り上げています。
「アメリカ人は急激なスピードで太りつつあり、疫学者たちは、2020年には全人口に対する肥満の割合が現在の3分の1から3分の2に増えると予測しており、国立衛生研究所(NIH)もこうした肥満の急増が原因で平均寿命が5歳短くなるという見通しを立てている。」
20年ほど前、アメリカに行きました。
どこの売店にも、棚には、さまざまな清涼飲料水が並んでいました。
その下段には、同じ種類・数のダイエット版清涼飲料水が並んでいて、驚きました。
「ダイエット・コーク」、「ダイエット・ペプシ」、「ダイエット・セブンナップ」、「ダイエット・スプライト」・・・
それなのに、なぜあんなに肥満体の人が多いのだろう?
第一は、食生活なんですよね。
私は、太りやすい体質です。
要するに、筋肉量が少なくて、代謝が悪いってことでしょう。
数年前から、ジム通い。
9キロの減量に成功しました。
その後は、じわじわとリバウンドして、半分近く帳消しになっています。(-_-;)
この本はダイエット本ではありません。
でも、やるべきことが書いてあります。
カロリー制限と運動です。
あたりまえです。
ただ、本当に肥満の場合、意志の力ではどうにもならないと著者は言います。
「薬物乱用者は有害なものにみずから手を伸ばしているのに対して、肥満の人は増えすぎた体重の犠牲になっているだけだという見方がよくなされる。だが、肥満の人も『薬物乱用者』なのだ。何かをたくさん摂取したがために、身体が大きくなりすぎて、階段をうまく上れなかったり、椅子に座れなかったりすることに、これ以上ぴったりの定義があるだろうか。」
彼らに必要なのは、「意志の力」や「身体に悪いものを垂れ流す社会を変えること」ではなく、「適切な治療」だそうです。
私は、(たぶん、)まだ「乱用者」の段階ではないので、「意志の力」で、体重を減らしたいと思います。