小さい頃のおはなし  気のまま家族

「小さい頃のおはなししてー」と毎晩写楽は言う。
一日も欠かさず毎晩である。
「お願い!小さい頃のはなしー。3歳以下!」と言うときもある。

自分が小さい頃どんなだったか、どんなかわいかったか、そういう話を毎晩本を読んで明かりを消した後に、必ずせがむ。
「そんなん毎日違う話を覚えてへんよー。」と言うと、
「同じ話でもいいのー。してー。う○ちの話、してー。」とくる。

写楽が、ゲラゲラ笑いながら何度もせがむ小さい頃の話とは、こうである。

写楽がまだ2歳になってすぐの頃、テコテコと私のところにやってきて舌たらずな声でこう言った。
「かあちゃん、きて。んこがあるのー。んこがあるから、きてー。」

え?今、なんとおっしゃいましたか?う○こがあるから来いと言いましたか?
見ると写楽は、お尻丸出しである。

言われるがままに、写楽のあとについて私らの寝室にはいっていく。
ウォークインクロゼット(洋服置き場)の中に、プラスチックの簡易イスがあり、な、な、なんとその白いプラスチックのイスの上に、「んこ」があったのだ。

「あのときの衝撃は忘れられへんわあ。」というと、写楽ゲラゲラ笑う。

トイレトレーニング中だった写楽は、おそらく私らの寝室のトイレに入ろうとズボンを脱ぎオムツをはずしたまではよかったが、ドアノブが回せずにトイレの中に入れなかった。
どうしよう、う○ち出ちゃうーと考え、クロゼットの中にあったイスによじのぼり、おそらくはイスの上でしゃがんで用を足したのであろう。
白いプラスティックが便座ににていなくも、なくも...ない。
母にそのことを言わなくては、このままこれをほっておくわけにはいくまいと幼いなりに考えたのであろう。リビングにいた母のところにやってきて、「んこがあるから、きてー」と言ったのだと思う。

「ひゃー」と思わず声が出た。

イスの上のモノをみて、私がまず思ったのは、近所の猫か犬がクロゼットに入り込んで用を足したのか?ということ。

そんなわけはない。
いたしたのは我が家の2歳児であることにすぐに気がついた。わははと思わず笑ってしまうできごとであった。


その話を現在5歳の写楽は、何度も何度も聞きたがるのである。
「う○こがあるから、やて!自分でしたんやんかー!おもしろい!」とゲラゲラ笑う。「でもえらいよね、自分でちゃんと言いにこられて、えらいよねー。」これも毎回母が言う台詞を先回りして言う。

この話は、50回以上写楽にしている。
でも、「毎晩の小さいときのお話してー。う○この話がいい。」とよくリクエストされる。

そうやって、自分がどれだけ愛されていたかを確かめているんだね。
愛していたよ。
今も大好きだよ。

今5歳の写楽は、自分でトイレにはいるが、大きいほうだった場合は「んこ、出たーぁっ!」と、母がトイレにやってきてふいてくれるまで、繰り返し叫び続ける。「自分でふけるけど、ママにふいてほしいんだもん。」だそうだ。

いつまでこんなことをするのか。
難儀なやっちゃ。

今のこのことも、何年かしたら小さいときの話になるのかな。
それとも、もう何年かしたら「小さいときの話してー」も「抱っこしてー。」も言わなくなるのかな。

小さいとき、きみはこんなかわいかったんだよ。
小さいとき、きみはこんな大事にされてたんだよ。
小さいとき、きみはこんなに愛されていたんだよ。
そして、今も大好きなんだよ、きみのこと。


小さいときの話をベッドの中でするのは、私にとっても確認であり充電でもある。

「小さいとき、○○(写楽の名)は、ゆりかごの歌が好きやったでー。ゆりかごの歌を歌ったらすぐに寝てしもた。これね、♪ゆーりかごーのうーたを♪(歌う)」

4番まで歌い終わったら、5歳の写楽も寝てしまった。
この歌の魔法はまだ効くのか。
明日は、昨日ゆりかごの歌をきいて一瞬で寝てしまった今日のきみの話をしよう。




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