
深夜、二人の男が精神病院からの脱走を試みて屋上に出た。
屋上から月光に照らされた外界は自由の世界そのもの。
まず一人めの男がジャンプし隣の建物になんなく飛び移った。
だけどもう一人の男はどうしても飛べない。転落するのが怖かったから。
先に飛び移った男が言った
『俺が持っている懐中電灯で光の橋を架けてやるから、歩いて渡ってこい』
もう一人の男が怒鳴り返す
『てめえ、俺がイカレてるとでもおもってんのか!?・・・・どうせ途中まで渡ったところで消すつもりだろ?』
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これはアラン・ムーア原作の『バットマン:キリングジョーク』というマンガのラストシーンでジョーカーが語ったジョークです。
バットマンとジョーカーは永遠のライバルで、共に(度を超えた正義と度を超えた悪)エキセントリックというよりはっきり言って狂人。
最初にこのキリングジョークというマンガに出会ったのはもうかなり前。当時俺が主催していた 『ロッキーホラーショー』のファンクラブにフランク秋友というヤツが在籍していました。
俺も秋友も女装したりコスプレしたりして映画館でハシャイだもんです。
その秋友、アメコミの大ファンでとくにバットマンに明るく、このマンガを購入してすぐに意気揚々と俺んチに遊びに来ると、日本語に翻訳しながら読み聞かせてくれました。
緻密なタッチで描き込まれたイラストと狂気の部分にスポットを当てたストーリーにすぐに引き込まれ、俺は無邪気な子供のように『それで?』『それから?』などと話の先をネダったもんです。
そして冒頭に書いたジョーカーの独白のジョークのラストシーンが終わると余りにカッコイイストーリーに思わずため息が漏れ、拍手喝采してお礼をしました。
今年このアラン・ムーア原作の『バットマン:キリングジョーク』の日本語版がめでたく刊行されました。しかも翻訳者は俺にこのストーリーを切々と読み聞かせてくれたフランク秋友です。二重にめでたく、すごくうれしいです。
彼がどれほどまでパッションを込めてこの仕事に取り組んだか想像が付きます。完璧と断言できる翻訳で、違和感なくストーリーに入り込めるので是非是非購入してみてください。
アラン・ムーアはジョニー・デップの主演で映画化された『フロム・ヘル』の原作者でもあります。

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