旅の前にもっと下調べをと思うのはいつもの事だが、ほとんどがバタバタと出かけてしまう。だからというわけではないけれど、家に帰り写真の整理をし、ガイドブックや持ち帰ったパンフなどを読み返す時間がとても好きだ。
月日はあっという間に流れ季節が変わってしまった。ドイツアルプスの残雪はもう消え、まだ若葉色だった木々も色濃く変化しているのだろうか。
そんなことに思いをめぐらせながらのまとめ作業は、たった4日間の旅を何倍も楽しませてくれた。
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森の中をアウトバーンがつき抜け、バスはドイツアルプス方面へと走った。3日目はいよいよ今回の旅の一番のハイライト、ノイシュヴァンシュタイン城へ向かう。
ミュンヘンを出発し1時間ほど経った頃急に山が見えてきた。ドイツで初めて目にする山並みで、頂にはまだたくさんの雪が残っている。
再び続く牧草地の、ところどころにもほんの少し残雪があった。
この地方独特の住宅シャーレーは、南側にバルコニーがあり壁には絵が描かれていてとても素敵だ。けれどバスは走っているので写真は取れない・・・残念。
1845年に生まれ19才でバイエルン王になり、中世への憧れを募らせたルートヴィヒ2世。彼はノイシュヴァンシュタイン城を始め次々と築城を手がけるが、完成したのは二番目の一番小さな城・リンダーホーフ城だけだったとのこと。
建築に17年の歳月をかけたノイシュヴァンシュタイン城は、王の突然の死でいまだ未完成。その歴史が割合に浅いことを恥ずかしながら知らなかった。
城の全景を見るために、まず城より高い位置にあるマリエン橋に向かう。
華麗な姿がそそり立ち、いまにも窓辺でシンデレラが手を振りそうだが、城をのせている岩山(1000m)のけわしさにビックリだ。その様があまりにも荒々しいので城の優雅さがさらに引き立つという感じ。まさにメルヘンの世界そのものが目の前に広がっている。
期待していた城内の見学はところてん式だった。入場制限があり、ようやく入れたのに各部屋の説明アナウンスにそって移動しなければならない。写真撮影も禁止で少々残念だが、後世に良い状態を残していく為には仕方がないのだろう。
王の夢が凝縮されたような各部屋は、フレスコ画も調度品もさすがに素晴らしかった。特に目を引いた寝室の天蓋の彫刻は、14人の職人が4年半の月日をかけ製作したというからすごい。
王座の間は吹き抜けになっていて、壁画もシャンデリアも威厳に満ちているのに、肝心な王座が完成する前に王がこの世を去ってしまったので未完成だ。王座が置かれるはずだった空間が物悲しくもある。
システムキッチンの先駆けともいえる台所には、オーブンや料理運搬用のエレベータなどがあり、当時の厨房としてはかなり斬新だったとのこと。王はメルヘンを追求するだけでなく、機能性も重視していたらしい。
ルートヴィヒ2世がメルヘン王とも言われた要因は、少年時代を過ごした同じアルプス山麓の城にあり、ここで中世への憧れを強めたようだ。外観がクリーム色のその姿には、ノイシュヴァンシュタイン城とはまた違う美しさがあった。
築城熱が国の財政を圧迫し、最後は精神を病んでいるという理由で軟禁状態に追い込まれ、41才で謎の死に至ったルートヴィヒ2世は、その完成を見られなかっただけでなく、この城にたったの172日間しか滞在できなかったとの事。一人の人として考えれば気の毒な結末・・・彼にとって築城は何のためだったのだろう。
ただ、現在のドイツにとってなくてはならない観光資源になっているのは確かだ。
果たして彼は、現在のノイシュヴァンシュタイン城の人気ぶりを予想していたのだろうか。
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あっという間にドイツでの最終日だ。
格安ツアーなのに、直行便で帰国という幸運に恵まれ、4日目午前中はフリータイムのおまけ付き。
喜び勇んで、娘とホテルから10分ほど歩いて地下鉄に乗った。昨日、ノイシュヴァインシュタイン城の帰りに立ち寄った、ミュンヘンでの探検第二弾だ。
風景や建造物などを観るのが旅の一番の目的だが、その国(土地)の風習や生活ぶりなどを垣間見ることも楽しいし勉強になる。
日曜日はスーパーやデパートはもちろん、ほとんどの店が閉まっている。静かな町並みの中、散歩やサイクリングを楽しんでいる人々は美しい景色に同化し、お陰で私たちもゆったりとした気分になった。
規則を守り良く働き真面目など、ドイツ人の国民性は日本人と似ているようだ。またドイツは職人の国ともいわれ、とにかく物が丈夫だそう。例えば車も頑丈なら信号も負けずに頑丈で、万が一追突しても両方ともビクともしないらしい。
娘とランチをしたレストランのウエイターさんもとっても親切で、今までの “ドイツ=固くてこわめ?”のイメージが消え去った旅となった。
「百聞は一見に如かず」 ダンケシェーン!ドイツ
(ドイツ4日間の記録は、jookoHPをごらんください。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~jooko/doitu1.htm)