弁財天様の姿が現れたとたん「ここまでしてくれるとは思わなかった!」と施主の露木さん。彩色と截金が施された美しいお像を目の前にし、他の方たちからも感嘆の声がもれました。
2008年5月に勢山社舞子工房で鑿入れ式が行われてから一年半後の待ちに待ったこの日。穏やかな秋晴れに加え、信貴山の色づき始めた木々までもが、まるで弁財天様の誕生を祝ってくれているかのようです。
聖徳太子御開山による奈良の名刹信貴山朝護孫子寺成福院には、弁財天像(秘仏・渡邊載方彫像)が納められています。
他にも、地下霊場の四国八十八ヶ所と西国三十三観音ご本尊の浮き彫りを制作するなど、ご縁が深いことから成福院の弁財天様の御分霊をいただけることになりました。また「信貴弁財天」というお名前まで授けられ関係者の方々は興奮の面持ちです。
長老様自ら導師を務めていただき御分霊を頂く儀式が厳かに終わり、一気に緊張が解けたのか皆さんの嬉しそうな顔といったらありません。
長老様の奥様も熱心に弁天様を見つめ、岩座に配された小さなお地蔵さんとお不動さんに気がつかれたご様子。特にお地蔵さんは船に乗っているので不思議に思われたようです。
それに気付いた露木さんが、引地川に関係した伝承を熱心に説明していました。
この弁天様は、施主の露木さんが数年前に相次いでご両親を亡くされたため、その供養のために発願し、菩提寺である藤沢市の成就院に奉納するもの。成就院の近くには、昔たびたび水害を起した引地川が流れており、川を鎮めることなども目的として勢山さんと相談し水に関係した弁天様を造顕されたとのことです。
儀式の後、勢山さんが彫り上げた長老様御染筆尊名額の裏に、開眼日のあかしなどを書いていただきました。
「成福院弁財天の妹が誕生し喜んでいます」と長老様。「多くの方のお世話になり、この日を迎えることができました」と施主の露木さん。「台座には、水が引地川を通じ相模湾に流れる様子も表現しました。露木家だけでなく、地域の人々の信仰も集める仏像になるでしょう」と勢山さん。「信貴山と深い縁で結ばれました。弁天様を通じ、たくさんの縁が結ばれ感謝しています」と成就院のご住職。それぞれの喜びが溢れました。
御分霊を頂いた翌日は、いよいよ藤沢の成就院に奉納です。檀家さんたちが見守る中無事に安置が終わりました。
成就院には近隣の小学生やハイキング途中の人々が多く訪れるとのこと。それらの人々を玄関でお出迎えする弁財天様は、この地の人気者になることでしょう。
