「姫路城が修理に入るらしいよ」と息子が一言。
来年(2010年)の春から本格的な修理が行われるため、5年間もの長い間あの美しい姿が見られなくなると聞いて、いてもたってもいられなくなった。
花盛りの夏の伊吹山にも行ってみたいと思っていたことが頭の中でクロスし、18切符の期間になっていたからなお更だ。
行かれる時にと思ったら即行動するのが最近の傾向。さっそくインターネットで情報収集に取り掛かった。
思い立って数日後、東海道線を乗り継ぎ関が原駅からバスで伊吹山へ、という予定で早朝に出発したけれど気がかりは天候。
太平洋側から湿った空気が流れ込み不安定な天候との予報に不安を覚え、乗り継ぎ途中の浜松で伊吹山へ電話をすることに。
雨の心配はなさそうなので、計画通りに伊吹山に行こうと決心がついた。
「景色が良く見えるから前にどうぞ」
たった一人の乗客に、運転手さんが親切に声をかけてくれた。バスは山道をぐんぐん登り、みるみるうちに下界が遠くなっていく。
平日の午後だから人が少ないかも・・・山頂が寂しい状態だったらどうしよう。と、少し不安に思っていたら前方に観光バスが見えたのでホッとした。
標高1,377mの伊吹山は滋賀県の最高峰で日本のほぼ中央に位置し、日本海型と太平洋型気候の堺にあたるので高山帯気象状況に似ているそうだ。
山頂の気温は、四季を通じて8〜10度低く夏は快適とのこと。7月中旬から8月の初めにかけて高山植物が咲き乱れ、晴れていれば、琵琶湖や濃尾平野までもが見渡せるというから楽しみだ。
50分ほどで到着。関が原駅に降り立った時の暑さが嘘のようだった。
「最終バスは4時20分ですから気をつけて」
山頂まで3つの遊歩道があるが、一番緩やかな西遊歩道コースを歩くことにした。40分ほどらしいから写真を撮りながら往復するのにちょうど良い。
伊吹山のお花畑は、信長がポルトガルの宣教師に薬草園を作らせたのが始まりという説もあるとか。今がハイシーズンというだけあって、さすがに花の種類が多いのでびっくりだ。
花々に覆われている山肌の向こうにぼんやりと琵琶湖が見えた。ぽっかり浮かんでいるのは竹生島だろうか。
電話で問い合わせた時は眺望が良くないと言っていたのでラッキーだ。
たくさんの花々に囲まれながら眼下に広がる景色を目にして、時間的な問題と天候のことで散々悩んだ末の計画だっただけに喜びもひとしお。
次回は一緒にと数人の顔が頭に浮かんだ。
さっと日が射したかと思えば、急にガスが湧き上がったりと山の表情は一瞬のうちに変わってしまう。
そんな景色や花々を撮っていたら、あっという間に2時間半が過ぎた。
最終バスに飛び乗ったらまたしてもお客は私一人。
走り出したとたんあたりは真っ白いガスにつつまれてしまった。
行きと同じくお薦めの席へ座った私に「どちらからですか?」と運転手さん。
18切符を使って電車を乗り継ぎ、8時間をかけ伊吹山にたどり着いたことを話すと、運転手さんは興味津々の様子。旅行談議で話が弾んだ。
さあ、明日は姫路行きだ。