足したら青春118切符?と友人にからかわれながら、鈍行での最長移動記録を更新すべく奈良へ向かうことに。
8月14日は、なら燈花会の最終日。この時期、しかも間際に切符がとれないのは解りきっているので、「いっそのこと18切符でのんびり行かない?」に、すぐにはOKしてくれなかった夫・・・言い出したのが突然だから仕方がないけれど。
古都奈良が、2万個近いろうそくで灯される燈花会(とうかえ)は夏ならではの風物詩だ。
真っ暗闇の中、猿沢池の向こうに興福寺五重塔が浮かび上がり、池のほとりのろうそくと木々のライトアップが、絶妙な光のコラボレーションをかもし出している。
カメラを取り出した私に、せっかくだからと呼び出し行動を共にしていた息子は、しばらく動きそうもない・・・と早々と見切りをつけてか別行動になった。
それにしても予想以上の人出で、誰もが灯りに誘われてのそぞろ歩きを楽しんでいるようだ。
夜の奈良公園界隈は初めてだが、さすがに鹿の姿は見られない。
水面に映る浮見堂がゆらゆらと揺れ、ぼんやりとした灯りが動いているが何だろう?
目をこらして見ると、小船にともされたぼんぼりだった。
素晴らしい演出に、それらを撮ろうとカメラを向けている人の多いこと。
私も例外ではなかったが、夜景撮影の難しさに直面という結果に。
ろうそくの灯りは、電気とはちがう優しさで私たちをも包み込み、それはそれは神秘的。
いくつかの会場では、自分の灯りをともす「一客一燈」で燈花会に参加することもできたようだ。多くのろうそくに灯りをともすことの大変さを思う反面、関わった人々の熱意を感じる。

「思い切って来て良かった」と、その光景を目にもしっかり焼き付けた。
18切符での旅は早朝出発で始まり、まず静岡行きに乗車だ。そのあとは行き当たりばったりといういい加減さ。何しろ夕方までに奈良につけば良いのだから。できたら気がむいたところで途中下車もしたいし・・・と、あれこれ考えるのも楽しい。
この頃は、18切符の活用法など様々な本も出ていて利用者が増えているらしい。車内で、小さな時刻表に見入っている人は多分仲間だろう。
伊豆へ釣りに行くという、向かい合わせに座った人たちと思いがけず話が弾んだ。
静岡から隣に座った女性は、私たちが18切符旅行者と知って、浜松の楽器博物館を勧めてくれたりと旅は上々の滑り出し。こういう雰囲気は何よりも嬉しい。
浜松と豊橋での乗り継ぎも順調だったので、名古屋で途中下車し名物味噌カツのお昼ごはんを。すでに出発から6時間程が過ぎていたが、意外とあきてはいない。
名古屋まで来てしまえば一安心。お腹がいっぱいになったせいか、亀山までしっかり寝てしまった。
亀山での乗り継ぎ時間に、改札口を出てみたらものすごい暑さだ。ジリジリと照りつける太陽があまりにも強烈で、すぐに涼しい車内が恋しくなる。
結局途中散策は無しにして、まっすぐ奈良に向かうことにした。
更に加茂で乗り換え4時25分奈良に到着。ろうそくに火が灯るのは7時だからまだ余裕だ。
あまりの陽射しの強さに、電車内のほとんどのブラインドが下ろされていたので、途中景色を眺めることはできなかったけれど、10時間かけての電車旅は思ったよりあっという間だった。
「強引(ing) my wayだね」
初めは乗り気ではなかった様子の夫も、灯りに包まれた奈良と、翌日には念願の吉野行きを果たし満足そう。
良かった!少々強引でも、しばらくはこの路線で行こうかな、と密かに心に決めている。