2007/6/2


楯ヶ崎

関西でどこが一番好きかと尋ねられれば、小生は間違いなくこの場所を挙げるだろう。
岩場としては、柏木とともに関西を代表できるエリアであるのに、ただの偶然であるのか、今まで自分たち以外に、他のクライマーの誰とも鉢合わせたことが無い。

都会から遠く、課題数が少なく、エリアとしての話題も少ないから、訪れるクライマーも少ないのか。

しかし仮にそうだとしても、それが却って楯ヶ崎の良さになっているのかもしれない。

岩登り自体、日常から非日常の中に己が身を置くものなのだから、
はっきりとそれを感じられる自然のなかに飛び込むのも、時には良いと思う。

ここにあるのは、
大きな海と、大きな空と、大きな岩塊と、
柔らかな陽光と、それを遮る雲と、それを運ぶ大きな強い風と、
釣師と岩師と、空を舞う鳶だけである。



この「はてな」というラインは、7.8年程前に京大ウォールのメンバーだった原さんやつよつよ君たちと楯ヶ崎を訪れた時に登った課題だ。
1級だったか初段だったか忘れたが、そうは難しく無い筈のこの課題に、強く心引かれ、皆で一抜けバトルをした日も今となっては良き想い出となってしまった。

レリーフ岩の向かいにある灯台下の4m弱のこの岩に、将に?の記号が掘り込まれてあるように見えるラインをダイレクトに登ろうとするのがこの課題だ。
ラインの中間部にガバカチがあるのだが、そこからどう進むべきか躊躇していた。

とりあえず小生は、無難に左抜けラインを選択し、ヌメルとやばいポッケを繋いで一抜けをした。
すると当時まだ年若いつよつよ君が、ガバカチから大きなデッドで右上方のリップを叩くというムーブをトライしだしたではないか。
小生もそれをやりだしたが、リップを取り損なえば、結構な滞空時間で飛び降りることになる。しかしムーブとしては、こちらの方がめりはりがあって、ラインも美しい。素晴らしいひらめきだ。
やめようと飛び降りさえしなければ、いつまででも居れる程のカチガバなのだが、
高さを考えると身体がどうしても萎縮してしまおうとする。それをこらえて、身体をリラックスさせて、集中してリップの一点を目指して大きく動くのだ。このライン取りが、一番シンプルであり安全でありまた、この課題を素晴らしいものにしていると思う。

果たして、このムーブで一抜けをしたのは、そのつよつよ君だった。

この男はいいものを持っているなと、その時初めて感じたのだった。

強い刺激を受けて、続けて小生もなんとかそれを決めることが出来た。


小生たちは、大きな満足感に浸りながらその日を終えたのだった。


しかし後日、
この課題が既登課題であることが判明した。その何年も前にミユキさんがオータはんと二人で訪れた時に、この課題を登っていたという。

それを聞いた時、ミユキさんへの印象が正直初めて変わったのだった。
ミユキさんといえば、小生が駆け出しだった頃に、岩場でもジャパンツアーでも関西を引っ張る役をしていた人であるが、
如何せん小生とは性格が合わなかったというか(失礼は承知ですいません!)、小生が心を開かなかった為なのだが、
普段からよく顔を合わすのにあまり一緒に登ったことがなかったのだ。

そのミユキさんが、この課題を熱い心で登っていたことを知って、素直に尊敬の念を抱くようになったのだった。

最近は、すっかりとげのなくなった様に見える優しいミユキさんだが、
想像ではあるが、
小生の心の中には、はてなを登る氏の熱い姿をいつでも思い描けるのである。



素晴らしいロケーションの中にあるこの課題を、
小生は、ミユキさんとつよつよ君抜きには語ることが出来ないのである。

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