2016/6/6

『VOLEZ VOGUEZ VOYAGEZ(旅するルイ・ヴィトン)』展  文化・芸術(展覧会&講演会)

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 先日、フランスのルイ・ヴィトン社主催で、ルイ・ヴィトン・ブランドの歴史を辿る、表題の展覧会を見て来ました。

 今回の展覧会はキューレーターに、パリ市立ガリエラ美術館・モードコスチューム博物館館長のオリヴィエ・サイヤール氏を迎え、観覧料無料とは思えない充実した内容で驚きました。

 写真は紀尾井町に特設された会場の外観。
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 平日にも関わらず多数の来場者で、場内は結構混雑していました。会場内は「写真撮影可」だったので何枚か撮ったのですが、混雑の中落ち着いて撮影できる状態ではなく、撮った写真の半分近くがピンボケでした

クリックすると元のサイズで表示します 実のところ、私はルイヴィトン製品をひとつも持っていません。理由は自分にとっては高価であることは言うに及ばず、ルイ・ヴィトンに合う高級服も持ち合わせていないし、それらが必要な場所に行く機会もない一介の庶民だからです。

 日本では猫も杓子もルイ・ヴィトン製品を持っている印象がありますが、ルイ・ヴィトンは本来「持つ人を選ぶブランド」だと思う(もちろん、「それならば、自分がブランドに相応しい人間になれば良い」と言う論も成り立つことは否定しません)

 確かに(ルイ・ヴィトン社が意図してのことか)、近年は、背伸びをすればどうにか庶民にも手の届くブランドにはなりましたが(世界を広く見渡せば、日本の庶民もそれなりに裕福と言うことなのかもしれません…)、元々は召使を従えて旅行するようなセレブリティが持つブランド。今回の展覧会では、図らずもそのことを再確認した形です。

 おそらく、今では多くの高級ブランドがそうであるように、セレブリティの為のフル・オーダーメイドと、一般大衆向けの量産ラインの二本立てで事業を展開しているのでしょう(製品が傷んだ際、きちんと修理に対応してくれるのは良いですね)

クリックすると元のサイズで表示します創業者のルイ・ヴィトン氏(1821-1892)は14歳の時に山間の故郷の村を、ひとりパリに向けて旅立ちます。2年後に漸くパリに辿り着いた彼は、「荷造り用木箱製造兼荷造り職人」の見習いとして、そのキャリアをスタートさせました。

 そして、それから17年後の1854年、パリで初めてオートクチュールが生まれたのと期を同じくして、自身の店を持ちます。これが今日のルイヴィトン社のルーツです。

 彼の作ったトランクのデザインは「頑丈でありながら軽く、機能的」で、程なく王族をはじめ著名人から、高い評価を得るようになったと言われています。

 「当時彼が考案した平らな蓋のトランクは、現代のラゲージのはじまり」と考えられており、「製品の模造を防ぐ為にファブリックや模様を使用」するなど創意工夫に溢れた彼のトランクは、「1875年、細部まで考え抜かれたデザインの縦型ワードローブ・トランク」(右写真)へと結実し、これによって彼は「旅のスペシャリスト」としての地位を確固たるものとしました。

クリックすると元のサイズで表示します そして、ルイ・ヴィトン氏の精神はその息子ジョルジュ・ヴィトン氏や孫のガストン・ルイ・ヴィトン氏に確実に引き継がれ、「1890年、タンブラー錠前の革新的な発明により、顧客が専用の1本のキーでラゲージを開閉できるようになり」「1896年には有名なモノグラム・キャンバスが誕生」する等、今日のルイ・ヴィトン・ブランドの繁栄へと繋がって行ったのです。(以上、「」の部分は無料配布されたパンフレットより抜粋)

 左写真は、顧客の鍵のナンバーの登録帳。そのナンバリングから、1冊目の物と思われます。既に装丁にブランドの象徴であるモノグラム・キャンバスが使用されていて、自社ブランドへの誇りが感じられますね。

 下写真は会場を砂漠に見立てた展示。19世紀にはフランスでオリエンタリスムが浸透し、帝国主義の台頭も相俟って、中東北アフリカへの渡航が増えて行きます。それに伴い、船旅用のトランクが飛ぶように売れた時代なのでしょう。
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 その後、旅の手段は「鉄道の時代」「自動車の時代」「飛行機の時代」を順次迎え、その変遷に合わせて、ルイ・ヴィトン社も新しい製品を出し続けて行ったのです。

 かつてのような、召使が携えることを前提とした、両サイドに持ち手の付いた大振りのトランクから、次第に製品の小型化、軽量化、多様化も進み、現代のような使用者自らが手に持つようなバッグも誕生します。

 さらに、創業者ルイ・ヴィトン氏が時代の革新者であったように、現代のルイ・ヴィトン社も時代を代表するアーティストとのコラボレーションも積極的に行う等して、創業者精神を今に伝えています。
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 かつては「持ち運び用の書棚」もあったのですね。上のモノグラムの箱は、なんと「ブリタニカ百科事典」用です。今では持ち運びに不便な重い本は、ラップトップPCやスマホに取って替わられてしまいましたね。それは図らずも「知」が、特権階級だけのものではなくなったことを意味しているのではないでしょうか?今ではおそらく誰も目にすることのない過去の遺物に、時代の変化を感じます。
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クリックすると元のサイズで表示します 左写真はハリウッド女優エリザベス・テーラーさんが所有していた数々のトランク類。

 1950年代を彷彿させる彼女着用のワンピースも一緒に展示されていました。トランクのネームタグに「MINE!」とあるのが茶目っ気溢れていて可愛らしい。

 以前、日本でも女優の大地真央さんが新婚旅行に旅立つと言う映像で、背景に大小幾つものルイ・ヴィトンのトランクが映り込んでいたのを思い出しました。

 あの夥しい数のトランク。絶対、自分では運ばないですよね。まさにセレブリティの証!

 他には、有名デザイナーのクリスチャン・ディオール氏が所有していた彼のイニシャル「CD」が刻印されたトランクも展示されていました。自社ブランドでバッグも製造している氏ですが、旅支度となれば、やはり「旅のスペシャリスト」であるルイ・ヴィトン社にお任せしていたのですね。

 こちらのコーナーには名だたるセレブリティ所有の、庶民には思いもつかないような(えっ?!こんな物が世の中にあるの?とビックリするような)フル・オーダーメイドの品々が展示されていて、その豪華さに圧倒されました。

 会場の出口付近では、フランスからわざわざ職人さんを招き、実際の製造の様子を再現して見せています。写真の彼女が笑っているのは、彼女の巧みな指使いに私が思わず「Très bien」と言ったから…ハハハ
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 そう言えば、同行していた友人曰く、イタリアの高級ブランドのひとつであるグッチ社が、近年コストカットを目的にイタリアの熟練の職人を解雇して中国人の職人に替えたところ、製品の品質低下が問題になっているとのこと。金儲け主義がそこまで行くと、高級ブランドの看板はもう下ろして貰いたいですね。その意味でも、地元の職人の雇用を守り、Made In Franceに拘り続けるルイ・ヴィトン社の心意気は評価したい。

 ともあれ、これだけ充実した展覧会を、フランス本国のプロフェッショナルの力を結集して実現させるルイ・ヴィトン社の底力は、他を圧倒していると思います。

 ブランドとはこうであらねば。

 以前、中国の自動車市場で、実態(実際の製品の品質)以上にドイツ車と日本車のブランド価値(イメージ)に差があることを、日本の自動車メーカーが嘆いていました。ブランド力を高めることが下手な日本企業にとっても、ルイ・ヴィトン社の今回の展覧会は、「ブランディングとは何か?」を考えさせられる好事例ですね。
 

 ここでご紹介した製品は正にほんの一部。興味を持たれた方は、是非、足を運んでみてはいかがでしょうか?見て絶対損はない展覧会です。会期は6月19日(日)まで

『旅するルイ・ヴィトン展』公式サイト

 昔は写真のようなシトロエン社製の車で、出来上がった商品を注文主の自宅まで届けたのだそうです。まさにセレブリティ〜
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