〒650-8570 神戸市中央区加納町6-5-1
神戸市
市 長 久元喜造 様
大阪市北区西天満6丁目7番4号 大阪弁護士ビル4階
植田勝博法律事務所内
THEペット法塾
代表者 弁護士 植 田 勝 博
電話06-6362-8177、FAX06-6362-8178
神戸市は、動物愛護法の「人と動物の共生」を基として、行政をされておられますことに敬意を表します。
この度、貴市は、市営住宅での犬猫等の動物飼養を禁止する条例を作られるとの報道に接しましたが、犬猫の飼養を禁止し、飼養動物を手放すか、住居を出ることを目的とする条例の制定については、公営住宅法、憲法、動物愛護法に違反するもと考えられ、この趣旨に反する同条例の制定には反対を致します。
第1 公営住宅と動物飼養
1 公営住宅法及び憲法
公営住宅法第1条は「この法律は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする」と定めています。これは、憲法25条「健康で文化的な生活を営む権利」に基づくものです。
「健康で文化的な生活」を営むに足りる住宅とは、犬猫が現在約1000万頭ずつ計2000万頭が飼われており、約2000万世帯が動物を家族として生活をするという状況にあり、一般的な生活となっております。これは、憲法25条、憲法13条の自由と幸福追求権に基づく生活と考えられます。
2 公営住宅法が制定され、公営住宅法に基づいて条例が制定されますが、ペット飼養自体を禁ずる規定は法律上ありません。
犬、猫の飼養自体を禁止する措置がなされると、これは、法律及び憲法に違反するものと認められます。
3 動物愛護管理法1条によれば、「この法律は、動物の虐待の防止、動物の適正な取り扱いその他動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害を防止することを目的とする」と規定するとともに、第2条の基本原則では、「動物の命」「人と動物の共生」が規定され、「動物が命あるものであることにかんがみ、」「何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめないこと」と規定されています。
動物を排除するのではなく、動物との共生の社会を受け入れることが必要です。
4 公営住宅のペット飼養のマナーと是正
居住環境が密集化していて、市民が自分の生活の平穏や権利を強く主張する傾向が見られますが、他人にも動物にも「お互い様」として許容する姿勢が必要です。人と人、人と動物が、お互いに譲り合って生きるという共生が必要です。
5 市営住宅の借家契約の解除とその制限
民間住宅と同様に、市営住宅も、借主が不当ないし違法に建物を毀損したり、賃料の不払いがあったり、使用状況が貸主の権利を侵害するなど,借主に信頼関係を破綻させる行為があれば、契約解除、建物退去の法的手続と執行が可能です。
貸主(神戸市)や、他人(近隣)に被害を与えない限り、信頼関係の破綻はなく、マナー違反の法的侵害があれば、信頼関係の破綻により契約解除をすることになります。
6 当団体の申入の柱は次の通りです。
@ 公営住宅のペット飼養は「健康で文化的な生活」において、ペット飼養は生活上の権利、利益と考えられ、基本的にはペット飼養禁止は権利の侵害となります。
A 借主が他人(貸主市、近隣など)に被害、迷惑を発生させるときには、被害者に対するペット飼養についての損害賠償などの責任を負い規制を受けます。
B 行政の現場における取り組みとしては、動物を飼うことの禁止ではなく、飼う人のマナーの指導と、動物との共生のためにの啓蒙と指導をすることが必要です。

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