引きこもりを扱ったスペシャルドラマ「こもりびと」(NHK)をみた。
武田鉄矢が教師を定年退職したお父さん、松山ケンイチが40歳の引きこもりの息子役だった。
引きこもりの典型と思われる設定で、ノンフィクションのようなリアリティがあった。 実話をもとにしているそうだし、父親が引きこもりから脱した人の話を聞く自助グループの場面は、本物の現場ではないかと思わせた。
父親は、息子に対して
「大学まで出してやったのに非正規なんて」
「就職氷河期だなんて言ったって世の中正社員になった人はたくさんいる」
「仕事も結婚もできないで、生きてる価値なし」
といった言葉を放ち、息子を追い詰め続けていた。
それ一番絶対言っちゃいけないことだよー!という言葉であり、かなり言いたくなって使ってしまう人がいる典型の言葉だろう。
10年以上も引きこもっているのは甘えだと決めつけ、世間体を気にして相談することもしてこなかった。うつ病の人に、鬱を継続させるような対応をし続けてしまったのだ。
ドラマは、父親にガンが見つかり、父が息子に改めて向き合おうとする親子の再生の物語だ。相談機関をあたるものの、40歳では支援対象外と言われてしまうなど、回復への道のりは険しかった。
長男の娘(息子にとって姪)が就活で苦心する様を絡めながら展開していたのは上手いと思う。親にやりたかったことを閉ざされ、偏差値だけを価値基準にされ、就きたいわけじゃなかった職種に内定して安心する大学生。すごくいい子で女優さんの演技もよかった。
ラストは厳しいながらも希望の見える終わりかたで、後味は悪くなかった。が、人が病んでしまう社会構造を思って、我が子の将来がまた不安になってしまった。