児童文学・絵本を数多く翻訳されているさくまゆみこさんの講演会に行ってきました。
代表作は「ローワンと魔法地図」や「シャーロットのおくりもの」、「おとうさんのちず」など多数
以下は、大まかなメモです。脳内補完しているのでちょっと違うところもあると思います。
とても興味深く2時間があっという間でした。子どもは自分の生きづらさのためにも、多様な生き方、考え方を知る必要がある、本を通してそれができるというようなお話をされていました。とっても同感です。
■子供は「いま、ここ」に縛られている
子どもの自殺やいじめが増えており、低年齢化しているという新聞記事を紹介。
「子供は、いま、ここということに、大人以上に縛られている」
「いま、ここ」が耐えがたいものだったとき、大人なら別の世界に逃げることも考えられるけれど、子供は生きていくことさえ難しい。
だからこそ、「多様な価値観を知っておく」ことが必要。→本を通して「いま、ここ」以外の世界を知る→見たことのない外国にいくこともできる。本は自分の頭で考えることのできるメディア。
■多様な価値観を知るために〜子どもの本を「窓」にして世界を見る
・アフリカ系アメリカ人 ジュリアス・レスター(1939〜2018)の言葉
黒人として差別を受けるつらい幼少期だったので
「いま自分がいるところとは違う世界があるのだということを、本を通して知らなかったら、生きていくのが難しかっただろう」
「ちびくろさんぼ」は差別意識のある本として、(ふみつけているほうは気づかない)新しい解釈で書き直した本を出版「おしゃれなサムとバターになったトラ 」
・キャサリン・パターソン(国際アンデルセン賞を決める国際児童図書評議会の一員)
演説→読書は世界平和にも通じる!
「アメリカの図書館には自国で出版された本がたくさんあるので、他の国の本を置くのを忘れがちですが、(本を通して)どの国の子どもたちとも仲良くなってもらわなくてはなりません。自分の友だちが暮らしている国に害をあたえようとは思わなくなるからです」
■日本の子どもの自己肯定が低い理由…多様性を知らないから?
多様な家族の在り方を見せる「FAMILIES」を紹介。白人と黒人が両親の家族写真が表紙
(人種・宗教の違い、ダウン症の子ども、ゲイカップルの養子、離婚して子どもが父母のもとに交互に行く家庭、アメリカ人の独身女性が中国人の養子 等を次々紹介していく本)
※日本では出版されていない
さくまさんが出版社の編集者に言われること→「(いま、本が売れないので)本が売れるためには、一番平均的なマジョリティの家庭の方を出していったほうがいい」
さくまさんは、子どもが多様性を知らずに育つと危惧
→日本の子供が世界の国の子どもたちより自己肯定感が低いのは、視野が狭いからでは。(多様な生き方、考え方を知らないと、「普通はこう」という同調圧力が強くなってしまう。そこから外れた自分はダメな自分、となってしまう)
それでも、日本でも多様な視点の作品が出てきている。
市川 朔久子「小やぎのかんむり」(虐待する父に殺意を抱く中学生の話)、いとうみく「カーネーション」(母が子を愛せないという話)など。
※すべてこういうものになればいいということではなく、「そういう本も必要」ということ。
そのほか、さくまさんが発起人のアフリカ子どもの本プロジェクト
http://africa-kodomo.com の紹介や、様々な多様性を知るための絵本・児童文学の紹介。「ローワンと魔法の地図」の話は出ませんでした。
質問タイムでは、質問というより子供を取り巻く憂うべき現状を訴える方々のお話でした。そういう気持ちを喚起させたんだなあと。