「メディアにむしばまれるこどもたち」小児科医からのメッセージ/田澤雄作/教文館
家庭文庫の勉強会の課題本でした。
著者は、長年多くの子どもを診る中で、急激に増えてきた「メディア漬け」がもたらす症状に着目し、子どもがメディアに長時間・長期間さらされることへ警鐘を鳴らしています。
(ここでいう「メディア」とは、ゲーム、テレビ、ネットなどの映像メディアのことを指す)
正直、うーん、これを言われてもなかなかメディア漬けからは抜けられないわなーという感じなのですが、知らないよりも、知っておいて、なるべく心がけとしてバランスを考えたメディアとの関わり方・関わらせ方を意識するべきなんだなと思います。
主に4つの弊害について説いています。
■過剰なメディア漬けの弊害4つ
第一「親子の絆が希薄なまま時間が過ぎていく」
第二「社会力の土台が形成されない」
第三「心の発達に遅れが生じる」
第四は「コミュニケーション」や「パーソナリティ」の問題(言葉の遅れ、多動、キレる、暴れるなど)が形成される。
メディアは、それ自体に害はなくても、親子の時間や現実体験の時間が減ることによって、「大人になれない」という問題を引き起こすという指摘は、そうかもしれないなと感じます。
とくに怖いのが、脳の機能に関するこの部分でした。
――人間の脳は、(中略)光や音が錯綜する映像画面を見る時には、主として、見ることに関係のある後頭葉が使われます。それに伴って、考えたり、想像したり、悩んだり、判断したりする前頭葉あるいは前頭前野の活動は低下します。
(中略)映像を見るのもやめれば、前頭葉は活動を再開します。ところが、長時間になると、見るのをやめても、前頭葉の活動は低下したままなのです。 p48
映像ばかり見ていると、視覚に使う脳ばかり発達して、ものを考える前頭葉が退化してしまうというわけです。まー怖いですね。でも、分かる気がします。
前頭葉の組織が死んでしまうのが認知症だが、子どもの脳は可塑性があり、メディアと離れた生活をすれば健全に戻るとしているのが救いといえば救いです。
だからそれが難しいんだってば…と思ってしまうのは甘えでしょうか。
もはや、親の方も、子どもとがっつり向き合うスキルなんてほとんどなくて、苦悩が深まるばかりです。
この著者は、一番ひどい状態の子たちをたくさん見ているのでこういう危機感が余計に強いのだと思いますが、そうかなーと思うところもありつつ、納得できるところが多い本でした。